2度目のインディ500制覇を達成した佐藤琢磨選手が凱旋報告会を開催。ホンダの八郷社長もさらなるサポートを約束!
新型コロナウィルスの感染拡大により、年間スケジュールが大幅に変更された2020年インディカー ・シリーズ。そのシリーズ中で最大のイベントが、『インディ500』である。
例年、決勝レース日には30万人を超える観衆が集まるインディ500は、アメリカにおける最大のレースイベント。5月の最終日曜日に決勝レースが行われるのがインディ500の伝統だが、今年はコロナウィルスの感染拡大による影響でレース日程が8月下旬となり、さらに104回の歴史上で初めて、無観客での開催となった。
そんな異例づくめの開催となった、第104回インディ500において、ホンダ・エンジンとともに戦う佐藤琢磨選手(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)が2度目の優勝! 2017年の第101回大会において、日本人ドライバーとして初めて優勝を飾った佐藤琢磨選手が、3年ぶりに再びインディ・ウィナーとなった。
今回、そんな偉業を達成した佐藤琢磨選手の帰国に合わせ、2020年12月6日、東京・青山の「ホンダウエルカムプラザ」にて『凱旋報告会』が行われた。新型コロナウィルスの感染対策により、会場内への入場は30名弱のメディアに制限されたが、本誌ホンダスタイルは取材が許可されたので、現地での様子をお伝えしよう。
会場となったウエルカムプラザのステージ前には、第101回大会で優勝した26号車に加え、今年の104回大会を制した30号車(アメリカから空輸で運ばれてきたそう)が並べられ、定刻どおり報告会がスタートすると、黒いシャツとネクタイ、そしてジャケットを羽織った佐藤琢磨選手が登場した。
ステージに登壇した佐藤琢磨選手は、まず新型コロナウィルスという未知の脅威にさらされながらもシリーズ開催に向け尽力してくれた関係者やスポンサー、そして日本から応援してくれた多くのファンに感謝の言葉を述べた。そしてシーズン終了を迎えた現在、このような報告会ができることを嬉しく思うと話した。
そして続いて、本田技研工業株式会社の八郷隆弘社長が登壇。ステージ上では、八郷社長は残念ながら現地インディアナポリス を訪れることは叶わなかったものの、衛星中継でインディ500を見ながら応援していたことや、決勝レース終了後に琢磨選手と電話で話したエピソードを語り、そのときに2つの約束をしたと明かした。
それは『来年の2021年もホンダとして全力でサポートを行い、インディ500での勝利とシリーズチャンピオンを目指す』ことと、琢磨選手本人からの要望を受け『今年の第104回大会の優勝マシンである30号車も日本へ持ってくる』こと。
その約束により、今回はこうして日本国内にて2台の揃いぶみが実現。30号車はいくつかのイベントに展示されたあと、ツインリンクもてぎ内にあるホンダコレクションホールにて展示されるとのこと。さらに八郷社長は『コレクションホールにはまだまだスペースがあるので、ぜひ来年は連覇を目指して頑張ってください!』と激励していた。
その後は会場内および、オンラインで取材するメディアからの質問に答えるかたちで取材会は進行。104回の歴史のなかで、20人しか達成していないインディ500の複数回勝利を達成した重みは、いつどのように感じますか?という質問に対しては、『こうしてリングを2個はめている時ですね(笑)』と、リングのデザインを見せてくれた。
そして琢磨選手は改めて今年の第104回インディ500を振り返り、予選3番手と好調だったこともあり決勝レースには落ち着いて臨めていたこと、最後はS.ディクソン選手との一騎打ちとなったが、燃費にも余裕があったし勝てる自信があったと語ってくれた。
シリーズ開催が変則的な日程となった2020年シーズンだが、インディカー・シリーズには車両規定においても今季から大きな変更があった。マシン接触時などにドライバーの安全性を確保するため、今季からエアロスクリーンが全車に装着が義務付けられたのである。
同様にドライバー保護を目的として、F1ではHALO(ハロ、ヘイロー)が備わっているが、インディカーではさらに強固なキャノピー式を採用。軍用戦闘機のキャノピーと同じ強化プラスチックとカーボン素材で構成されており、非常に堅牢な作り。
レッドブルも開発に関わったというエアロスクリーンは、装備すると車両重量は約30kgのプラスとなるため、マシンセッティングやドライビングにも影響は大きい。しかし安全性は大幅に向上し、また剛性の高さゆえに今年のセレモニーにおける「グリコポーズ(ゴールインマーク)」も実現できたと、琢磨選手はユーモアも交えつつ語ってくれた。
佐藤琢磨選手が達成した2度のインディ500制覇は、いずれもホンダエンジンとともに達成された。鈴鹿サーキットのレーシングスクール(SRS)から始まった、自身のモータースポーツキャリアを振り返り、自分のこれまでの経歴はホンダのサポート無しにはありえないと、琢磨選手はあらためて感謝の意を述べた。
現在は自身が卒業したSRSの校長でもあり、卒業生の角田裕毅選手をはじめ多くの次世代・次々世代ドライバーが巣立っている(後に角田選手はF1フル参戦が発表された)。そんな若き才能にエールを送るとともに、43歳のレーシングドライバーがアメリカで頑張っている姿を見て何かを感じて欲しいと、自身もまだまだ第一線で走る決意を示した。
2台の優勝マシンは、今後ツインリンクもてぎのコレクションホールに展示されるとのことなので、ぜひ見に行ってみてはいかがだろうか。
(text:Kentaro SABASHI 佐橋健太郎)