【K-TAI】大学生ドライバーがカート7時間耐久に初参戦! 10代最後の夏に一生忘れない想い出ができました
みなさんはじめまして。19歳大学生の長野優正です。
挨拶も早々に突然ではありますが、「K-TAI」というイベントをご存知ですか? モビリティリゾートもてぎで開催されるカートの耐久レースで、正式には「もてぎKART耐久フェスティバル “K-TAI”」といいます。今年で23回目を迎えた真夏の祭典的なイベントですが、僕は参加5回目にして、幸運なことにドライバーとして参戦できる機会をいただけました。関係者の皆様、本当にありがとうございます!
参戦したばかりの頃、僕は高校1年生でした。その時は、サポーターとして軽作業やタイムキーパーなどを行い、チーム内の皆さんの動きを覚えていきました。その後は、少しだけカートに触れられるような作業を担当させてもらっていました。
もちろん、安全にもてぎのフルコースを走行してもらうため、メカニカル面の重要な作業はまだまだ見ているだけですが、近年、カートについて学んだり触れたりする機会が増えていたので、できることには積極的に携わるように意識していました。そして、このことが結果的に、ドライバーとして参加できたことに繋がっているのかなと感じています。あ! なぜカートに触れることが多くなったかについては、後ほどご説明しますね。
「楽しむ」のが目的で、マシンはレンタルカートに近い
「K-TAI」のイベント趣旨は「単に勝敗を競うのではなく、みんなでKARTを楽しもう」というもの。レースなので、軽く殺気だった人たちの姿もピットのあちこちで見受けられたのですが、「16歳以上で原付免許以上を所持」していればドライバーとして参加が可能です。
カートの経験がある方はもちろん、あまりカート経験豊富ではない方や、学生から僕のおじいちゃんと近い年齢の方、まさに老若男女が参戦をしています。そしてもちろん女性ドライバーも多くの方々が参加されており、なかにはめちゃくちゃ速い方々もおられます。コースではあっさりちぎられ、あっという間に先へ消えていきました……。
マシンはフレームもエンジンも一般のレンタルカート場で使われているものとかなり近く、僕が所属をしているチーム「クラブレーシング」では、ホンダの汎用エンジン「GX 270」を使用しています。車両規定については初期から参加をしている先輩メンバーに聞くと、K-TAI黎明期に比べてかなり厳しくなっているようです。それでも、近しい排気量とは思えぬスピードでぶっ飛んでいくマシンは数多く、レースの奥深さを身を持って体験しました。
マシンの速さは重要ですが、7時間にもおよぶ耐久レースのため各ドライバーの担当周回数や給油タイミングなどの戦略性も求められます。もちろん、ドライバー個々のスピードも重要です。約100台ものカートが約4.8kmものコース内でひしめき合うので、抜きつ抜かれつはいたる所で行われ、その際にタイムを大きく落とさずに走行することもドライバーに求められる技術のひとつでした。
ちなみに、もてぎのフルコースは一般的なカートコースに比べ全開率が高く、ブレーキで使用する左足はあまり使わないイメージです。実際にはチョンブレを含め、1周につき6回ほどブレーキを踏んでいましたが……。
コース幅も広いため、スピード感にも慣れが必要です。“このコーナー、このまま行けるでしょ!”は、大抵間違いで、コーナー侵入前後でスピードをうまくコントロールしないと立ち上がりに苦戦するか、いとも簡単にアウトに膨らみ、最終的にダートのお世話になります。
それから、サーキットあるあるですが、モニターやコース図で確認できる以上にバックストレートは長く下っており、速度も気づくと120km/hオーバーに。普段からカートに乗っている僕でも、正直なところ路面すれすれをこんなスピードで走った経験は無かったため、最初の数週は楽しさよりも怖さが先行しました。
そうそう、普段からカートに触れている理由についてまだ話していませんでしたね。高校時代にK-TAIに関わったことによりカートの魅力を知り、大学入学を機にレンタルカート場でバイトを始めていたのです。なので、軽いメンテナンス作業などを行えるようになっていました。
そのいっぽう、ドライバーとして”乗りたい!”という気持ちも生まれてきていました。レンタルカート場で知識を深め、ドライビングも学び、バイト代でK-TAIに出るための装備品一式を揃えるという、我ながらうまい循環を作り出せたなと思います。
ところで、フルコースのコーナー部には、カートの大敵と言える”ブツ”があります。それは、縁石です。
初めてコースに出た際にギョッとしたのですが、フルコースの縁石は、そこそこの高さがありました。レンタルカート場でも縁石を備えるところはありますが、もっとなめらかですし、そもそもカート場とフルコースでは絶対的なスピードが異なります。「これに乗ったらフレーム、いや、足回りのベアリングを痛めるなー」とか、「ん? この縁石は乗り方次第では姿勢制御で活かせるかも……」などなど、縁石ひとつがとっても試行錯誤の材料となり、ドライバー初体験は、とても興味深いものとなりました。
チームメンバーと一丸になってゴールに向かう!
僕が所属しているチームはメディア関連の方が中心で、毎年、複数のメディアの方が新人ドライバーとして参加しています。そのため、合言葉は「完走」と「ノーメディカル」です。
しかしながら7時間耐久レース、そう簡単には終わりません。個々で自分の能力の最大限のパフォーマンスを出そうとすると、スピンやコースアウト、接触などはどうしても起きてしまいます。そこで助けてくださるのがメカニックのみなさん。トラブルも迅速に対応し、マシンを再びコースへと送り出してくれます。
また、サポーターの方々は、走行しているマシンのタイムや周回数の管理、サインボードの提示や、食事の用意などで、文字通りにドライバーやチームをサポートします。まさに、チーム一丸となって戦うのがレースです。
レースではドライバーばかり注目されがちですが、さまざまな人たちの協力によって参戦できているのだと、運転する側として参加することでより強く感じました。
10代の夏の記憶として一生忘れない
今年のK-TAIエントリー台数は99台。くじ引きで決まったスタートのグリッドは67番手。その結果を受けて、作戦は、できるだけ燃費を稼ぎ、ピット回数を減らすことにより徐々に順位を上げていくというものになりました。
そのため、ストレートや上り勾配ではスピードがあまり伸びず、同クラスのカートに簡単に抜かされる状況です。一方でライン取りやスリップストリームの使用法、混戦下では無駄の少ない走りを意識するなど、バイト先で学んだ走行法も踏まえていろいろと試行錯誤をすることもできました。
決勝中もタイムをじわじわと削ることができ、また、ミラー&目視でのチェックに加え、とにかく事故やハプニングを起こさぬようにある程度自制して走ったことにより、コースアウトやスピンをすることなく自らのスティントをこなすことができました。
耐久レースの王道をうまくトレースできたのではないかという思いと、チームメンバーの力走もあり無事に完走することができたため、レース終了時の達成感は言葉にできないほどのものとなりました。気づかなかったのですが、一緒にチームに参加していた父の話によると、どうやら僕は相当にニコニコしていたようです。ちょっぴり恥ずかしい気持ちにもなりました。
過去4回のサポーターとしての経験があったからかもしれませんが、後日、メカニックの方に「安全に走行してくれてありがとう!」と連絡をいただけたことは、10代の夏の記憶として、一生忘れることのないものとなりそうです。
関係者の皆様、貴重な体験をさせていただき、どうもありがとうございました!
(text:長野優正、photo:クラブレーシング 森山良雄/伊藤毅/西川昇吾)
協力:株式会社ホンダファイナンス/関彰商事株式会社/本田技研工業株式会社/ホンダモビリティランド株式会社/株式会社ホクビー/(有)ケイズカンパニー