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【ヴィンテージホンダ】所有して30年、ガレージも建設!「今でもワクワクします」というS600の魅力を聞いてみた

美味しいものを食べにいくツーリングで、仲間たちと山道を駆けるカブ。ひとりでふらりと走りたいときは、フィールドにあわせてCBXとXRを使い分ける。そしてサーキットでのスポーツ走行を中心に楽しむのは、S600。今回はホンダの4輪&2輪が並ぶガレージを訪ねてみた。

(Honda Style 96号/2020年3月号にて掲載)

1965年式S600で鈴鹿サーキットを走る

ホンダスポーツと同年代の空冷の仲間たちが鈴鹿サーキットに集まることから始まったという、ホンダツインカムクラブの主催するイベントが『オールジャパン ホンダ スポーツ ミーティング(AHSM)』だ。

鈴鹿サーキットといえば、F1日本グランプリも開催されるインターナショナルサーキットである。フルコースでの走行会は、国内の他のサーキットに比べ、開催回数はさほど多くはない。ましてやホンダファンにとっては、モビリティリゾートもてぎとともに、特別なサーキットといえる。

鮮やかなカラーのハードトップ が目を引く外観。車高は下げられてレーシーな雰囲気を漂わせる

毎年このイベントはたくさんのホンダスポーツが集結するのだが、今年は、40回目の開催というアニバーサリー・イヤーということもあり、エスはもちろんのこと、その数なんと110台を超える同世代のホンダ車が、聖地である鈴鹿サーキットに、日本全国から集まった。

イベント当日の鈴鹿サーキットは雨の天気予報も見事に裏切られ、真っ青に晴れわたる空に恵まれた。パドックに並んだ参加車両のなかに、うっすらとアイボリーっぽくもある白色のボディに鮮やかなオレンジ色のハードットップが装着された、ひときわ目をひくS600があった。

今回のヴィンテージホンダは、エスを愛車にしてちょうど30年が経過したというオーナーの佐藤有仁さんを訪ねた。

マフラーは2016年にワンオフ製作したというスペシャル品で、高回転域での快音がお気に入りとのこと

「平成元年にガレージスズキさんで購入したので、もう30年経ちました。ボディは痛んできていますが、機関は調子いいですよ」

もともとは、TE27やEP71スターレットなどのスポーティカーを楽しんでいたという佐藤さん。スターレットからの乗り換えで、次はハチロクもいいなと買い替えを考えていたこともあるという。

「免許を取ったころに、東名阪道で赤いエスとすれ違ったんですよ。当時は600なのか800なのか、わかりませんでしたけど。その後ときどき、フラッシュバックっていうんでしょうか、あれ良かったな〜と思い出すことがあったんです」

ホイールはアドバンのスーパーRAPに、175/60サイズのA050を組み合わせる。サイズ的に選択肢が少ないことが悩みとのこと

当時は全国にエスの専門店が点在しており、佐藤さんの住む地域の近くにも専門店であるガレージスズキがあった。

「知っている人は懐かしいと思うでしょうね。見にいったら、あの商談スペースで、契約書にサインしていました」

奥様である実香子さんとの新婚旅行は、愛車S600での富良野〜札幌〜小樽〜登別〜苫小牧というドライブ旅行。写真は支笏湖にて実香子さんとS600。

S600を購入し、妻の実香子さんとの新婚旅行は北海道。もちろんS600での北海道のドライブ旅行を楽しんだ。その後も主に週末のドライブに使っていたエスであるが、やがて以前より興味のあったサーキットにも足を向けるようになったそうだ。

そして購入した翌年にはAHSMを見学し、安全に楽しめるようにと当時の「名岐オート(現工房名岐)」で、ロールケージやバケットシート装着などのモディファイを敢行。エスが育った鈴鹿サーキットでの走行を楽しむようになる。

ステアリングはフランスのMUREXを使用。35.5センチ径という大きさが扱いやすいそう

S600は主に週末用の趣味のクルマとして楽しんでいたが、通勤でも同じエンジンフィールを楽しみたいということで、ライトバンのL700は部品取りを含めて2台を所有していたこともあるそうだ。エスと同じく高回転型エンジンを搭載したL700を駆り、通勤など日常生活も楽しんでいたという。

