【F型チューン】F20Cベースの2.4L×フルコン制御、 街乗りからサーキットまで対応するマルチパフォーマーS2000!
見た目はノーマル然としたS2000なのに、その中身がヤバかった! 京都府のプロショップ『インパクト』が製作したS2000は、四連スロットルで武装した2.4リッターエンジンを搭載。さらにはフルコン制御で動力性能もはるかに向上させている。快適装備はそのままに、街乗りもサーキットも楽しめる新たな万能プレーヤーだ!
(Honda Style 103号/2021年9月発売号に掲載)
完全ワンオフの排気系で官能フィーリングも実現!
エンジン換装からフルコンを使った緻密なECUセットアップまで、幅広いチューニングに対応する京都府のプロショップが『インパクト』だ。今回紹介するS2000は、AP1最終型をベースに街乗りからサーキット走行までを高レベルでこなす万能型のクルマに仕立てた1台。同店代表・園田常雄さんのノウハウが各所に盛り込まれている。
エンジンは、インパクトで「F20C改F24R」と呼称されるF20C型ベースの2.4リッターを搭載。S2000のエンジンと言えば、2リッターのF20Cとロングストローク版の2.2リッター、F22Cがあるのはご存知の通り。
F24Rはさらに99mmのロングストローククランクを組み合わせ、腰下にはさらにマーレ製の軽量鍛造ピストン、フルオーダーのH断面コンロッドも使用し、圧縮比は12.8までアップ。オイルポンプの圧力を高める加工も施してある。
シリンダーヘッドにはオリジナルのポート加工を施した上で、戸田レーシング製のハイカムやバルブスプリング、フリーアジャスティングカムギア、強化チェーンテンショナーなどを投入。それらは何基ものF型エンジンを組んできた園田さんの経験から、確実かつコストに見合った効果が得られると判断されたパーツばかりだ。
最終的にはハルテックのフルコンを使用したチューニングで全域のパワー&トルクアップを図っているわけだが、そのための強固な土台がしっかりと作られている。
吸気系は戸田レーシングのスポーツインジェクション(いわゆる4連スロットル)が備わり、インジェクターは550cc、燃料ポンプは毎時265リッターに大容量化。排気系も車両の特性に合わせたワンオフのフルエキゾーストシステムを製作し、高回転化を支える吸排気系が構築されている。
エキマニからマフラーに至るまで、エキゾーストシステムはワンオフで製作。エキマニは集合部の位置や、そこに至るまでの曲げ方を追求し、確実にパワーアップを実現した。メインの配管はφ70mmで製作されている。
ハルテックのフルコンである「エリート1500」は、AP1用のカプラーオンキットが用意されているので、特殊な配線の必要もなく即セッティングに移行。ダイナパックによるパワーチェックでは、最高出力276ps、最大トルク28.5kg-mを記録しているという。
街乗りもサーキットも楽しめるというテーマに合わせ、冷却系も強化。ハイパワー化で増大する熱量に対して、トラスト製大容量ラジエターへ交換されたほか、セトラブ製オイルクーラーが追加装着された。
冷却性能と重量バランスを考慮したほか、万が一のクラッシュ時のオイル漏れリスクも軽減するべく、ラジエターの後方に搭載。幸いS2000は純正のエアクリーナーボックスを撤去すると大きくスペースが空くので、そこをオイルクーラーの設置場所として有効活用している。
ラジエターを大容量化しても、オイルクーラーの冷却にはあまり影響しないことはテストで実証済みだ。
バッテリー横には、燃料の圧力を一定に保つ効果を発揮するAEM製のフューエルレギュレーターを装着。配管の取り回しにもノウハウがあり、車体の振動でフィッティングが緩んだりしないよう、ホースの張りなどを調整してある。
純正ライクが内外装に秘めた驚異的な運動性能
インテリアも外観と同様、純正の面影が強く残る。前述のようにハルテック・エリート1500が助手席の足元に装着されるほか、フィードバック制御を活かすため、AEMの空燃比センサー&メーターが追加された。
運転席にはレカロのフルバケットシートを装備。S2000らしい低さのドライビングポジションを実現しながら、サーキットやワインディングでの強い横Gに備えるホールド性を確保。腰痛の軽減も期待できる。クラッチはHKSのLAクラッチに交換され、圧倒的な許容トルクと扱いやすさを両立している。
BLITZの全長調整式車高調サス、DAMPER ZZ-Rを装着。AP1用は前後10kのバネレートで、32段の減衰力調整機構により幅広いステージに対応する。アッパーマウントはアルミ鍛造製。
ホイールはフローフォーミング製法で剛性と軽さを両立させたヨコハマADVANレーシングRZを装着。タイヤはスポーツラジアルのDIREZZA ZⅡで、中期型以降の純正サイズであるフロント:215/45R17、リア:245/40R17を組み合わせている。
今回はオーナーさんのご厚意で、筆者も取材車両を少し運転させてもらったのだが、太いトルクでグイグイと加速するフィーリングは、S2000の印象を大きく変えるものだった。それでいてエアコンは効くし、もちろんアイドリングも安定している。
いわば「普通」のクルマなのに、アクセル操作で積極的に向きを変えたり、豊かなトルクでコーナーからの脱出スピードを稼いだりと、サーキット走行時における2.4リッター化の恩恵は計り知れない。オーナーの理想像を具現化する最適解、それがこのF24R搭載S2000と言えるだろう。
(photo:Akio HIRANO 平野 陽、text:Hideo KOBAYASHI 小林秀雄)
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