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ドライビングスキルと安全運転における意識の向上を目的とした『HSDM』に、タイプRシリーズ限定プログラムが登場!

本田技研工業(ホンダ)では、自動車やオートバイ、さらに汎用機器や飛行機など、様々な製品を製造・販売している。自動車だけでなく、エンジンの備わる様々な乗り物を生み出すメーカーであることがホンダの特徴だが、その根底にあるのは「ユーザーの生活を豊かにするための存在」というコンセプトだ。

なかでもクルマは、老若男女様々なユーザーがステアリングを握る生活のパートナーというべき存在。高性能なクルマを生み出すことだけが製造者であるメーカーの責任ではなく、安全な運転を教えることも義務という考えのもと、様々なスタイルでの運転講習イベントが行われている。

そんな運転講習イベントは、ホンダの所有するサーキットである鈴鹿サーキットやツインリンクもてぎを舞台に開催されており、代表的な存在が『ホンダ・スポーツドライビング・ミーティング(HSDM)』である。これは名称のとおり、ホンダのスポーツモデルを所有するオーナーを対象としたプログラム。現役のレーシングドライバーが講師となって、急制動や滑りやすい路面での車両コントロールなどを体験するというものだ。

いずれも一般公道を走る上で、できれば体験したくない状況ではある。けれど『イザ』という場面に遭遇した際、慌てずに対処できるような技術を身につけておくことは、自分のためだけでなく、周りの人々の安全を確保する点でも重要。ホンダのこの考えは、鈴鹿サーキットというモータースポーツの敷地内に、交通教育センターが設置されていることに現れている。

この交通教育センターの歴史は長く、鈴鹿サーキットが開業してから2年後に1964年にオープン。当初から一般オーナーや企業向けだけでなく、警察官向けの研修場所としても利用されており、最初の使用は白バイ隊員の高速安全運転講習だったという。

話を『ホンダ・スポーツドライビング・ミーティング(HSDM)』に戻そう。1995年に始まった同イベントは、ホンダのスポーツモデルを対象に開催されているが、今回は『ホンダ スポーツ ドライビング ミーティング-R(HSDM-R)』という名称のイベントが9月16日に開催された。

イベント名の最後に付けられたRとは、もちろんホンダの誇るスポーツモデル「タイプR」シリーズを表すもの。HSDM-Rは、NSX-Rを筆頭としてインテグラ・タイプR、およびシビック・タイプRの歴代モデルを対象としたドライビングスクール・イベントである。

今回は「走り」を楽しむタイプRシリーズをメインとしたイベントだけに、内容も従来のHSDMに比べさらに充実したものとなっていた。講師のプロドライバーは、HSDMの設立当初からインストラクターを担当している岡田秀樹氏のほか、今シーズンもSUPER GTのGT500クラスにNSX-GTを駆って参戦する伊沢拓也選手、そしてGT300クラスに参戦する中山友貴選手の3名。

参加者はドライビングにおけるアドバイスや同乗試乗を楽しめるだけでなく、空き時間にはクルマ談義を楽しむなどコミュニケーションをとることも可能というサービスぶりだ。

もちろんメインとなる走行時間もたっぷりと用意されていた。スケジュールはまず全体のブリーフィングを行ったあと、交通教育センター(STEC)に設置されたコースでコーナリングを楽しんだほか、滑りやすいスキッドコースで車両コントロールを練習。

その後は南コースに移動し、スポーツ走行やプロドライバーが運転する車両の助手席に乗り込んで同乗走行。そして最後には、様々なビッグレースが開催される国際レーシングコースを走行することもできた。

HSDM-R当日は、真夏を思わせる青空と日差しに恵まれた。朝9時30分より参加者受付が開始となっていたが、すでに9時前から参加車両が到着し始めるなど、参加者の方々が心待ちにしている様子が伝わってくる。

今回の参加車両は「タイプRシリーズ」限定となるが、NA1/NA2型の2台のNSX-Rを筆頭に、EK9/EP3/FD2/FN2/FK2/FK8型のシビック・タイプR、そしてDC2型インテグラ・タイプRの総計26台。そして走行イベントには参加しないものの、5台のタイプRがミーティングのみに参加した。