タコメーターのレブは1万500回転からに書き換えられている

しばらくして佐藤さんの住む地域では、NOx規制により4ナンバー車が乗れなくなるということで、泣く泣く手放してしまった。現代であれば、5ナンバーとして登録し直すなど維持していく方法がインターネット上などで調べることができたかもしれないが、この時はもう絶望的だろうなと諦めてしまったという。

とても残念なことをしたと、佐藤さんは今でも思っているそうだ。

新築されたばかりのガレージに眠る、ホンダばかりの6輪生活

S600を趣味車として楽しみつつ、佐藤さんは同時にモーターサイクルも楽しんでいる。「建て替えたばかりで、物置き状態になっちゃっています」と言いながらも、S600の予備パーツはしっかりと整理されており、すぐに確認できるようになっている。

広々とした空間のガレージには、S600と並んでC105のカブにXRモタード、CBXなど5台が並んでいる。そんな佐藤さんが、30歳で自動二輪車の大型免許を取得し、最初に選んだのはCB900Fだった。

「6気筒のCBXに乗ってみたかったのですが、程度のよいCBが出たので、まずは購入したんです。でも結局、やはり6気筒に乗りたくてね」

現在、ガレージに収まっているのは、佐藤さんにとって2台目となるCBXだ。購入してまだ3年目だという。

「以前は赤の後期型を16年持っていましたが、欲しいという方が現れて手放してしまったんです。でもなくなると寂しくなり、次買うならと思っていた前期型を3年前に手に入れました」

CBXとXRは、ひとりでふらっと走りたいときにコースによって使い分け、カブは仲間達とのツーリングがメインとのこと。

「カブはトコトコと仲間達と各地の美味しいごはん目当てのツーリング。サーキットで目一杯回転を使って走るエス。ともに小排気量ですが、正反対の楽しみかたをしています」

扱い切れる楽しさがエスの良さ

鈴鹿サーキットでの『オールジャパンホンダスポーツミーティング(AHSM)』を、S600を入手してから30年間ずっと楽しんでいる

そんな佐藤さんであるが、エス熱が一時冷めていた時期というか、エスと離れていた時期が10年あった。聞けば、職場の仲間に夏山登山に誘われて、白馬岳へ。以降すっかり山登りに夢中になり、各地の山々を制覇することを楽しんでいた。

「夏山を中心に冬山も楽しみました。単独行もありましたし、妻とトレッキングを楽しむことがあって。10年のブランクは、登山にハマってしまったからなんです」

とはいえクルマ遊びを休止していた時期にも、AHSMのイベントは欠かさずに見学に訪れていたという。

「毎年、見るたびに来年こそ走る準備をしようと思っていましたが、10年も経っていましたね。今は鈴鹿を走るようになり、また10年が経ったところです」

改修される前の富士スピードウェイも走っていたことがあるが、どこを走ってよいか戸惑うこともあったという。ホームコースである鈴鹿サーキットはコース幅もほどよく、とくに愛車であるS600での走行は、ストレートでは気持ちよく踏んで行けるし、シフトタイミングやスロットルオン、ブレーキングにテンポよく追従していくのが楽しいそうだ。

さすがにこのサーキットで作られただけあるな!と、思うくらいの楽しさがある。佐藤さんはそう話してくれた。

「エンジンのことを労ったら9000回転くらいでシフトアップしてあげるのが良いのでしょうけど、1万1000回転くらいまでは許容かなと踏んでしまうこともあります」

現在はオリジナルのエンジンは温存され、オーバーホールした別個体のエンジンに載せ替えられている。キャブレターは3年間にノーマルからFC 、そしてFCRへとアップデートされた。

昨年に交換装着したというFCRキャブレターにより、さらに高回転でのエンジンフィールが向上。一気に吹け上がると大満足で、来年の走行が今から楽しみだという。

手に入れてから30年という佐藤さんのS600。様々な温度感を経て継続してきた愛車生活は、今後もずっと続いていくことだろう。

Owner
佐藤有仁さん

取材当時56歳の佐藤さん。ご自身と同い年だというC105以外にも3台のカブを所有し、モディファイ用、ノーマル用と、それぞれの車両を使い分けて楽しんでいる。

(photo&text:Junichi OKUMURA 奥村純一)