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【ホンダアクセス】Modulo30周年を記念したトークショーイベント開催! 土屋圭市氏ほか開発メンバーが登壇(2)

2024年9月28日、ホンダ車向け純正アクセサリーの企画・開発・販売を行っているホンダアクセスは、スポーツブランド「Modulo」の誕生30周年を記念して『Modulo 30th Anniversary スペシャルトークショー』をHondaウエルカムプラザ青山にて開催した。

トークショーは二部構成になっており、ホンダアクセスOBであり、かつてModulo開発統括を務めた福田正剛氏、そしてModulo開発アドバイザーである土屋圭市氏が登場。Moduloの生い立ちや開発コンセプトについて紹介された。(前編はこちら)

続いて第二部では「最新のModulo」について紹介するべく、ホンダアクセスの山崎純平氏が登壇。山崎氏は、マイナーチェンジを受けた新型シビックにあわせて発表された、テールゲートスポイラー(ウイングタイプ)の開発担当者である。福田氏や土屋氏という大ベテランに支えられながら製品開発を行った日々、そして製品の特徴について話が進んでいった。

今回、発表されたテールゲートスポイラーは、ウイングタイプとダックテールタイプの二種類。山崎さんが担当したのはウイングタイプのほうで、こちらの原型は2022年の東京オートサロンに出展された「CIVIC e:HEV SPORTS ACCESSORY CONCEPT」に見ることができる。

ホンダアクセスでは、シビック タイプRにオリジナルのテールゲートスポイラーを設定していたが(すでに受注終了)、こちらの開発で得られた知見を投入し、シビック/シビックe:HEVに最適な形状として開発へとされたものが「テールゲートスポイラー ウイングタイプ」だ。

「今回、発売となるシビック用テールゲートスポイラーは、先に発売したシビック タイプR用のスポイラーをベースに制作されたとのことです。車体としては同じシビックですから、開発は比較的スムーズに行えたのでしょうか?」

まずはトークショーのMCを務めていたピエール北川氏から、タイプR用スポイラーと今回のテールゲートスポイラーの関連性について、山崎氏へと質問が投げかけられた。

「シビック/シビックe:HEVとシビック タイプRは、前後バンパーをはじめボディ各部の形状がだいぶ異なっています。もちろん全幅をはじめ車体サイズも違いますし、なによりエンジンパワーに大きな差があります。そのためデータ的に流用できる部分は多くなくて、シビック用にイチから制作する必要がありました」

ホンダアクセスの山崎氏は、開発を振り返ってこう語った。実際にシビック/シビックe:HEVとシビック タイプRとではエアロパーツの形状はそれぞれ異なり、そのため実際の空力性能や車体前後のバランスにも違いがあるという。ただ『ゼロから』ではなく『イチから』という言葉が示すように、ベースとしては共通する部分もあったようだ。

このテールゲートスポイラー ウイングタイプは、ホンダアクセスのModuloブランドが掲げる『実効空力』コンセプトを投入して開発された。従来に設定されていたスポイラーと比べると、ウイング部分の立体的な形状や存在感のある翼端板、なによりウイング下面に備わる「シェブロン」など、違いは明らか。それでいて素材をFRP製とすることで、求めやすい価格帯を実現している。

そしてステージ後方のスクリーンでは、開発風景の映像が流された。その冒頭に飛び込んできたのは、ウェット路面で派手なカウンターステアをあてながら疾走するシビックの姿。ステアリングを握っているのは、もちろんModulo開発アドバイザーの土屋圭市氏である。そして助手席には、福田氏や山崎氏の姿があった。

「開発者には、クルマの挙動などを感じ取る能力が必要です。このテールゲートスポイラーの開発中に、ホンダのテストコースである鷹栖プルービンググラウンドで走りの動画収録をすることになりました。開発中のスポイラーを装着した土屋さんが運転するシビックを、撮影班が乗る車両で追いかけるわけです」

開発過程におけるエピソードを、福田氏はこのように話してくれた。走行テストやパーツ開発風景などが納められた映像は、なんとホンダアクセスのメンバー自ら撮影を行ったものだという。

