【STEPWGN Modulo X #3】もうスポーツカーは要らない!?
「これを味わったら、ノーマルのオーナーは絶対嫉妬するだろうなぁ」
それがホンダアクセスのコンプリートモデル「ステップワゴン・モデューロX」を乗ったときの、僕の正直な感想。
ベースとなっているステップワゴンは、国産のミドル級ミニバンの中では群を抜いて走りがいい。しかしこのステップワゴン・モデューロXは、ひらりと軽い乗り味で、その一歩上を行く。これ、ステップワゴンのオーナーなら絶対に悔しがるだろう。
特にこのホンダスタイル号は6000kmほど走っている個体だったので、脚まわりの慣らしもバッチリ終わっていた。新車のときに乗ったホンダアクセスのデモカーよりも、ダンパーのシブさやブッシュのカドが取れていて、その乗り心地はとてもしなやかだった。
ミニバン特有の筒状ボディは、どう考えてもボディの剛性が高いとは言えない。しかしモデューロXのダンパーはその反発から来る固有振動を上手に減衰し、適度にアシを固めながらも、路面からの突き上げをかなりの割合で吸収してくれる。
さらにコーナーではその高い重心高をじわっと支え、ロールスピードを穏やかにコントロールしてくれる。そしてこのロールが落ち着くと、タイヤのグリップがぐぐっと引き出されて、コーナーで姿勢がピターッと決まる。
55扁平(17インチ)タイヤのバウンスを必要以上に感じないのは、空力による抑えが効いているのかもしれない。走りのよい中型ミニバンというとフォルクスワーゲンの「シャラン」を思い出すけれど、高速安定性の高さはモデューロXの勝ち。ボディやサスペンションのどっしり感はシャランだけれど、代わりにモデューロXには軽やかさがある。ボディ剛性が高められなくても、剛性バランスが整っていれば快適である、という好例だ。
しっかしミニバンがこんなに走っていいの? こんなの作っちゃうと、余計にスポーツカーやスポーツセダンがいらなくなっちゃう気がして、ちょっと心配だなぁ。
(PHOTO:Satoshi KAMIMURA 神村 聖/TEXT:Hiroki YAMADA 山田弘樹)