【Modulo 30th】「実効空力」コンセプトに基づく新型テールゲートスポイラー ウイングタイプを従来品と比較試乗!
ホンダ車用純正アクセサリーの企画・開発・販売を行うホンダアクセス。その純正アクセサリーのスポーツブランドである「Modulo(モデューロ)」は、今年で誕生から30周年を迎える。そこで自動車メディアを対象に、Moduloの過去から現在、そして未来を紹介する『Modulo 30th Anniversary EXPO Vol.2』が開催された。
シビック タイプR[FD2]用純正アクセサリー装着車、シビックRS 純正アクセサリー装着車、実効空力エアロパーツ実験車と続いた体験取材のラストに試乗したのが、ホンダアクセスの「実効空力」コンセプトにより開発されたシビック用テールゲートスポイラーの比較試乗だ。
このパートではシビックe:HEV(マイナーチェンジ前の車両)をベースに、従来のテールゲートスポイラーと新たに発売されたウイングタイプとをその場で付け替え、その違いを体感しようというもの。
ユーザーがスポイラーを購入・装着する場合は正規ディーラーであるホンダカーズでの作業となるが、今回は一般公道ではなく群馬サイクルスポーツセンター内が試乗コースとなっていることもあり、ホンダアクセスのスタッフが交換作業を担当。ほぼ同じ条件での比較試乗が実現した。
新たに設定されたシビック用テールゲートスポイラー ウイングタイプの特徴は、ホンダアクセスがコンプリートカーシリーズModulo Xをはじめ、Modulo純正アクセサリーなどで展開している「実効空力」コンセプトに基づいて開発されたこと。
従来スポイラーには装着されていなかった、「実効空力」コンセプトの象徴であるシェブロン(鋸歯)形状デバイスが採用されていることだ。
シェブロンデバイスとは、走行時における空気の流れを整える役目を担う空力デバイスで、テールゲートスポイラーのセンターウイング下面に装着されている。鋸の歯、サメの歯のような三角形状の段差がそれだ。
このシェブロンデバイスが走行中に車両後方へと流れる空気を整えることで、ダウンフォースを増大させ車両の挙動を安定させてくれる。
エアロパーツによるダウンフォースの重要性は、モータースポーツでよく語られているとおりだが、シェブロンデバイスの特徴はコーナリング時や直進時にかかわらず、さらに一般公道における法定速度内においても効果を発生すること。
またスポイラー両端の翼端板が大型化され、車体側面に発生する風を後方へ流すことで、旋回時の安定性向上に貢献しているという。
いっぽう従来品のテールゲートスポイラーは、2021年に現行シビックが発売されると同時にリリースされたもの。左右2本のステーでマウントされるデザインを採用し、ステーはブラック塗装、スポイラー部分はボディ同色とすることで、宙に浮いているようなフォルムが印象的だ。
まずは、この従来テールゲートスポイラーを装着したシビックe:HEVを試乗する。今回の車両はマイナーチェンジ前のモデルだが、先に試乗したシビックRSと比べると車両重量が100kg以上も重いこともあってか軽快さはやはり物足りないかな?と感じるものの、言い換えればどっしりとした走行フィールが味わえる。
ひとしきり走行したのち、従来型スポイラーから、新型テールゲートスポイラー ウィングタイプへと交換する。両製品はステー部分を共通設計としていることはすでに記載したが、スポイラー部分の交換のみであれば車載状態でも行うことができ、ホンダアクセスのスタッフによる作業はおよそ5分ほどで完了してしまった。
せっかくなので、走行前に従来品と新型とを並べてみた。新型テールゲートスポイラーは翼端板が装着されていることもあり、明らかに幅広かつ車両前後方向の長さも延長されている。
車両後方側は跳ね上がるようなデザインとなっており、いかにも空力性能は良さそう。いっぽうでスポイラーの高さはほぼ変更がないため、運転席からバックミラーによる後方視界については影響はないといえるだろう。
そして試乗コースへと走りだす。走り出しでは明確な効果を感じにくかったが、少しだけペースを上げて走り続けていると、従来のスポイラーと比べて車両の落ち着きが高まっていることに気づく。シビックe:HEVならではの安定感ある走りに違いはないけれど、前後四輪すべてで路面を捉えている印象が高まった。
ちょっとラフなステアリング操作をしてみても、車体が揺さぶられるようなことがなく、車両の重心が下がったように感じられる。従来スポイラーが前輪を中心に路面を捉えている「逆立ち」とするなら、新型テールゲートスポイラー ウィングタイプは競走馬だったり野生動物のように4つの足で路面をしっかり捉えている感覚だ。
ホンダアクセスのModuloブランドでは、「実効空力」と並んで「四輪で舵を切る」という走りのフィロソフィが語り継がれているけれど、まさにその言葉がふさわしい走りっぷり。
車両をドライバーのコントロール下に置くためには、まずはタイヤがしっかり接地していることが条件になる。ステアリングを握るドライバーは、その接地感を無意識のうちに感じ取り「クルマが落ち着いている」「運転しやすい」といった安心につながっていく。
チューニングパーツというと「サーキットのラップタイムで○秒アップ!」というふうに、限界速度域でその性能をアピールするものが多い。もちろんホンダアクセスの「実効空力」テールゲートスポイラーも、きっとラップタイム向上にも寄与するだろうけれど、それ以上に一般公道やワインディングにおけるフィーリングアップ、安心感の確保といった面で効果が大きい。
今回はシビックe:HEVにて比較試乗、またシビックRSでも一般公道を試乗してみて、個人的に新型テールゲートスポイラー ウイングタイプとの相性が良いと感じたのは、じつはシビックe:HEVのほうだった。
「実効空力」の存在感でいえば、その軽快さが時として危うさにもなりかねない(それが魅力でもあるけれど)シビックRSのほうが高いように感じる。しかしシビックe:HEVならではの加速感と落ち着いた走りをさらに引き立たせ、まるで上級スポーツセダンのような質の高い走行フィールが味わえるのは、まさに理想のマッチングと思えた。
(photo:Kiyoshi WADA 和田清志、text:Kentaro SABASHI 佐橋健太郎)