「走ったり撮ったり、僕らはなんでもやるんです。やりたくなっちゃう性分というんでしょうか(笑)」

「テストコースは基本的に速度上限が決められていて、今回の場所は時速120kmと設定されています。かなり荒れた、うねりのあるコースです。そこを土屋さんが時速150〜160kmで走る。限界領域あるいは超えたところで車体がどのような反応を示すかを見たいわけだから、そのような速度設定になる」

コースは複数の車線が並行しており、うねりのある車線の隣には、普通のフラットな路面の車線がある。そのフラットな車線を走る撮影車両の運転を山崎氏が任せられたのだが、土屋さんの車両を追いかけるのは非常に難しかったという。

「この場合、重要になってくるのはアクセルワークです。ガバッと踏むのではなく、じわりと優しく、それでいて明確に大きく踏む。スムーズにクルマを走らせないと、土屋さんの運転するシビックについていけません。テストコースでの業務が終わったあとに居残りして走行するなど、丁寧なアクセルワークを身につけるため必死で練習しました。そのおかげで、何とか無事に撮影できました」

福田さんはそのようにエピソードを紹介してくれた。山崎氏も当時の苦労を思い出したのか、ちょっと照れくさそうな笑顔を見せ、「ホンダアクセスはクルマを鍛えるだけでなく、人も鍛えています」と教えてくれた。

Moduloの開発コンセプトである『実効空力』の象徴でもあるシェブロンデバイス。サメの歯のような、鋸状のギザギザの形状が特徴だが、今回のテールゲートスポイラーには、中央のウイング部分下面に配置されている。開発段階では、スポイラーの上面に配置してみたり、2列や2段重ねにしてみるなど、様々な試みが行われたという。

「ステー部分より外側に3つのシェブロンデバイスが配置されているのですが、この両端の3つが重要なんです。翌端板から発生する乱気流を整える効果があり、現在は特許の申請中です」

ホンダアクセスの開発コンセプトである『実効空力』は、決してデザインの良さだけではなく、街中を走る速度域でも、また運転技術や運転経験がまだおぼつかないような人でもその効果が体感できることを掲げている。

映像ではシビックでカウンターステアをあてている場面があったが、もちろんこれはドリフト走行を推奨しているわけではなく、リアタイヤがブレイクするような状況でも車体が安定し、ステアリング操作のコントロール下にあることを示している。その効果をもたらしているのがテールゲートスポイラーであり、『実効空力』のシェブロン形状デバイスの実力だと、土屋氏は話してくれた。

「シビック用テールゲートスポイラーは、シビックRSだけでなく、EXやLXのガソリン車やe:HEV、もちろんマイナーチェンジ前のシビックにも適合しています。すでに純正アクセサリーのスポイラーを装着いただいている方には、ステー部分は継続して使用できるよう、スポイラー部分だけを販売するパッケージも用意しました。シビック タイプR用スポイラーを超える製品ができたと確信しているので、ぜひ多くの皆様に体感していただきたいですね」

シビック用テールゲートスポイラー ウイングタイプの開発責任者として、山崎純平氏はこのようにまとめてくれた。

ホンダ車の実力をもっとも熟知し、その魅力をさらに引き出してくれるホンダアクセスの純正アクセサリー。スポーツブランドであるModuloが歩んできた30年は、そのままホンダ車ファンを育んできた歴史でもある。

トークショーの最後には、Moduloグッズほか豪華製品がプレゼントされるじゃんけん大会が行われたほか、来場者との記念撮影タイムも設けられ、大盛況のうちにイベントは終了した。

ホンダアクセスという生粋の技術屋集団と、永遠のクルマ好きである土屋圭市氏のコラボレーション。Moduloが掲げる『実効空力』のさらなる進化と、そしてコンプリートカー・シリーズ「Modulo X」の進化に、今後も大きな期待を抱かずにはいられない1日となった。

(text:Kentaro SABASHI 佐橋健太郎)

ホンダアクセス
https://www.honda.co.jp/ACCESS/