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【現地レポート】第5戦インディ・グランプリは終盤の大逆転でパジェノーが制す

第5戦で5人目のウィナー誕生
ホンダ対シボレーはホンダの3勝2敗に

5月のインディアナポリスは天気がとても不安定。1ヶ月をかけて争われるイベントだったインディ500を取材するには、”真夏から真冬までの服装が必要”と言われたものだ。

5年前からインディ500の直前に行われるようになったインディ・グランプリ。去年のレースは暑さとの戦いにもなっていたが、今年は朝方の気温は摂氏5度と冷え込み、週末の最高気温が摂氏17度。プラクティスや予選中は12〜15度しかなかった。

予選ではルーキーのフェリックス・ローゼンクビスト(チップ・ガナッシ・レーシング)がキャリア初のポールポジションを手に入れた。彼の速さは本物だ。早くも3回目のファイナル進出。ルーキー初勝利はコルトン・ハータ(ハーディング・スタインブレナー・レーシング)に持って行かれたが、ポールポジション獲得一番乗りは彼が果たした。

予選2位はローゼンクビストの先輩でありチームメイトで、通算5回のシリーズチャンピオン獲得経験を誇るスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)だった。トップとの差は僅かに0.0194秒。若いチームメイトから刺激を受けつつ、彼との共同作業でマシンセッティングを向上させているようだ。

今年のロード/ストリートコース予選5回すべてでファイナルに進出しているのは、ディクソンただ一人。ストリート/ロードコースの両方において、ガナッシのマシンはコースを選ばず速いということだ。それに対して、彼らのライバルであるチーム・ペンスキーとアンドレッティ・オートスポートは、コース毎にパフォーマンスが上下している。

インディカー・グランプリではオーバルコースの一部を逆回りで使用するため、インディ500のターン1が最終コーナーとなる

開幕戦のウィナーで現ポイント・リーダーのジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)は、今回の予選はQ1で敗退。アンドレッティ軍団は4人全員がQ2に進めなかった。シモン・パジェノー(チーム・ペンスキー)もQ2止まりで、予選での速さに定評のあるウィル・パワーがQ3に進んだものの、ファイナルを戦った6人の中で最も遅かった。

ポールポジションを獲得したローゼンクビストを先頭に隊列を組む

決勝レースは、終盤に雨が降る……との予報が出されていた。その通りの展開になったが、レースでは雨がどれだけ長く、どれだけ降るかがポイントになる。今回は小雨が長く続いて完全なウェットコンディションになった後、今度はどんどんと乾いて行く状況になり、それに最も適したマシンを持ち、アグレッシブかつクレバーなドライビングを見せたパジェノーがウィナーとなった。

見事に大逆転で優勝を果たしたシモン・パジェノー

残り25周で切られたリスタートでは6番手だったが、ライバルたちを次々とパス。トップを行くディクソンまでは届かないと見られていたが、乾いて行く路面でタイヤを酷使したのかディクソンのペースが大幅ダウン。残り5周で5秒もあった差が残り2周でほぼゼロに。パジェノーはターン8で大胆にもアウトサイドからパスを仕掛け、それを成功させて勝利を掴んだ。

「今までで最も嬉しい優勝かもしれない。ウェットでもブレーキが凄く良く、攻撃的に走れた」と、2017年の最終戦以来となる優勝を飾った2016年のシリーズ・チャンピオンは大喜びだった。これでパジェノーはインディカー・グランプリ3勝目。パワーと勝利数で並んだ。これまで6回開催された同グランプリは、チーム・ペンスキー以外が優勝したことのないレースとなっている。

ラスト2周までトップを走っていたディクソンだったが、パジェノーの追撃をかわせず2位となった

いっぽう2番手スタートのディクソンは、乾いて行く路面でリヤタイヤを近い切っていた。ペンスキーとは対照的に、こちらは3年連続の2位フィニッシュとなった。

表彰台の中央に立つシモン・パジェノー。2位はスコット・ディクソン(左)そして3位にはジャック・ハービー(右)が入った

2019年NTTインディカーシリーズは、開幕戦で勝ったのがニューガーデン。第2戦がハータ。第3戦が佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)で、第4戦がアレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)。第5戦で5人目のウィナーが誕生するという実力伯仲の大混戦ぶりは変わらずだ。

3位はジャック・ハービー。IMSAシリーズでアキュラNSX GT3を走らせているメイヤー・シャンク・レーシングが、インディカー・シリーズのレギュラーであるアロー・シュミット・ピーターソン・モータースポーツと提携して参戦している。

チームは実力を着々と伸ばして来ていて、今回は予選で3位に食い込み、レースでもトップ3フィニッシュで表彰台に上った。ドライバーのハービーにとっても、チームにとってもキャリア・ベストのリザルトとなった。

ポールポジションからのスタートだったローゼンクビストは、リスタートでの失敗やピットでの燃料漏れによる小火災などがあって8位フィニッシュ。第4戦ロングビーチ・グランプリでポール・トゥ・フィニッシュの圧勝を飾ったばかりのロッシは、マシンを仕上げ切れず予選17位。決勝レースはスタート直後に他車に接触されてサスペンションを傷め、22位でフィニッシュと今回は惨憺たる成績になった。

ポイントリーダーのニューガーデンも、ロッシ同様に予選で失敗して13番手スタート。早めのピットする作戦が見事に当たってシーズン2勝目のチャンスを手にしたが、終盤にレインタイヤを選ぶべきところでソフトタイヤを選ぶ失策に、レインタイヤに交換するためのピットストップでクルーでのミスが重なって、ペナルティを受けて優勝戦線から脱落した。彼のリードは28点から6点に縮まった。

第3戦バーバーで勝っている佐藤琢磨は、予選11位。雨を得意とする彼だが、今回は本領を発揮できずに14位でのゴールとなった。

「スタートからマシンが曲がらなかった。ウェットコンディションでは、マシンの曲がらない状況が更に悪くなっていた。それが空力セッティングによるものか、タイヤの内圧によるものか……」と悔しがっていた。佐藤琢磨のランキングは、4番手から5番手へとひとつ下がった。

インディ・グランプリの決勝翌日から2日間(日・月)はお休み。そして火曜日からインディ500のプラクティスが始まり、週末に予選を迎える。

そして月曜にまたプラクティスをした後、火曜日から木曜は走行なし。カーブデイと呼ばれるファイナル・プラクティスを金曜に行って、土曜のパレードを終えると、いよいよ第103回インディアナポリス500決勝を迎える。

(text:Hiko AMANO 天野雅彦)
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