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【ホンダアクセス】ミニバンのイメージが一変!「実効空力」と成熟の脚まわりが生み出すフリードModulo Xの上質な走り

5ナンバーサイズの車幅とコンパクトな全長に、3列シートを実現したミニバンがフリードだ。そのフリードをベースに、ホンダアクセスが開発を手掛けたコンプリートカー「フリードModulo X」が、ベースモデルのマイナーチェンジから約半年後、外観が大きく変化したフェイズ2、後期型へと進化した。進化したModuloの「実効空力」の実力を、袖ヶ浦フォレストレースウェイで体感した。

(Honda Style 100号/2020年12月発売号に掲載)

Modulo Xシリーズ初のビッグマイナーチェンジ

1.5リッター直噴エンジンを搭載するフリードModulo X(ガソリン車)。ハイブリッド車との外観における違いはエンブレムの有無のみだ

ホンダ車用純正アクセサリーの開発・販売を手掛けるホンダアクセス。スポーツブランドの「Modulo」をはじめとする様々なディーラーオプションパーツを展開し、またメーカーコンプリートカーのModulo Xシリーズは、より上質な走りを好む拘りの強いホンダ車ファンを中心に多くの支持を集め、これまでに6車種・累計1万4000台余りを販売している。

そんなModulo Xシリーズの中心的モデルである、新型フリードModulo Xが実現した「質の高い走り」を体感するべく、クローズドコースにてメディア向け試乗会が開催された。

Modulo Xといえば、『実効空力』というコンセプトを掲げて開発されたエアロパーツがもたらす空力効果や、専用開発された脚まわりがもたらす上質な走りが大きな魅力。今回のメディア向け試乗会では、その効果を体感しやすいよう段階的なメニューが盛り込まれていた。

まずフリードのベースモデルで試乗コースを走り、次にフロントだけ純正バンパーを装着したModulo Xに乗り換える(エアロパーツの効果以外はModulo Xそのもの)。そして最後は、コンプリートモデルであるModulo Xを走らせて、空力効果を加味したトータルバランスを体感させるという、凝った手順を踏んだのである。

試乗した車両は、いずれも1.5リッター直噴エンジンを搭載するガソリン車。ハイブリッドシステムによるサポートがないぶん、よりピュアにModulo Xの哲学を感じることができた。

同条件の路面で仕様の異なる3台を試乗


袖ヶ浦フォレストレースウェイに設定された試乗コースは、ただサーキットを走るというのではなく、いくつかの工夫が組み込まれていた。1コーナーの直前には水が撒かれ、スリッパリーな路面状況を作り出す。

そして5コーナーからの緩やかな複合コーナーと、曲率の深い8コーナーをパイロンで仕切り、道幅およそ2.2〜2.35mという狭くて幅の細い道を走行。さらに9コーナーのヘアピン出口付近には段差を設け、乗り心地性能を確認する狙いだ。

まずは基準となる、スタンダードモデルのフリード(1.5 i-VTEC FF)に乗り込む。するとステアリングインフォメーションの物足りなさと、グリップレベルの低さが気になった。接地感を得るためにはステアリングをかなり切り込んで行かねばならず、これがウェット路面からの高速旋回では簡単にオーバーステアを誘発してしまう。

もちろんこのときにVSA(車両安定機構)はきちんと働くのだが、そもそものリアグリップレベルが低すぎると感じた。さらに道幅を狭めた高速旋回路では接地感が立ち上がらず、極端にスピードを落とさざるを得なかった。

これに対して、基準車のバンパーを装着した(つまりエアロレス)仕様のフリードModulo Xは、操舵時におけるグリップの立ち上がりが少しだけ早くなり、パイロンコースでもその速度を約5km/h近く上げることができた。しかしステアリングインフォメーションはまだ少し曖昧で、ウェット路面の挙動も抑え込むまでには至らなかった。

そして最後にフリードModulo Xを試乗したが、結果から言ってしまうと、正に理想的な安定したハンドリングが得られていた。微少舵角からでもタイヤのグリップはジワッと立ち上がるようになり、パイロンコースの高速旋回路でも自信を持って狭い道をトレースして行くことが可能となった。またウェット路面ではリアの巻き込みが少なくなり、弱アンダーステアでコーナーをクリアすることができたのである。

