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【真夏の祭典】K-TAIに挑戦する大学生ドライバー、モータースポーツが教えてくれた「学び」そして「気づき」とは

真夏にモビリティリゾートもてぎで開催される、毎年恒例のアマチュア・レーサーのビッグイベントが「もてぎKART耐久フェスティバル“K-TAI”」です。毎年、100台前後のマシンと、500人ほどのドライバーが、モビリティリゾートもてぎの本コースを、カートで7時間も走るという耐久レースです。どんなレースなのかを、今年も参戦した大学生ドライバーにレポートしてもらいました。

みんなでレースを楽しむ歴史ある大会

100台近いカートがコース幅いっぱいに広がる、迫力満点のスタートもK-TAIの魅力です

例年に比べエンジンの調子も良く、マシンセッティングも決まっていて、「今年こそは上位入賞を狙える」と思って臨んだ『2024 もてぎKART耐久フェスティバル “K-TAI”』。ところが、レースはやっぱり甘くなく、今年もトホホな結果で終わってしまいました。私は大学1年生の18歳、田中佑翼(ゆうすけ)と申します。この『K-TAI』には10歳からエントリーしていて、今年が9回目の参戦でした。

『K-TAI』とは2001年からモビリティリゾートもてぎ(当時はツインリンクもてぎ)で開催されている7時間のカート耐久レースで、今年が24回目の開催。つまり、自分が生まれるよりも前から行われている歴史ある大会です。年に一度のお祭り的イベントとあって、学生としては学園祭や運動会、レース好きの視点で言えばル・マン24時間やインディ500のような感覚があります。

K-TAIはゼッケンの色でクラスが判別できるようになっています。クラス別の混走もK-TAIならではの魅力です

この『K-TAI』の趣旨は、「目を三角にして戦う」というよりも「みんなでKARTを楽しむ」ことに重きを置いているため、年齢や経験を問わず、夏のもてぎをチーム全員で汗だくになりながら7時間を楽しめることが最大の魅力です。これこそが睡眠時間を削って、時給1100円のバイト代を注ぎ込んで、私が参加し続けている理由です。

クラスは5種類でホンダの汎用エンジン「GXシリーズ」などを搭載した車両を排気量別に分けた「クラスI〜Ⅲ」、電気モーターやバッテリーなどを使用した電動カートの「クラスE」、次世代型バイオマス燃料用のエンジンを用いた「クラスF」に分けられています。私たちのチームはホンダ製『GX270』(270cc)エンジンを使用し、クラスⅡでの参戦です。

太陽の熱によってガソリンが気化しないよう、パラソルを使って直射日光を避けています。この小さな工夫がレースで勝つためにはとても重要になってきます

予選が一般的なレースにおけるタイムアタック方式ではなく、前日の“くじ引き”で行われ、クラスに関係なく決まることも『K-TAI』の特徴でしょう。ただ、参加台数が100台と多いためポールポジションから51番手までは第1グループ、52番手から最終尾までが第2グループと、ふたつのグループに分けられます。

上々のポジションからスタートできたけれど……

今年私がドライブしたクラスⅡの96号車(ドゥ)。ドライバーだけでなく、たくさんの方々と一緒に7時間先のゴールを目指します

今回、私たちのチームからは95号車(アン)、96号車(ドゥ)、97号車(トロワ)の3台体制で参戦し、スタートグリッドはそれぞれ2番手、52番手、38番手でした。私は96号車のドライバー。つまり(第2グループの)ポールポジションを(くじ引きですけど)獲得したのです。

このようなバトルを見ると、カートに対してコースがどれだけ大きいかよくわかります。確実に次のドライバーにマシンを託すため、余裕を持って追い抜きをします

上位を狙うためには比較的好条件な位置からのスタートだったため、チーム全員が上位でのチェッカーを夢見ていました。しかし、レースはやっぱり思いどおりにいくものではなく不運なクラッシュ、数々のアクシデントに見舞われてしまいました。

一時は完走すら怪しいと思われた状況に陥りながらも、メカニックの方々の懸命な修復のおかげで、なんとか7時間を完走。最終的には95号車が54位、96号車が90位、97号車が87位という順位でチェッカーを受けることができました。目指していた結果とはかけ離れてしまったものの、真剣にレースに向き合ったことで、さまざまな「学び」と「気付き」がありました。

レースを支える頼れる相棒たち

この『GX-270』は、ひとりで持ち上げられるほどのとても軽量でコンパクトなエンジンです

私たちのチームが使用しているホンダの汎用エンジン『GX-270』はレンタルカートだけなく、芝刈り機やボートの動力源としても使われています。真夏の7時間を全力で戦い抜くために、必要不可欠な大切な“仲間”です。この『GX-270』は、東南アジアなどではボートなどにも搭載されていると聞きました。

たしかに岸から離れた水上で、万が一にもトラブルが起きてしまったら、それこそ生命に関わる危険な状況ですから、何よりも信頼性や耐久性が求められます。だからこそ、酷暑のもてぎを『GX-270』は7時間ほぼ休むことなく回り続けてくれたにも関わらず、エンジン由来のトラブルは皆無。あらためてホンダエンジンの力強さと安心感を体験することができました。

筆者(田中佑翼)の「佑」の文字をペイントしたヘルメットはこのK-TAIがデビュー戦です!

また、私たちのチームは、今年の『K-TAI』に向けてダンロップ『DRK-SP』を選択しました。このタイヤは10周というスティントの中で、ドライバーにとてもさまざまな表情を見せてくれます。最初はとても安定感があり、コーナーの途中でも安心してアクセルを開けていくことができます。

スティント中盤になると、さすがに絶対的なグリップ力の低下は避けられないものの、走り方を工夫することによってはコーナーのボトムスピードを高く保ったまま曲がり切ることができるから不思議です。

また、面白いことにスティント終盤になるにつれて、再びグリップが復活してくる感覚もありました。50℃を超えるような路面温度でも、長時間、安定したラップタイムで走り続けられたのは、こうしたタイヤ特性のおかげです。

気をつけるべきは、自分の運転技術が上がったかのような錯覚に陥ってしまうこと。好タイムを刻み続けられたのは「タイヤのおかげ」と差し引いてとらえることが必要になります。

より速く走るためにはチームとドライバーのコミュニケーションがとても重要。サインボードを使ってピットタイミングなどを共有しています

今回も『K-TAI』ではレースの厳しさを学ぶことができました。7時間の中で色々なことがあり、思い通りにいかないことばかりでした。振り返ってみれば後悔ばかりで、タラレバを挙げればキリがありません。

しかし勝負には敗れこそしたものの、エンジンやタイヤの重要性、チームメンバーの大切さなどを、身をもって知ることができました。きっとこれこそが参加型モータースポーツの魅力だと思います。

僕がお世話になっているクラブレーシングの皆さん。今年もたくさんの方々のおかげで7時間エンジョイすることができました!

今年の『K-TAI』から約2週間が経ちましたが、いまは、「早くまた7時間を戦いたい」という思いでいっぱいです。その気持ちが日々の勉学とアルバイトの活力になっています!