【23Joy耐】普段はライバル関係のN-ONEオーナーズカップ仲間がチームを結成! 今年もJoy耐は大盛り上がり【NOC】
1年に1度、モビリティリゾートもてぎを舞台に行われるアマチュアレーサーたちの夏の祭典、それが「もてぎEnjoy耐久レース」です。通称「Joy耐」として知られているこのレースは、名称のとおり楽しむことを最大の目的にした参加型モータースポーツです。
今年で22回目を迎えた「Joy耐」は、ゴールデンウィークが過ぎいよいよ夏の訪れが近づいている5月13-14日の週末に開催されました。384号車ホンダスタイルN-ONEのメンテナンスをお願いしている「HCMスポーツガレージ」では、以前よりこのJoy耐に参戦していましたが、一昨年からはふだんN-ONEオーナーズカップ(NOC)に参戦している選手たちが合流! NOCドリームチーム(!?)を結成して参戦しています。
そして今年も同じようにNOCの仲間たちが集結し、36号車『HCM☆内野製作所☆DLFIT』として参戦! めざすは前年の順位を上回ることと、そしてJoy耐ならではのアワードをゲットすることです。
N-ONE OWNER’S CUPのレース仲間が集まりチームを結成
モータースポーツに限らず、同じ趣味を持つ仲間と遊ぶことほど楽しいことはないですよね。目標達成のためにチームみんなで試行錯誤しながら、最後はお疲れさまと笑いあえる。どこか学生時代の部活を思わせる雰囲気が、アマチュアスポーツの最大の楽しみかもしれません。
毎年、モビリティリゾートもてぎにて開催されている「エンジョイ耐久(通称Joy耐)」は、モータースポーツを趣味とするアマチュアレーサーたちが集って競う7時間の耐久レースです。JAF国内A級ライセンス以上を持つドライバーであれば誰でも参戦可能で、マシンはいわゆる「ハコ車」をベースとしたレース車両であればOKです。
参加車両は様々なクラス分けがなされており、クラスによって給油量が規定されているほか、その給油も各チームのピットではなく、サーキットパドック内のガソリンスタンドで行う(しかもエンジンスタートが禁止されている区間ではスタッフがクルマを押さなければならない)など、Joy耐ならではのレギュレーションが定められています。
そのほかにもみんなで楽しむ耐久レースらしく、コース上のリザルト以外にもマシンのカラーリングを競う「ベストデザイン賞」、もっともスタイリッシュなチームウェアに与えられる「グッドファッション賞」が設けられるなど、チーム全員で楽しめるモータースポーツイベントであることが特徴といえます。
そんなJoy耐に、今年もHCMスポーツガレージがGK5型フィットRSでエントリーしました。例年同様、普段は異なるチームからNOCに参戦しているドライバーやメカニックが、この日ばかりはチームの垣根を越えて集結!
さらにこの1戦のためにレーシングスーツやチームウェア、さらにサインボードを提示するガードの屋根まで新規製作する気合の入れようで、モータースポーツ趣味人たちのお祭りを楽しみました。
今回、HCMスポーツガレージが車両製作を担当した36号車『HCM☆内野製作所☆DLFIT』を走らせる5人のドライバーは、NOCはもちろん過去のJoy耐にも参戦経験が豊富なベテランばかり。それでも耐久レースはなにが起こるかわからないと、事前に走行テストを行ったうえでレースウィークを迎えました。
さまざまな車両クラスに分けられているJoy耐ですが、36号車『HCM☆内野製作所☆DLFIT』が参戦するのは「FITクラス」。その名のとおり、フィット1.5チャレンジというワンメイクレースの車両がそのまま参戦できるクラスです。
外観やエンジン&ミッションはノーマルながら、室内はフロアが剥き出しにされているうえシートは運転席のみ、さらにロールケージが組まれるなど「レース専用車両」ならではの迫力です。そしてサスペンションやタイヤ&ホイールは交換が認められており、Sタイヤの装着が可能であるため、コーナリングスピードの高さは驚くほど。
そのためFFハッチのスポーツドライビングを身につけ、磨き上げるには「フィット1.5チャレンジ」は最適なレースだと多くのエントラントを集めていますが、今回のJoy耐でも全参加台数53台のうち10台がGK5型フィットRSとなりました。
迎えた5月13日の公式予選、決勝レースのグリッド順はA〜Eまで5名のドライバーのうち、「A&Bドライバーの合算タイム」によって決められます。しかしながら予選当日ははっきりしない天気で、さらに前日から降り続いた雨もありコースは全面ウェット。そのため36号車はタイムアタックはそこそこに抑え、決勝でのレースペースを意識した燃費テストを行いました。
