【Modulo X 10周年】最新のフリードHYBRID Modulo Xはどうスゴい?フリードModulo Xから乗り換えて試してみた
ホンダ車向け純正アクセサリーの企画・開発・販売を手がけるホンダアクセスが、車両全体の開発を手がけたコンプリートカー・シリーズが『Modulo X』だ。自動車メーカー直系というメリットを最大限に活かし、モディファイパーツ装着車ではなく「車両全体をトータルプロデュース」したModulo Xシリーズが誕生したのは、2013年1月のこと。
第一弾として初代N-BOXをベースとしたN-BOX Modulo Xが発売されると、以降N-ONE/フリード/ステップワゴン/ヴェゼル/S660/フィットの各Modulo Xが開発・発売された。今年2023年、Modulo Xは誕生10周年を迎えたが、現在も販売中なのがフリードModulo X/フリードHYBRID Modulo Xだ。
フリードModulo X/フリードHYBRID Modulo Xは2017年にデビュー、2020年には内外装を一新するマイナーチェンジが行われ、さらに2022年にもボディカラーに変更を受けロングセラーを続けている。そんなフリードModulo Xの最新モデルを、あらためて試乗してみた。
最新のフリードModulo X/フリードHYBRID Modulo Xは全3色
目の前に佇んでいるのは、2022年式のフリードHYBRID Modulo Xだ。現行モデルのフリードModulo X/フリードHYBRID Modulo Xは、ベース車両であるフリード/フリードHYBRIDが2019年10月にマイナーチェンジを受けたことで2020年5月に登場した後期モデル(2型)。さらにその後、2022年にボディカラーなどの小変更を受けたため、現行のフリードModulo X/フリードHYBRID Modulo Xは「2.5型」と呼称するのが正解かもしれない。
その2.5型だが、2型と比べて機能面における変化はなく、外観上の違いもなし。ただボディカラーは一部入れ替わりがあり、2型がプラチナホワイト・パール/ミッドナイトブルービーム・メタリック/プレミアムクリスタルレッド・メタリック/クリスタルブラック・パールという4色だったのに対し、2.5型ではミッドナイトブルービーム・メタリックに変わってプレミアムクリスタルブルー・メタリックが新たに設定された。
ただしプレミアムクリスタルレッド・メタリックは、2.5型の発売当初は設定されていたものの、2023年6月時点ではすでにラインナップから消滅している。
今回、試乗したのは2.5型のフリードHYBRID Modulo Xで、ボディカラーはプレミアムクリスタルブルー・メタリック。現行車種でいうとシビックやZR-Vにも設定されているこのカラーは、明るく鮮やかなブルーの色味が印象的だ。ミニバンというとホワイトやブラックなど地味目なカラーが主流のなか、街中でも”映える”ボディカラーといえるだろう。
ベース車両であるフリード/フリードHYBRIDのモデルライフは7年目を迎え、次期型へのフルモデルチェンジがウワサされているが、現在もホンダ車のなかでは軽自動車のN-BOXに次ぐ販売台数を記録している人気車種。初代モデルのCMでキャッチフレーズに使われた「ちょうどいい」という言葉どおり、日本の道路事情にベストなサイズ、実用性、経済性などを誇るミニバンとして人気を集めている。
そんなフリード/フリードHYBRIDをベースとしたModulo Xの、熟成されつくした現行モデルの2.5型はいったいどんなフィーリングを感じさせてくれるのか、非常に楽しみだった。
というのも、筆者はガソリンエンジンのフリードModulo XをHonda Style編集部の長期レポート車両として日常的に使用している。取材時はひとりで移動することもあるし、レース取材の際などはカメラマンやライターと多くの荷物も載せて長距離を移動することもある。
様々なシチュエーションにおけるフリードModulo Xの走りアジについては、目を閉じればすぐに思い浮かべることができるといっても大げさじゃない。それほどにフリードModulo X(1型)の感覚は身体に染み付いていたから、1型と2.5型、ガソリン車とハイブリッド車という違いはあれど、最新のModulo Xがどれほど進化・熟成を重ねているのか興味があった。