HSDMのメイン講師を担当する岡田秀樹氏

10時より始まった開講式では、まず岡田秀樹氏がHSDMの歴史や開催意義についてをレクチャー。クルマはどんどんと高性能化しているが、だからこそステアリングを握るドライバーも安全への意識を高く持ち、また自身の技量を冷静に把握することが必要と語った。その後に伊沢拓也選手と中山友貴選手も挨拶を行い、全員での記念写真を撮影した後に午前中の走行へと移った。

ARTA NSX-GTを駆り、GT500クラスに参戦中の伊沢拓也選手

かつてGT500にも参戦、今季はGT300に参戦する中山選手は、N-ONEオーナーズカップのドライビングコーチも務めている

まず午前中に行われたのは、交通教育センターのスラロームコースにパイロンで設定されたコースと、滑りやすいスキッドコースを組み合わせての走行だ。散水によって滑りやすくなったスキッド路面は、ほぼ雪上と同じくらいの路面ミューとなっており、慎重にアクセルとステアリングをコントロールしないと、コースから大きく外れてしまう。

とくにNSX以外の車両は前輪駆動であるため、操作をミスするとステアリングを切っていてもクルマが向きを変えてくれず、どんどんと外へ向かってしまう。いわゆるアンダーステア状態を体験できる。

こういう場面で大事なのは、減速する際にしっかりとフロントに荷重をかけること。そのうえでステアリングを操作して旋回することがカギとなる。1度の走行を終えるたびに講師役のドライバーからアドバイスをもらい、見ていても明らかに走りが変わってくる様子が印象的だった。

FK8型シビック・タイプRのLPLを務めた、本田技研工業・柿沼秀樹氏

そして昼食を挟み、午後からはFK8型シビック・タイプRの開発LPLを担当した柿沼秀樹氏と、同じくS2000やNSXの開発にも携わった木立純一氏が登場。最新シビック・タイプRの開発秘話や、木立氏が現在業務として関わっている社内テストドライバーの育成、さらにタイプRシリーズの開発舞台となっているニュルブルクリンク北コースの紹介も行われた。

現在は社内テストドライバーの育成をメインに、ニュルブルクリンクへも頻繁に訪れるという木立純一氏

FK8型シビック・タイプRが実際に走行した車内画像を使用して、ニュルブルクリンク北コースのコーナーをひとつひとつ解説していく場面は参加者にも大好評で、みな食い入るような視線で説明に聞き入っていた。

その後に行われた午後の走行プログラムでは、全車が鈴鹿サーキット・南コースへ移動。南コースとは、鈴鹿サーキットの国際コースとは異なる場所にある全長約1.3kmのミニサーキットで、オートバイやカートなども走行するコース。ここでは参加者が思いっきり走れるだけでなく、岡田氏、伊沢選手、中山選手の講師陣がドライブするシビック・タイプRなどの助手席へ同乗試乗することができた。

十分に走り切ったあとは、いよいよ本日のメインイベントである本コース(国際レーシングコース)へ。SUPER GTやスーパーフォーミュラといった国内トップカテゴリーのレースや、F1世界選手権が行われるコースを実際に走れるとあって、参加者のボルテージは最高潮! メインストレート上に車両を並べて記念撮影する時間も用意されており、参加者にとっては最高の瞬間となったのではないだろうか。

そして1日のトレーニングイベントを締めくくるべく、参加者はグループに分かれて各講師がドライブする先導車両に続いて鈴鹿サーキット・フルコースを走行。先導車付きではあったものの、メインストレートを走るペースはかなりのもの。タイプRを所有するオーナーは、ドライビングスキルも高いことを改めて感じさせた。

こうして大盛況のうちに幕を閉じた第1回HSDM-Rだが、まだ次回開催は未定とのこと。タイプR以外のスポーツモデルも参加可能なHSDMは、11月23日および12月22日の2回、鈴鹿サーキットにて開催予定となっている。両日ともに参加可能な車両台数は30台の限定となっているので、興味のある方はぜひ早めの申し込みをオススメしたい。

鈴鹿サーキット
Honda Sports Driving Meeting

(photo:Yukio YOSHIMI 吉見幸夫 text:Kentaro SABASHI 佐橋健太郎)