前述のように、Joy耐では参加車両のクラスごとにピットインや給油の義務回数が定められており、GK5型フィットRSの場合は5回のピット作業(うち4度の給油)が課せられています。さらに1度の作業で給油できるのは30リットルまでとなっており、速さはもちろんのこと「燃費の良い」そして「クルマに優しい」走りを追求していくことが、上位進出への近道といえます。
しかし、じつは予選前日の練習走行中に車両に不具合が発生してしまいます。大会前にテスト走行を行った36号車でしたが、そのときにも懸念されたミッションが不調。4速へのシフトアップ時に異音とひっかかりがあり、このままでは翌日の予選、そして7時間の決勝レースを無事に完走できるか不安が残る…。
そこでチームは持参していた予備のミッションへと換装して再び走り出すものの、連続走行を行うと同様の現象が起きてしまいます。なんとか予選は走り切ったものの、万全のマシンコンディションで決勝レースを迎えるべく、メカニックたちはミッションのオーバーホールを決断、ピット内で6速ミッションをバラし始めます。
バラされたミッションはすべての部品をチェックし、洗浄および再調整して再び組み上げられ、車両へと載せ替えます。HCMスポーツガレージのスタッフを中心とした5名のメカニックはテキパキと分担して作業をこなし、この日の夕方にはオーバーホールを終えてミッションが車両へと換装されました。
メカニックたちは2日間で3回のミッション積み下ろし、さらに1度のオーバーホールを行うこととなりましたが、これが「レースは走る実験室」と呼ばれるゆえん。限られた時間のなかで正確な作業と確実な成果が求められるモータースポーツでの現場で得られる様々な経験や知見は、日常業務であるユーザー車両の整備にも、大いに活かされているそうです。
そして迎えた決勝レース、36号車『HCM☆内野製作所☆DLFIT』はクラス10番手(総合36位)からスタート。レース中の燃費は4.9km/Lをターゲットとし、なるべく加減速を抑えてコーナリングスピードを高く保つことを心がけます。
レースは序盤に他車のアクシデントにより、トップの車両が27周目に入った時点、そして53周目の2度にわたってセーフティカー(SC)が出動したものの、中盤以降は落ち着いた展開となりました。
このSCにより36号車は燃料消費に余裕が生まれ、5人のドライバーがノーアクシデントでプラン通りの走りを披露! 練習走行や予選で発生していたミッションの不安も、メカニックの懸命な整備によりまったくのノートラブル。無事に7時間を走りきり、総合26位(クラス8位)でチェッカーフラッグを受けました。
スタートのクラス10番手からポジションをふたつ上げ、クラス8位、総合でも26位となった36号車『HCM☆内野製作所☆DLFIT』でしたが、もうひとつ嬉しいサプライズが待っていました。
前述のように、Joy耐ではレース順位以外にも様々な賞が用意されています。そのなかのひとつが「グッドファッション賞」で、ドライバーのレーシングスーツやサポートメンバーのシャツが”映える”チームに与えられるもの。
今回、36号車36号車『HCM☆内野製作所☆DLFIT』を走らせたチームは、イタリアのfreem製レーシングスーツをはじめメンバーのウェアを新調! 狙いどおりにグッドファッション賞を受賞しました。
今回、36号車『HCM☆内野製作所☆DLFIT』をドライブしたのは、坂井拓斗選手/木下将太郎選手/内野徳昭選手/阿久津敏寿選手/岩間浩一選手。いずれもN-ONEオーナーズカップに参戦しているドライバーであり、このJoy耐参戦に向けてチームを結成。
さらにこの5名のドライバーだけでなく、メカニックやサポートスタッフもほとんどが「NOC仲間」で構成されており、こうした繋がりが生まれることもアマチュアモータースポーツの良さであり、Joy耐はもちろんNOCの魅力といえます。
最後になりましたが、5名が口を揃えて話していたのがGK5型フィットRSの素性の良さ。かつてのB16A/Bのように弾けるようなエンジンフィールは望むべくもないものの、優れた車体剛性やFF車として素直なハンドリング特性は、NOCからのステップアップとしても最適だとか。
車体製作を行ったHCMスポーツガレージでは、NOCの参戦車両製作やレースサポートをはじめ、店内にはレーシングシミュレーター(有料)なども完備されています。これからモータースポーツを始めてみたいという方は、ぜひ気軽に訪れてみてはいかがでしょうか。
(photo:Hideo HAGIWARA 萩原英士、text:Kentaro SABASHI 佐橋健太郎)
www.hcm-sportsgarage.com