ベストバランス&ベストチョイスなミニバン

ここで言えるのは、Modulo Xの前後バンパーが、高速コーナーにおいてきちんと空力効果を発揮しているという事実だろう。具体的には、フロントバンパー底面中央のエアロスロープが床下の流速を早め、車体を安定させる。

そしてバンパー底面サイドとバンパー両側面に付けられたエアロフィンが、タイヤハウス内の空気を清流しながら引き出し、車体のリフトを抑えフロントタイヤの接地性を引き上げている。

フロントバンパーの左右下面に備わる「エアロボトムフィン」や、中央下面の「エアロスロープ」が車体の下面に空気を導いて安定性を高め、バンパーの左右側面に用意された「エアロフィン」が旋回性能の向上に寄与する。こうすることで、脚まわりだけでは引き出せなかった小舵角時のグリップをも高めることができたのだ。

もっともこうした空力効果があるからこそ、Modulo Xは脚まわりを必要以上に固めないで済んでいるというのが正解だろうか。ベース車両のバンパーを装着したエアロレス仕様のModulo Xは、完成形のModulo Xに乗った後では、どこかアンバランスさを感じてしまうのは至極当然な話といえる。


フリードModulo Xは、専用デザインのアルミホイールを標準装備。このホイールデザイン決定においても、複数のホイールを履き替えてベストなものを選択したという。タイヤサイズは前後とも185/65R15で、タイヤ銘柄は基準車両と同じも変わらない。

脚まわりとエアロパーツという優れたトータルバランスの高さでここまでの味わいと操縦安定性を実現しているModulo Xだけに、さらにワンランク上のタイヤを履いたらどうなるのか…という期待感がある。ぜひオプションでもいいから用意して欲しいと思う。

乗り心地に関していうと、コース上に用意された段差はやや大きめであり、運転席に座る限りは微細な違いはあれど、3車とも入力の強さを感じたのが正直なところ。しかし本誌編集長にステアリングを託し、筆者がリアシートに座ってみると3車の違いは明らかだった。

路面からの入力をしなやかに「いなして」いるのは明らかにModulo Xであり、段差に乗り降りする際のドンという突き上げを、車体とサスペンションが調和して減衰し、上質な乗り味に変換できていたのにはちょっと驚かされた。

ブラックを基調としたインテリア。インパネ前面はピアノブラック仕上げとされ高級感をアップ。ステアリングは本革巻きタイプを装着

Modulo Xシリーズの開発は、机上でデータなどをニラメッコするだけでなく、徹底した試乗(試走)を繰り返して進められることで知られている。それはテストドライバーだけでなく、デザイン担当エンジニアほか、開発に関わるすべてのスタッフが実際にステアリングを握り、基準車との違いを体感するのだという。

だからこそサーキット走行における限界域での性能を高めるだけでなく、市街地走行の中心である40km/hあたりの速度域でも、基準車との違いを感じることに繋がっているのだろう。

新型フリードModulo Xは、従来モデルで定評のあったコンパクトカーらしい軽快なフットワークと、『実効空力』コンセプトに基づいたエアロパーツによる優れた操縦安定性をさらに進化。車体全体で4輪のタイヤを路面に押しつけ、駆動力と操舵力を伝える『4輪で舵を切る』というModuloのフィロソフィを、最新の解釈で具現化したモデルという印象を受けた。

その乗り味は、従来型Modulo Xを全方位的にレベルを引き上げた、まさに上質なコンパクトスポーティミニバンのお手本のような仕上がりだった。

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FREED Modulo X Honda SENSING
SPECIFICATION
■全長×全幅×全高:4290×1695×1710mm
■ホイールベース:2740mm
■トレッド(前/後):1480/1485mm
■最低地上高:0.135m
■乗車定員:6名/7名
■車両重量:1370kg(6名)/1380kg(7名)
■エンジン型式:1.5リッター直噴DOHC i-VTEC
■タンク容量:36リッター
■最高出力:129PS/6600rpm
■最大トルク:15.6kg-m/4600rpm
■タイヤ(前&後):185/65R15 88S
■サスペンション方式(前/後):マクファーソン式/車軸式
■車両価格:295万200円(6名)〜297万2200円(7名)
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(text:Kouki YAMADA 山田弘樹、Kentaro SABASHI 佐橋健太郎)

ホンダアクセス(TEL:0120-663521)
http://www.honda.co.jp/ACCESS/