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【ホンダアクセス】Modulo30周年を記念したトークショーイベント開催! 土屋圭市氏ほか開発メンバーが登壇(1)

ホンダ車向け純正アクセサリーの企画・開発・販売を行っているホンダアクセスは、自社の展開するスポーツブランド「Modulo」の誕生30周年を記念したイベント『Modulo 30th Anniversary スペシャルトークショー』を、Hondaウエルカムプラザ青山にて開催した。

通常はホンダの二輪&四輪が展示され、カフェスペースも用意されるなど憩いの場ともなっているウエルカムプラザに、Modulo用品を装着した新型シビックRSやヴェゼルといった最新モデルのほか、FD2型シビック タイプR、NSXタイプSといったホンダの歴代スポーツ車両が展示されたこともあり、当日は朝から多くの来場者で賑わった。

176名もの来場者がもっとも楽しみにしていたのは、Modulo開発メンバーが登壇するトークショーだ。イベントは二部構成になっており、まず前半はホンダアクセスOBであり、かつてModulo開発統括を務めた福田正剛氏、そしてModulo開発アドバイザーである土屋圭市氏が登場。

そして後半には、新型シビック用テールゲートスポイラーの開発者である、山崎純平氏も加わってのトークショーとなった。 MCを務めたのは、モータースポーツアナウンサーのピエール北川氏と、カーライフジャーナリストのまるも亜希子氏。おふたりとも根っからのクルマ好き・Modulo好きとあって、トークショーは放送コードギリギリ(!?)、笑いが絶えない盛り上がりとなった。

さて今年30周年を迎えたModuloとは、ホンダアクセスがラインナップするホンダ車向け純正アクセサリーのスポーツブランドである。ホンダ車オーナーであれば、Moduloのロゴとともにサスペンションやエアロパーツの姿が思い浮かぶだろうし、コンプリートカー・シリーズのModulo Xを所有しているという人も多いはずだ。いっぽうモータースポーツファンにとっては、SUPER GTに参戦している64号車Modulo CIVIC TYPE R-GTを思い浮かぶことだろう。

現在ではストリートからレースシーンまでその名が拡がっているModuloブランドだが、その最初の製品は純正アクセサリーのホイールブランドであった。今回その第一号ホイールも展示されたが、スポーティなだけでなくドレスアップを重視したデザインであることが印象的。

こうして1994年にModuloブランドが誕生すると、翌1995年には車両法の規制緩和がなされ、チューニングやドレスアップなど、アフターマーケットパーツの需要が急増する。Moduloもホイールだけでなく、エアロパーツやサスペンションとカテゴリーを拡大させていき、やがて2013年に誕生したコンプリートカー「Modulo X」シリーズの開発へと繋がっていった。 

そんなModuloに、開発アドバイザーとして関わっているのが土屋圭市氏である。かつてレーシングドライバーとして活躍し、もともとストリート出身であることを公言していることからチューニングカーに関する愛情や造詣も深い。その卓越した運転技術は今なお健在で、クルマを意のままに操るドライビングテクニックから、「ドリキン(Drift King)」の愛称でも知られている。

「僕がホンダアクセスとお仕事をご一緒させていただいたのは、たしか2008年ごろかな。レーシングドライバーのときからお世話になっていた人が、本田技術研究所からホンダアクセスへと転籍していてね。Moduloの世界づくりを手伝ってほしいと、声をかけていただいたのがきっかけです」

土屋さんは、ホンダアクセスとの接点をそう振り返る。当時、メーカー系列のチューニングブランドといえばトヨタのTRD、日産はNISMOが知られていた。ホンダアクセスもそうありたい、というのが始まりだったそう。

そして土屋さんが参画して1年後、福田正剛さんがホンダアクセスへと加入する。

「もともとは本田技術研究所で開発の仕事をしていました。当時の上司に声をかけられ、ホンダアクセスへと入ったのですが、実は当時Moduloの存在をよく知らなかったんです。いざ異動してみたら、土屋さんはいるし、こだわりの強い開発者の方々が多くて、なんかヤバい部署に来ちゃったなって思いました(笑)」

土屋さんと福田さんが本格的にModuloの世界観を作り上げようと注力した結果、ホンダアクセスの存在を世に知らしめるヒット製品が誕生する。それが2008年に発売したFD2型シビック タイプR用スポーツサスペンションだ。

