新型フィットの「e:HEV」システムには、F1のパワーユニット開発におけるハイブリッド技術がフィードバック!
2020年2月より、日本国内で販売を開始した新型フィット。第4世代となる新型モデルは、センタータンクレイアウトをはじめとする伝統的な装備を受け継ぎつつ、ハイブリッドモデルには新たに2モーター式「e:HEV」システムを採用するなど、大きな変更を受けている。
そんなフィットは、ホンダにとって日本だけでなく北米や欧州、アジア諸国など世界各地域で発売が予定されている世界戦略車。まず日本市場への導入されたのち、2020年後半には欧州(まずはUK)市場での発売が予定されている。
欧州地域では「JAZZ(ジャズ)」の車名で販売されているフィットだが、欧州地域ではもともとコンパクトカーの人気が高く、新型JAZZにも大きな期待が寄せられている。なかでも注目を集めているのが、新たに「e:HEV」の名称を与えられたハイブリッドシステムだ。
『レースは走る実験室』とは、ホンダのモータースポーツ活動を指してよく使われる言葉だが、この最新ハイブリッドシステムにも、モータースポーツの最高峰カテゴリーであるF1のパワーユニット(PU)開発で得られたノウハウが活かされているという。
ホンダがPUサプライヤーとしてF1に復帰したのは2015年のこと。かつてのようにエンジン単体ではなく、ハイブリッドシステムを含むPU全体の開発ということもあり、参戦開始後しばらくは厳しい状況が続いた。
しかし、アストンマーチン・レッドブル・レーシングとスクーデリア・トロ・ロッソ(現スクーデリア・アルファタウリ)の2チームにPUを供給した2019年シーズンは、アストンマーチン・レッドブル・レーシングが3勝を挙げ、スクーデリア・トロ・ロッソも2度の表彰台を獲得するなど、大きな躍進を遂げた。
2019年シーズンに大きな躍進を遂げた原動力となったのは、ホンダ製ハイブリッドパワーユニット「RA620H」の信頼性や戦闘力が大きく向上したことが大きい。
そして、このPUを最適な効率と出力で稼働させるために培われた知見は、JAZZなどの市販車に搭載される2モーター式ハイブリッド「e:HEV」システムの開発にも活かされ、エネルギー効率を向上させているとのこと。
欧州地域はモータースポーツ、とくにF1への注目度が高い市場だけに、このPU開発で得られた知見やノウハウが、どのように新型JAZZに活かされているのかについて、ホンダファンからの注目度は高い。今回、そんな市場の声に応えるべく、ホンダはリリースを発表した。
新型JAZZに搭載される「e:HEV」は、1.5リッター・エンジンと2モーターを組み合わせたハイブリッドシステム。市街地走行では、多くの場面でEV走行とハイブリッド走行をシームレスに切り替え、最適な効率を実現。いっぽう高速道路ではエンジンがメインの動力源となり、加速時など負荷が高まった際にはモーターがアシストする。
エンジンとモーターの動力を共に使用するハイブリッド走行時は、エンジンからの余剰電力を発電機モーターを介してバッテリーに充電することも可能。EV走行では減速時にも作動し、回生ブレーキでエネルギーを回収してバッテリーを充電する。
またトランスミッションは、先代ではDCTが組み合わされていたが、新型では新開発の電子制御式(eCVT)を搭載。ギヤ比をひとつに固定することで各部の動きを直結させ、すべての走行モードでスムーズかつ安心感のあるトルク伝達とリニアな加速感を実現した。
初代N-BOXのLPL(開発責任者)を務め、現在はF1パワーユニットの開発責任者である本田技術研究所・浅木泰昭氏は、このようにコメントしている。
「e:HEVシステムでは、F1チームの専門知識が応用されていて、どのような走行モードでも、パワートレイン制御ユニットがドライバーに可能な限り最高のパワー、そして高い効率を提供できるようにしています」
「新型JAZZのために新開発されたe:HEVシステムは、最適な燃費効率、ファン・トゥ・ドライブを実現できるように設計されました。1.5リッターi-VTEC DOHCエンジン、リチウムイオンバッテリー、そしてインテリジェントパワーコントロールユニットを介した固定ギヤ式トランスミッションに接続された、ふたつのコンパクトでパワフルなモーターで構成されています。これらが調和して、スムーズでダイレクトなレスポンスを実現しています」
世界的な脅威となっている新型コロナウィルスの感染拡大を受け、2020年のF1はいまだ開催を見合わせている。しかし現在の状況が収束し、世界が落ち着きを取り戻すころには、ホンダ製PUを搭載した2チームの活躍を期待するとともに、サーキットで得られた最新技術を活かした市販車の登場を心待ちにしたい。
(text:Kentaro SABASHI 佐橋健太郎)