【K-TAI】現役高校生がカート7時間耐久レースに参戦! レースで何を感じ、何が楽しかったのか?
2001年に第一回大会が開催され、今年で23回目となった「もてぎKART耐久フェスティバル」通称”K-TAI”。今年も「みんなでKARTを楽しもう」をコンセプトとして、7月14〜15日にモビリティーリゾートもてぎで開催されました。
“みんなで”という言葉が示すとおり、K-TAIは参加できるエンジンのバリエーションが富んでいます。レンタルカートなどで使用されている4ストロークの汎用エンジン「ホンダGXシリーズ」などを搭載した「クラスI〜Ⅲ」、バッテリーによって駆動する電動カートの「クラスE」、次世代型バイオマス燃料(ELF E90-2 )を搭載した「クラスF」の計5クラスが用意されています。
このK-TAIの最大の魅力は、ずばり老若男女を問わず誰でも気軽に参戦できる点です。カートレースへの参加経験のない人でも、満16歳以上で原付免許以上を所持していれば参戦資格はクリアになります。また「JAFライセンス」や「SLカートメンバー」などの資格を持っていれば、満10歳以上で参加することもできます。
つまり世代やカート経験の有無を問わず、モビリティリゾートもてぎのフルコースで7時間の耐久レースを楽しめるのが、K-TAIの醍醐味といえるでしょう。
「エンジンに背中を押される」感覚に大興奮!
自己紹介が遅れました。僕は10歳の時から今年で8年連続してこのK-TAIに参加させていただいている田中佑翼(ゆうすけ)と申します。埼玉県の公立高校に通う18歳(高校3年)です。
レース好きの父の影響で、幼い頃からF1やSUPER GTなどをテレビやサーキットで観戦していました。そのうち見ているだけでは物足りなくなり、小学校年生のころから父にねだってレンタルカート場に連れて行ってもらうようになりました。ちなみに、僕が一番好きなドライバーはセバスチャン・ベッテル選手です。
初めてカートに乗った時の感覚は、今でも忘れることができません。それまでは乗り物といえば自転車しか乗ったことがなかった自分にとって、アクセルを踏んでエンジンに背中を押される感覚がとても衝撃的で、今でも鮮明にあの日の興奮を覚えています。
実際に自分でサーキットを走るようになってからは、ただ観戦しているより何倍もレースを楽しめることに気づき、どんどんのめり込んでいきました。そして、いつしかK-TAIに出場することが自分の夢になっていったのです。
レースを通じてエンジンへの興味が高まる
僕がこれまでのK-TAIで、8年間お世話になり続けているのは『クラブレーシング』というチームです。チームメンバーの中にはホンダGX270エンジンを知り尽くすエンジニアがいらっしゃいました。ドライビング技術はもちろんのこと、その方からエンジンそのものについてのお話を伺っていると、おのずと内燃機関について興味がわいてきました。
そこでチームの方に協力していただき、小学生の時の夏休みには「エンジン」をテーマとして自由研究に取り組みました。エンジンについてまったくの無知だった僕にとっては初めて知ることばかりで、それはもうすべてが新発見の連続でした。その中でも特にエンジンにとって非常に重要な役割を担っている、キャブレターの「ジェット」という部品に興味がわきました。
「ジェット」とはガソリンと空気を混合させる際のガソリンの量を調節するための非常に小さな部品です。「ジェット」にはたくさんの種類があり、当日の天候や気温、湿度に合わせて適切なものに変更する必要があるのですが、あれほどまでに小さい部品一つでエンジンパワーやアクセルを踏んだ時のフィーリングに大きな差が現れることを知ったときは、もはや驚きを通り越し、頭の中が「???」でいっぱいになりました。
また、4ストロークエンジンの仕組みそのものである「吸気」「圧縮」「燃焼(爆発)」「排気」という行程にも関心がわきました。僕が初めてカートを乗った時に衝撃を受けた「背中を押される感覚」が、じつは小さなエンジンのなかで一分間に何千回も繰り返されている爆発によって生み出されているエネルギーであることを知った時の驚きは、いまだに忘れられません。
さらにホンダGX270エンジンは、真夏で灼熱のモビリティリゾートもてぎを長時間にも渡ってトラブルなく全開で走り続けられること、トラブルが起きてしまったとしても対処してまたすぐに走り出せる力強さには、感動すらおぼえました。
こうした体験のおかげで、いまの僕は大学の機械工学科で内燃機関を学びたいと志すようになりました。僕の進路は「カート」と「K-TAI」によって定まったのです。
レースの雰囲気は、まるで学園祭やお祭りみたい
そんなK-TAIの魅力を数え上げればキリがないですが、モビリティリゾートもてぎのフルコースを、自分自身で体験できることにあると思います。
このコースは、ゲームの『グランツーリスモ』で幼少期から幾度となく走っていますし、SUPER GTを現地で観戦したこともあります。しかし「実際に自分でステアリングを握って走るもてぎ」は、「ドライビングシミュレータやレース観戦では知り得ないもてぎ」です。
しかもカートであれば、SUPER GTはもちろん、スーパーフォーミュラよりも路面に近い着座位置でもてぎを感じられます。名物である白と青の縁石に乗った時の独特な振動を体感できる感動は、8年間乗り続けていても色褪せることはありません。
また仲間と一緒に戦い、共有する7時間は、最高の時間です。トラブルやアクシデントがあった時は、誰が何を言わずとも各々の役割で必死に動く姿が僕は好きです。耐久レースの雰囲気は、まるで学園祭や祭りに参加しているような感覚になり、なんとも心地いいのです。
今年、僕が乗った96号車は、64番手グリッドからスタートし、誰かが怪我をすることも、マシントラブルに見舞われることもなく30位(クラスⅡ内順位)でチェッカーを受けましたが、レースが終わった時の寂しさには、いまだに慣れることができません。
ともあれ、高校3年の夏という大学受験に向けて大切な時期に、実質2日間、1秒たりとも勉強しなかった僕は、果たして志望校に合格することができるのでしょうか? 1年後には受験勉強に追われず、心置きなく、またK-TAIに参加させていただきたいと思っています。
最後になりましたが、チームの皆さん、今年も大変お世話になりました。そして、貴重な時間を本当にありがとうございました。
(Photo:Club Racing クラブレーシング 森山良雄/伊藤毅/西川昇吾/井上悠大、Text:Yusuke Tanaka 田中佑翼)
(協力:株式会社ホンダファイナンス/関彰商事株式会社/本田技研工業株式会社/ホンダモビリティランド株式会社/株式会社ホクビー/(有)ケイズカンパニー)