…思いがけず前フリが長くなってしまったが、フリードModulo X/フリードHYBRID Modulo X(2型&2.5型)の特徴については、あらためて詳しく記すまでもないだろう。
専用設計された脚まわりや、「実効空力」コンセプトに基づいて開発されたエアロパーツ、そして質感の高められた内装というのがModulo Xの定番手法だが、まず脚まわりのサスペンションやホイールについては、1型からのキャリーオーバーとなり2型以降での変更はない。
いっぽう大きく印象を変えているのがフロントマスクだ。ベース車両であるフリード/フリードHYBRIDがマイナーチェンジ時にフロントグリルやボンネット形状に変更を受けたこともあり、フリードModulo X/フリードHYBRID Modulo Xも2型では前後バンパーやフロントグリルなどの形状が一新された。
このフロントバンパーには、「エアロフィン」「エアロスロープ」そして「エアロボトムフィン」という3つのデザインディティールが設けられており、それぞれ個別の効果がある。
まずバンパー横に設けられたエアロフィンは、「旋回姿勢へのスムーズな移行」および「ホイールハウスから発生する気流の乱れを抑制」という役目があり、しなやかで上質な旋回フィーリングを実現しているという。
エアロスロープおよびエアロボトムフィンは、バンパー下部を覗き込むようにしないと目視することが難しい。エアロスロープは車体のアンダー部分へと積極的に空気の流れを作ることで、安定感のある走りに貢献。いっぽうのエアロボトムフィンは、走行時のホイールハウス内における風の流れをスムーズにすることで、スムーズなサスペンションの動きや乗り心地のアップを実現しているという。
いずれもデザイン性だけでなく、高い空力効果も併せ持つ「実効空力」コンセプトならではのエアロパーツだが、その効果は高速道路はもちろん、一般道路でも十分に体感できる。
フリードHYBRID Modulo Xのドアを開け、運転席へと身体をすべらせる。目の前に広がるインパネの風景はフリードModulo Xで見慣れたものだが、当然ながらHYBRID Modulo Xではセレクターレバー周辺のレイアウトが専用となるほか、メーターパネルの表示もIMAシステムに対応したものとなっている。
また小さな点だが、ステアリング右のウィンカーレバーに備わるヘッドライトスイッチは「AUTO」がデフォルト位置へと変更になっており、周囲の状況を感知して自動でヘッドライトの点灯・消灯を行う。
そんな最新2.5型フリードHYBRID Modulo Xで走り出すと、まず感じるのは「ハンドリングの誠実さ」だ。それこそ駐車場所から一般道へ走り出す、その最初のステアリング操作で「あっ違うな」と感じさせてくれる。その違いは1型と2型以降によるものか、ガソリン車とハイブリッド車の違いなのか、おそらくその両方だろう。
ステアリング操作とはドライバーが「こちらに進路を変えたい」という意思表示だが、最新のフリードHYBRID Modulo Xは行きたい方向にピタリと一発で決まる、その安心感が優れている。ふつうは交差点を曲がるくらいの速度域であっても、なんらかの細かなステアリング修正を操作しているものだが、それが一発で決まる。
同じ「曲がる」でも、地に足が着いた回頭性の良さと言えばいいか。その落ち着いたハンドリング性能は、高速道路を走るとさらに顕著に現れてくる。
ミニバンとしてはショートホイールベースのフリードは、それゆえに直進性が弱点と言われることがあった。その印象を覆したのが1型のModulo Xだったが、2型のHYBRID Modulo Xの走りにはさらに重厚感が加わった。ステアリングを保持するのではなく「手を添えている」くらいでも安心してまっすぐ走り続けてくれる感覚は、前述の「実効空力」エアロパーツによる操縦安定性の向上によるものだろう。
