【現地レポート】インディカー・シリーズの開幕直前に国家非常事態宣言が発令、2020年シーズンは一体どうなる!?
上に掲載した写真は、3月4日にフロリダ州セブリングで行われた開幕前のテスト風景。11年目のシーズンを迎える佐藤琢磨選手を含め13台が参加した。
2020年シーズンはエアロスクリーン装着マシンでの開幕となるはずだったが、すでに報じられているとおり、2020年3月13日-15日の日程で開催される予定だったNTTインディーカーシリーズの2020年シーズン開幕戦(フロリダ州セントピーターズバーグ)は中止となった。新型コロナウィルスの感染拡大防止のためだ。
その上、4月末までに開催予定だったアラバマ州バーミンガムでの第2戦、カリフォルニア州ロングビーチでの第3戦、そしてテキサス州オースティンでの第4戦オースティンもキャンセルされた。3月半ばになって、アメリカは一気にコトの重要性に気づかされたかたちだ。
この決定に至るまでを、時系列に沿って振り返ってみよう。3月9日の月曜日時点では、新聞やテレビはワシントン州やニューヨーク州でウィルス感染者数が増えていると伝えていたが、インディカー(運営本体)は、「レースは予定通りにやりますよ」と言っていた。アメリカにも不安は広がりつつあったが、それはまだ一部での話で、深刻に受け止めている人のパーセンテージは低かった。
今年は大統領選挙の年で、今は民主党が候補選びの真っ最中。全米あちこちで政治の集会が開かれていて、候補者は人々と握手しまくり、支援者は演説に大歓声で応えていた。一挙に感染が広まっても不思議じゃない状況だった。それでも、まだ3月初旬の段階では感染スピードが鈍かった。
ところが、この3月9日にバスケットボールのNBAがオーナー会議を開き、シーズンのど真ん中だというのに即座のシリーズ中断を決定した。NBAの選手に感染者が出てしまったのが決定的だった。NBAの決定に、アイスホッケーのNHLとサッカーのMLSは同調した。
3月末に開幕予定のメジャーリーグ(MLB)は、まずはプレシーズンゲームを無観客で行うことに決定。これを受けて……なのか、インディカーも開幕戦セントピーターズバーグを無観客にすると発表した。
NBAの大英断で潮目が変わった。さらに2日後、3月11日の水曜日にドナルド・トランプ大統領が、「ヨーロッパからアメリカへの入国を30日間禁止にする」と宣言。スポーツ界の自粛ムードに勢いがついた。大統領は数日前まで、「新型コロナウィルスは風邪やインフルエンザより危険性が低い」とか、「すぐにワクチンができる」とか、「ウィルス騒ぎは民主党のでっち上げ」とまで言っていたのだが……。
ここからスポーツの延期・中止の動きは加速した。ゴルフのPGAはビッグイベントをこの日にスタートさせていたけれど、第1ラウンドを終えたところでプレーを打ち切った。
インディカー・シリーズ開幕戦(セントピーターズバーグ)は、3月13日の金曜日にサポートレースのプラクティスや予選を無観客で敢行したが、同日午後になってイベントのキャンセルを発表した。アトランタで開催予定だったNASCARのストックカーレースも延期が決まった。
この日の夕方、トランプ大統領は国家非常事態宣言を行った。スポーツイベントの開催は、これで当分無理になった。ゴルフの世界ナンバーワンイベントである「マスターズ」は、4月開催が恒例のトーナメントを秋へと延期すると発表。女子ゴルフのLPGAも春先のメジャーを含めた数試合の延期を決めた。
「過剰に反応し過ぎだ!」と憤るファンもいた。セントピーターズバーグの東100マイルほどのところにあるディズニーワールドやユニバーサルスタジオは、週末も通常通りにパークをオープンし続けたし、バイカーたちはデイトナビーチのメインストリートに集結していた。オーランドウのアウトレット・モールも世界中から集まった観光客で賑わっていたし、フロリダのあちこちのビーチでは春休みの学生たちが大騒ぎを続けていた。
週が明けてから、アメリカは深刻な事態に陥った。感染者数が急増し、州によっては外出禁止令まで出された。5月の2週目、インディアナポリスのロードコースイベントでシーズンを開幕させるべくインディカーは準備を進めているが、はたしてそう順調に物事は進むだろうか?
コロナウィルスの猛威はヨーロッパでも吹き荒れており、世界三大レースのひとつであり、6月の開催が恒例となっているル・マン24時間レースは、すでに9月下旬への日程変更を決めている。残るふたつのF1モナコGPとインディ500は、どちらも同じ5月末に開催を予定していたが、モナコGPは2020年シーズンの開催は中止することを発表している。
(text:Hiko AMANO 天野雅彦)
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