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【現地レポート】第8戦&第9戦はショートオーバルのダブルヘッダー、佐藤琢磨選手は速さを見せ2位&9位を獲得

第104回インディ500の翌週、インディアナポリスから西へクルマで4時間ほど行ったワールドワイドテクノロジー・レースウェイatゲイトウェイにて、NTTインディカー・シリーズ第8戦&第9戦がダブルヘッダーにて行われた。

このコースは全長が1.25マイルで、ショートオーバルの部類に入る。ターン1&2の方がターン3&4よりタイトという、ツインリンクもてぎと同じタイプのテクニカルコースだ。バンクもターン1側が11度、ターン3側が9度と異なっているので、マシンのセッティングをバランスさせるのが難しい。

金曜日はプラクティスのみで、土曜日の午前中に予選があった。ランキングの逆の順番でひとりずつ2周連続アタックし、計測1周目が第8戦用、2周回が第9戦用として採用された。1回の予選で2レースのグリッドを決めるのは、パンデミック下でクルーたちが一緒に仕事をする時間も短くしたいためだ。

今季のインディカー・シリーズは、すべてのレースで走行セッションが減らされ、走行時間も短縮がされている。賢い上に、予選がおもしろい戦いになってもいる。

1周目の速さで第8戦のポールポジション(PP)を獲得したのは、ウィル・パワー(チーム・ペンスキー/シボレー)だった。インディアナポリスのロードコースに続く今シーズン2度目、通算59回目のPP獲得となった。史上最多PPのマリオ・アンドレッティは67回だが、パワーは引退までにマリオを抜けるだろうか? パワーのラップタイムは24秒6718で、平均時速は182.394mphだった。しかし、彼の2周目は3番手。2周とも最速は至難なのだ。

2レース目のPPは佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング/ホンダ)がゲット。インディ500で優勝した勢いが持続されている印象だ。今シーズン初、インディカーの通算10回目のPPとなる。

琢磨が記録した24秒6577=182.499mphは、パワーの1周目より0.0401秒差で速く、2ラップ目=第9戦用で2位となったジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー/シボレー)より0.0030秒(!)速く、この予選での最速となった。オーバルならではの僅差だ。実力伯仲ぶりが凄まじ過ぎる。2周目で見ると、琢磨から0.3秒の中に15人がひしめいていた。

琢磨のポール獲得ラップは、平均時速にすると293.641km/h。”ショート”の範疇に入るオーバルでも、インディカーは恐ろしく速い。ゲイトウェイではタイトなターン1側ではブレーキングが必要。それでも平均速度が時速300キロ近いのだ。

インディカーのレースというのは、マシンやタイヤの極限状態を常に保って戦うものなので、一瞬の判断ミスや操作ミス、コンディションの小さな変化がアクシデントに繋がる。そして、一度アクシデントが起こると、スピードが高いためにダメージも大きい。

ペースカーのシビック・タイプRを先頭に、ピットロードに整列したマシンたち。佐藤琢磨選手は5番手スタート

第8戦は予選と同じ日の午後にはもう決勝。200ラップで争われた。予選2位だったパトリシオ・オーワード(アロウ・マクラーレンSP/シボレー)と予選3位だったスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング/ホンダ)がトップ争いを繰り広げ、パワーは後退。中盤過ぎから優勝争いに琢磨が加わった。

インディ500と同様、琢磨は前半戦は情報収集とマシンの調整にあて、レース後半にトップに躍り出た。作戦通りの展開で、2連勝がなると見えた。ところが、インディでは完璧だったピットストップにミスが出てしまい大きくタイムロス。トップはディクソンのものになり、2番手の座もオーワードに渡った。

もちろん、琢磨は諦めなかった。”トップを取り返してみせる!”という思いの見える走りが始まった。残り20周でオーワードを豪快にアウトからパス。ハイペースを保ってディクソンの背後に迫った。5回チャンピオンになっているディクソンは、琢磨がオーワードと争っている間にリードを広げ、その後はタイヤを労る走りを続けていた。

琢磨には望み通りに仕上がった速いマシンがあったが、0.1秒届かなかった。ドライバーとしては完璧な仕事をしたが、勝利はならず。非常に悔しいレースとなった。

ゲイトウェイのレース1で今シーズン4勝目を達成したスコット・ディクソン。シリーズチャンピオンへ一直線だ

ディクソンは今シーズン4勝目。着々と6回目のタイトルに向けてポイントを重ねている。3位は21歳のメキシカン、オーワード。今シーズン中の初勝利がなるかはわからないが、近い将来にチャンピオン争いを行うことが期待されるドライバーだ。ディクソンとの差は大きいが、彼は今、ポイントスタンディング3番手につけている。

レース2では30号車を駆る佐藤琢磨選手がポールポジションからスタート

そして翌日の日曜に行われたレース2は、太陽が出て蒸し暑いコンディションでの戦いになった。ポールポジションから琢磨がレースをリードする。自信にあふれた走りで、優勝を目指していた。しかし、琢磨は最後尾のドライバーに追い付いてしまい、彼を抜けずに周回を重ねることになった。そこでライバルたちが動いた。予定より早めのピットストップを敢行したのだ。

琢磨陣営は前日のレースで燃費の優位も証明していたので、1スティントを長くする作戦にアドバンテージを見出すことを狙っていた。しかし、サポートレースの影響なのか、暑いコンディション響いているのか、路面が荒れていてラップタイムに差があってもオーバーテイクが難しいレースになっており、イエローフラッグも出ず、燃費の優位を琢磨は活かせなかった。

早めにピットする作戦によってトップにはオーワードが浮上。2日連続のトップ走行だ。しかし、最後のピットストップでニューガーデンが彼の前に出た。ピットロードでサイド・バイ・サイドになる接戦をチーム・ペンスキーのドライバーが制し、そのまま優勝。今季2勝目となるトップチェッカーを受けた。オーワードは2位。3位には同じくチーム・ペンスキーのウィル・パワーが入り、琢磨は9位だった。


 
第104回インディ500ウィナーは、ゲイトウェイでも強さを見せた。2戦とも優勝を争った通り、マシンの仕上がり具合もトップレベルだった。今回がオーバルレースは今シーズン最後、というところが少々残念だが、チームのレベルアップが達成されているので、残るレースでの活躍が楽しみだ。第9戦の終了時点で、琢磨はランキング4番手につけている。

今季にレギュラー参戦しているドライバーでは最年長のトニー・カナーン。来季は佐藤琢磨選手が最年長ドライバーに!?

このレースを最後に、大ベテランのトニー・カナーンが(一応)引退する。2004年のシリーズチャンピオンであり、2013年にインディ500で優勝しているブラジル出身のスタードライバーが、20年のインディカーキャリアを終えたのだ。

一応……としたのは、今年はパンデミックによりファンがレース会場に来られていないので、”さようなら”を言うつもりだったカナーンはそれができず、来年もう一度オーバルレースにのみ出場したいと考えているそう。日本にもファンの多い”TK”ことカナーンが、来年また走ってくれることを期待し、そうなった時にはTKの熱い走りを目に焼き付けよう。 

(text:Hiko AMANO 天野雅彦)
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