この操縦安定性の向上は、単に落ち着いたハンドリングが好きというドライバーの嗜好だけでなく、長距離を移動する際の疲労軽減やそれに伴う安全性の向上、またすべての乗員にとって乗り心地がアップするために同乗者の快適性が向上するといった様々なメリットがある。
その落ち着いた走りに、エアロパーツと同様に貢献しているのが進化したインテリアだ。フリードModulo X/フリードHYBRID Modulo Xでは表皮を専用素材へと変更したシートを採用しているが、2型では3列シートすべてのバックレスト中央部分がファブリックからスウェード調素材へと変更されている。
レザー部分の素材や形状は変わっていないが、このスウェード調素材の採用により乗員の身体が滑りにくく、結果としてサポート性が高まったように感じられる。カラーリングもブラックへと変更され、より上質感が増しただけでなく、サラッとした手触りは夏季でも快適に過ごせそうだ。
またガソリン車のフリードModulo Xに慣れた筆者の身体にとって、HYBRID Modulo Xの「走りの重厚感」はあらためて印象深いものだった。i-DCD型ハイブリッドシステムを搭載するHYBRID Modulo Xは、ガソリン車のModulo Xと比べて車両重量は70kg重くなる。
成人男性ひとりぶんの重量増は車両全体からみれば約5%に過ぎないものの、そのほとんどが車体下部のフロア部分に納められていることもあってか、増加分の重量がしっかりと4つのタイヤにかかっている感覚がある。”路面を掴んでいる”と言い換えても感覚は、加速時や旋回時だけでなくブレーキングの減速時こそ顕著であり、ファミリーユースの多いミニバンの場合、実用性の高さとともに重要なポイントといえる。
パワーユニットには手を入れず、専用開発した脚まわりやエアロパーツによって上質な走りを実現するModulo Xシリーズ。2023年6月現在、新車ラインナップにはフリードに残されるのみだが、5ナンバーのミニバンならではの実用性や扱いやすさはそのままに、3ナンバー級高級セダンにも匹敵する乗り心地や安定性、快適性が味わえるのがフリードHYBRID Modulo Xといえるだろう。
その魅力は走り出せばすぐに体感できるものだけに、Modulo X未体験という方には、ぜひ一度そのステアリングを握ってみてほしいと心から思う。
レポート車両としてフリードModulo Xを使用してみて、ミニバンならではの積載能力に助けられたことは何度もあった。5ナンバーサイズで全長も約4.3mと短いため、都市部や狭い道でも取り回しの良さはバツグン。そのうえで徹底した走行テストで磨き上げられた「実効空力」エアロパーツにより、長距離移動もストレスなく行うことができる。
そんなModulo Xならではの魅力は、最新の2.5型でも変わらないどころか、さらに円熟味を増していると感じられた。今回のHYBRID Modulo Xでは、ガソリン車とパワートレインの違いによる走りのテイストに差異はあるものの、優れたハンドリングや上質な走りといった目指している境地は同じ。コンパクトな5ナンバーミニバンにおいて、ドライビングの楽しさや走りの上質さに拘りを感じさせるフリードModulo X/フリードHYBRID Modulo Xは、競合車とは一線を画す存在といえる。
(text:Kentaro SABASHI 佐橋健太郎)
FREED HYBRID Modulo X
SPECIFICATION
□ボディサイズ:全長4290×全幅1695×全高1710mm□ホイールベース:2740mm□車重:1430kg(6人乗り)□駆動方式:FF□パワートレイン:1.5リッター直4DOHC+モーター□エンジン最高出力:110PS/6000rpm□エンジン最大トルク:13.7kgf・m)/5000rpm□モーター最高出力:29.5PS/1313-2000rpm□モーター最大トルク:16.3kgf・m)/0-1313rpm□トランスミッション:7速DCT□タイヤ(前&後):185/65R15 88S□車両価格:331万1000円(6人乗り)、333万3000円(7人乗り)
https://www.honda.co.jp/FREED/webcatalog/type/modulox/