【名車図鑑】欧州テイストを感じさせてくれる走りが魅力の初代アコード・ユーロRは、スポーティセダンの理想型【CL1】
ホンダのミドルセダンとして、長い歴史を持つアコード。2021年現在、日本国内で販売されているのはハイブリッドのみとなっているが、かつてはインテグラやシビックに対して「オトナのセダン」的な存在であり、スポーティ仕様も設定されていた。その代表格といえる存在が、6代目アコードのマイナーチェンジ時に追加設定された「ユーロR」である。
アコード・ユーロRが初めて登場したのは、’00年のこと。6代目アコードのマイナーチェンジに合わせ、当時のスポーティグレードであるSiR-Tに替わる存在として登場した。
NSX-Rをルーツとする「タイプR」シリーズがサーキット・ベストを追求するいっぽう、ユーロRが目指したのはワインディング・ベストだ。セダンとしての実用性や車内の居住性を犠牲にすることなく、運転席に座るオーナーにスポーツドライビングの楽しさを提供するのがユーロRのコンセプトである。
ベース車両のボディ幅は1695mmだが、専用エアロパーツを装着したユーロRは1720mmへと拡幅され、3ナンバーとなった。サスペンションは4輪ダブルウィッシュボーン式で、ユーロR専用サスにより車高は15mmダウン。トランクリッドにはリアスポイラーが追加された。
ホイールは専用デザインの16インチで、205/50R16サイズのタイヤが組み合わされる。ボディカラーはタフタホワイト、アイアンブルー・メタリック、ナイトホークブラック・パール、サテンシルバー・メタリック、プレミアムホワイト・パール、シグネットシルバー・メタリック、インディゴブルー・パール、そしてミラノレッドがユーロR専用色として設定された。そしてタイプRシリーズとは異なり、エンブレムは通常の「黒バッジ」となる。
エンジンはアコードのほかプレリュードなどにも搭載されたH22Aで、ユーロR専用チューンが施されたもの。タイプRシリーズと同じ「赤ヘッド」を持つ。圧縮比は11.0で、使用燃料はプレミアムガソリンが指定。リッター100PSちょうどの最高出力220PSを発揮する。じつは欧州仕様にはアコード・タイプRが存在しているのだが、日本仕様ユーロRの最高出力はそれを上回っている。
トランスミッションは5速MTのみで、ユーロR専用のギアレシオが与えられており、継ぎ目のない爽快な加速を実現した。MOMO製ステアリングや金属製のシフトノブが標準装着となるのは、シビック・タイプRやインテグラ・タイプRと同様。ただしシフトノブはタイプRのチタン製に対してステンレス製となる。
インテリアではフロントシートがRECARO製リクライニングバケットを装着。このシートも内装カラーに合わせた落ち着いた印象とされた。
リアシートはベース車両と変更はなし。リアシート中央には大型アームレストが備わるが、乗車定員は5名となる。室内空間を犠牲にしないのがユーロRならでは。
アコード・ユーロRの乗り味は、先に販売されていたDC2型インテグラ・タイプRやEK9型シビック・タイプRほどストイックではなく、高速域であっても路面の凹凸をしなやかにいなしながら、上質な味わいを感じられるというもの。車名のとおり、まさに欧州サルーン的な乗り心地と評され人気を博した。
CL1型アコード・ユーロRの生産期間はわずか2年。当時のホンダ・ディーラーはクリオ店/プリモ店/ベルノ店という3チャンネル展開で、アコードがクリオ店、トルネオがプリモ&ベルノ店での販売となっていた。そのためアコードの兄弟車であるトルネオにもユーロRは設定されている。両車の違いはヘッドライトやフロントグリル、テールレンズなど外観のみ。
そしてアコード&トルネオとも、2002年に発売された最終モデルには特別仕様の「ユーロR X」が追加。専用ボディカラーや専用RECARO製バケットシート、リアスポイラー、チタン製シフトノブなどが標準装備された。
近年はスポーツモデルの価格高騰が続いているが、CL1型アコード・ユーロRの相場価格も上昇傾向。80万円前後から販売車両を見つけることはできるものの、走行距離の少ないノーマル車両は200万円を越える個体もある。いずれにしても生産終了から20年近くが経過しており、中古車市場のタマ数は少ない。走行距離は伸びていても、丁寧な整備を受けていた車両がオススメだ。
なおアコードに比べて知名度が少ないぶん、トルネオ・ユーロRのほうが中古車市場における価格は抑えめ。ただ外観パーツではアコード以上に欠品となっている部品が多くなっており、注意が必要だ。
(text:Kentaro SABASHI 佐橋健太郎)