歴代シビック タイプRにおいて唯一の4ドアセダンであるFD2型は、専用18インチタイヤを装着するなど、サーキットにおける運動性能を徹底的に追求したモデル。その反面、市街地では脚まわりのセッティングが「固すぎる」という声も聞かれたが、ホンダアクセスのスポーツサスペンションは優れた乗り心地と高い運動性能を両立。残念ながら現在は絶版部品となっているものの、FD2型シビック タイプRオーナーのあいだでは今なお人気のサスペンションである。

「当時、このFD2型シビック タイプRでスーパー耐久に参戦することになったんです。それはいいんだけど、まわりはスリックタイヤを履いたレーシングカーなのに、ホンダアクセスは『しなやかな足と市販タイヤで戦え』って言うんです。普通に考えたら、レースとは真逆の発想。めちゃくちゃでしょ? でもね、十勝24時間レースでちゃんと勝ったんです」

この年のスーパー耐久には、ホンダアクセス以外にもFD2型シビック タイプRで参戦するチームがいた。それは本田技術研究所の社内チームである。いわば「本家」が仕立てた純レーシングカーを相手に、しなやかな足で同等のタイムを出しただけでなく、24時間レースでは優勝も飾ったことが強く印象に残っているという。

「だからホンダアクセスの開発者は、常識に捉われない、数字に頼らない人たちが多いなっていうのが僕の印象ですね。レーシングカーでも市販車でも、最近はコンピュータでの開発が多くを占めている。だから机上論で完成みたいにいう人もいるんだけど、でも机上の理屈で数値が出ているから良いクルマになるかというと、そうじゃないんだよね。天気だとか風だとか、温度や路面の状態など、やっぱり走らないとわからないことがある。ホンダアクセスの開発メンバーはそれがわかっているから、しつこいぐらいよく走りますよ。少しは休憩入れようよって僕が言いたくなるくらいね(笑)」

ホンダアクセスのModuloにおける開発は、徹底的に実走テストを重ねることで知られている。それはテストドライバーだけでなく、デザイナーやモデラーといったメンバーもステアリングを握る。速度の高い限界領域だけでなく、一般ユーザーが公道を走るような領域でも、Modulo製品を装着したことによる変化が体感できる、それがModuloに受け継がれるフィロソフィだ。

「なにげなく走る街中の交差点で、ステアリングを切った瞬間に『なんか違うな』と感じられる、それがModuloの良さだと思っています。運動性能を高めるのは大事だけれど、僕たちはレーシングカーを作っているわけじゃない。ベース車両とは明らかに違う、でも明確にどこかが違うのではなく、すべてがワンランク上っていう世界観を目指しているのがModuloの面白いところ。そしてワンランク上のタイヤを履いてるのかな?っていう走行感覚を、脚まわりやエアロの設計で作り出そうとするのがホンダアクセスのメンバーです」

土屋さんはModulo製品およびホンダアクセスの開発陣をそう説明した。

そして2013年には、単体パーツとしてのModuloとは別に、車両全体をトータルプロデュースしたコンプリートカー「Modulo X」が登場する。これまで初代N-BOXを皮切りに、初代N-ONE、二代目フリード、五代目ステップワゴン、初代ヴェゼル、S660、四代目フィットと計7モデルが開発されている。

「ホンダアクセスでは現場体験を大事にしていて、国内では北海道の鷹栖プルービンググラウンドや、ドイツのアウトバーンにも開発陣が実際に行って走ってみるのです。当然ですが最初は打ちのめされましたよ。でも、それでいいんです。とにかく挑戦して、仮に良くない結果に終わってもそこで終わらない。次は絶対に失敗しないぞと考える。手を動かす。それってホンダのもっとも大事な、そして得意なところだと思うんです」

福田正剛さんは、ホンダアクセスのModulo開発メンバーの強みをそう教えてくれた。

 そしてここで、トークショーの第一部が終了。第二部では新型シビックに設定されたテールゲートスポイラー ウイングタイプの開発を担当した、ホンダアクセスの山崎純平氏が加わり、最新のModulo製品について話が進んでいく。(後編へ続く)

(text:Kentaro SABASHI 佐橋健太郎)

ホンダアクセス
https://www.honda.co.jp/ACCESS/