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目指したのは「ワインディング・ベスト」。第一世代NSXに用意されたもうひとつのスポーティグレード、タイプSの魅力

2021年8月30日、ついに正式発表された「NSX Type S」。その発表に先立ち、メディア向けに実車が初公開された会場には、2020年モデルのNSXと並んで第一世代NSXの「type S」も展示されていた。固定ヘッドライトを持つ、いわゆる”後期型”のNSX type Sである。

NSXのスペシャルモデルとしては「NSX-R」が有名だが、ワインディングロードなどにおける走りの楽しさを追求した「NSX type S」にもファンは多い。

なかでも固定式ヘッドライトを持つ後期型は、NSX-Rと同時期に併売されていたこともあってか、NSX-Rよりも販売台数は少ないレアモデルである。

2004年式NSXタイプS。奥に見えるのは2020年式NSXだ

第一世代のNSXに「type S」が設定されたのは、1997年のこと。1990年に発売されたNSXは、幾度かのマイナーチェンジが行われたが、もっとも大きな変更となったのが1997年だ。MT車のエンジンが3.2リッターへと拡大され、トランスミッションも6速MTとなった。この3.2リッターエンジン搭載車は型式も[NA2]へと変更となり、同時に新設定されたのが「type S」である。

なおホンダファンはご存知だと思うが、リトラクタブルヘッドライトを持つモデルをNA1型、固定式ヘッドライトのモデルをNA2型と表記するのは間違い。全年式を通じて、3リッターのC30A搭載車はNA1型、3.2リッターのC32B搭載車はNA2型だ。1997年式以降もAT車はC30Aを継続搭載したため、固定式ヘッドライトの後期型でもAT車はNA1型となる。

1997年に新設定されたNSX type S。写真のボディカラーはイモラオレンジ・パール。当時の価格は1035万7000円(税別)

1997年に登場したNSX type Sは、エアコンなどの快適装備はそのままに標準モデルから約45kgの軽量化、専用サスペンションチューニング、MOMO製の専用ステアリングや専用形状シフトノブ、RECARO製フルバケットシート、BBS製専用アルミホイールなどを採用。ワインディングロードなどでのスポーツドライビングの楽しさを際立たせたモデルとして開発された。

その後、NSXは2001年12月にフロントヘッドライトを固定式に変更するなど、外装のデザインを中心としたビッグマイナーチェンジ。NSX type Sも継続して設定されたが、ベースグレードがBBS社と共同開発された17インチホイールを標準装備することもあってか、ホイールについてはベースグレードと同様の7本スポークタイプになった。

展示車両には純正オプションとして用意された両席SRSエアバッグシステム(クルーズコントロール、TCSとセットオプション)が装着されていた。当時の価格は10万円

今回、新型NSX Type Sのメディア向け発表会場に展示されていたのは、ホンダが所有する2004年式NSX type S。ボディカラーはセブリングシルバー・メタリックだ。

細かい点だが、第一世代NSXでは「type S」とタイプを小文字で表記するのに対し、新型NSXでは「Type S」とTのみ大文字表記になる。これは現在、北米アキュラ・ブランドが展開しているType Sファミリーと表記を揃えた形だ。

NSX type Sに標準装着されるRECARO製フルバケットシート。シェル本体はカーボン製

この2004年式NSX type Sは、当時オプション設定されていた、運転席&助手席SRSエアバッグシステム&クルーズコントロールとTCS、そして6インチ純正3Dナビ(50万円)を装着した豪華仕様。電動パワーステアリングの装着・非装着については確認できなかったが、こちらもNSX type Sには40万円でオプション設定されていた。

エンジンは3.2リッターV型6気筒DOHC VTECのC32B。左右バンクのヘッドカバーは、レッドに塗装されている。最高出力280PS/7300rpm、最大トルク31.0kg-m/5300rpmはベースグレードの6MT車と同じ。エンジンリッドはメッシュタイプとされた。

BBS社と共同開発された17インチのアルミ鍛造ホイール。タイヤサイズはF:215/40R17 83Y、R:255/40R17 94Y

このNSX type Sは、2001年12月から2005年12月のNSX生産終了までラインナップに名を連ねたが、登場半年後の2002年5月にNSX-Rが追加されたこともあり、販売台数は多くない。現在の中古車市場では姿を見かけることも稀で、見かけたとしてもプライスボードはASK表示となっていることが多い。実勢価格は2000万円を超えていることは確実と思われる。

(text:Kentaro SABASHI 佐橋健太郎)