【K24スワップ】K20ヘッド×K24ブロックで脅威のパワーを獲得した驚速”Sleeper”ステップワゴン!【ミニバン】
長年の愛車として乗り続けるRF3型ステップワゴンをベースに、インテグラ・タイプRのような高回転志向とオデッセイ・アブソルートのようなハイトルクを実現! 京都府久世郡にあるチューニングショップ『インパクト』がエンジンスワップを行った、おそらく世界に一台であろうミニバンチューンの真髄に迫る。
(Honda Style 101号/2021年3月発売号に掲載)
強烈なトルク&パワーを誇る「K24R」を4速ATで走らせる
京都府のチューニングショップ『インパクト』が制作した、このRF3型ステップワゴン。一見すると純正オプションのエアロパーツを装着したフツーの車両と思いがちだが、驚くべきはその心臓部にある。K型エンジンへのスワップを行い、さらに公認車検も取得しているという驚異のステップワゴンなのだ。
このステップワゴンはお店のデモカーというわけではなく、れっきとしたオーナーカー。車両のオーナーは「このカタチじゃなきゃダメ!」と声を張る生粋のRF3型マニア。背が高くて、荷室への自転車の載せ下ろしが極めて楽という理由からも、ほかのミニバンに乗り換えることは考えたことがないそうだ。
ただし、ひとつだけ不満に思っていたのが、「信号ダッシュでRB2型オデッセイ・アブソルートに勝てないのが悔しい」ということ。背の低いオデッセイに乗り換えることは最初から選択肢に入ってこないので、なんとか愛車のエンジン性能を高めたいと考えていたという。
そこでオーナーは駆け込み寺的にインパクトの門を叩き、最終的には同店でオリジナル製作を行っている、通称「K20A改K24R」型エンジンへの換装を依頼することになった。
K20A改K24Rとは、オデッセイ・アブソルートに搭載された2.4リッターのK24A型シリンダーブロックと、シビックやインテグラのタイプRに搭載された2リッターのK20A型シリンダーヘッドを組み合わせたエンジンのこと。ピストンやカムシャフトなどが強化品に交換されているのはもちろん、ポート加工やクランクシャフトのバランス取りといったメカチューンも施されている。
今回のプロジェクトは、K20A改K24RをRF3型ステップワゴンのAT車に換装するという、インパクトでも過去に経験のない大仕事。エンジンの換装と同時にパワーとトルクは必然的に向上することになるので、車体に対する手当ても含めて作業が進められていった。
まずエンジンの載せ替えだが、もともとK24Aが設定されていたステップワゴン(型式はRF7)とはいえ、RB2型オデッセイ・アブソルートとはエンジンの取り付け位置が微妙に異なる。そのため一部のマウントにはブラケットを追加して取り付け部の長さ調整を行っている。
K24Aの腰下と4速ATの接続はすんなりといったそうだが、当然コンピュータによる変速制御をどう行うかというのも問題。そこもECUに関する知識とノウハウが国内トップクラスのインパクトだけあり、エンジンはハルテックのフルコンであるエリート1500で行い、ATの制御は純正コンピュータで行うセッティングを採用した。
ちなみにインパクトの園田代表によると、最近ハルテックが発売した『ネクサスR5』という最新ECUは、車体の電源制御系が内蔵されてAT制御にも対応できる設計になっているとのこと。今後インパクトでテストと分析を重ねた上で使い勝手を見極め、ゆくゆくはオデッセイ・アブソルートの5速AT換装と合わせ、ネクサスR5を導入する可能性もあるとのことだ。
そうして高出力のエンジンを得たステップワゴンは、次にサスペンションとブレーキにも改善が図られた。サスペンションブッシュはジュラコン製に打ち替えられ、シャキッとした脚まわりを実現。KYB製車高調により車高も適度に下げられている。
ブレーキパッドは幅広い温度域に対応し、セミメタル系の摩材ながらダストも比較的少ないエンドレスのMX72プラスを採用。パワーに負けることなく、キチッと止まるブレーキ性能が実現された。
マフラーもインパクトでワンオフ製作された逸品だが、そのコンセプトが「室内に届くこもり音を解消したかった」というのがユニークだ。ミニバンの用途や性格を考えると、迫力満点のサウンドよりも、静かで快適であることを重視したいところ。そこでセンターパイプのサイレンサー手前に膨張管(サブチャンバー)を追加して、消音効果を高めている。
いっぽうインテリアはほぼ純正の姿を留めており、MOMO製ステアリングに交換されている以外はノーマルのまま。メーターも純正が残されており、AEMのAF(空燃比)センサーとメーターをエリート1500に接続することでフィードバック制御(理論空燃比に近づける制御)を精密に設定している。
フロントシートは純正のままで、ここだけ見ると普通のミニバンにしか見えない点が面白い。インパネシフトを採用する4速ATもそのまま使える。
かくして完成の日を迎えたステップワゴンは、カタログ値で1500キロという車両重量を感じさせない、軽やかなフットワークを獲得。信号待ちで並んだオデッセイ・アブソルートにもバトルを挑むことができる(!?)快速ミニバンへと大変身してしまった。
オーナーは『あくまでレジャーで普通に使うクルマ』と笑うが、まだまだ伸び代もたっぷり。用途を変えることなく、進化を楽しんでいけそうな一台がここに完成したのである。
(photo:Akio HIRANO 平野 陽、text:Hideo KOBAYASHI 小林秀雄)
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