【動画】シビック タイプR、ニュルにおける「世界最速FF」を奪還! 欧州市場に軽量仕様の「タイプR・S」を導入か
ホンダは、ドイツのニュルブルクリンク北コースで、現行のFL5型シビック タイプRの性能評価の一環として走行テストを行い、FFモデルで最速となる「7分44秒881」のラップタイムを記録したと発表した。
シビックをベースに運動性能を磨き上げた「タイプR」が設定されたのは、1997年のこと。シビック タイプRとしては初代モデルにあたるEK9型は、1.6リッターのB16B型エンジンを搭載。タイプRシリーズ専用のチャンピオンシップホワイトを中心としたボディカラーや、レカロ製バケットシート、MOMO製ステアリングなどは、先行して発売されていたNSX-Rやインテグラ ・タイプRと同等の手法が用いられた。
その後、ベースモデルであるシビックのフルモデルチェンジに合わせてEP3型、4ドアセダンのFD2型、タイプR”ユーロ”を名乗ったFN2型へと進化を重ねた。2リッターi-VTECのK20系エンジンを搭載したこれらのモデルは、いわば「第二世代のシビック タイプR」といえる。
そして2015年に投入されたFK2型シビック タイプRからは、さらなるパワーアップを求めてターボエンジンを搭載。K20C型2リッター直列4気筒VTECターボは、FK2型で310PS、FK8型で320PS、そして2022年に登場した現行のFL5型シビック タイプRでは最高出力330PS/6,500rpm、最大トルク42.8kgf・m/2,600-4,000rpmまで引き上げられ、歴代のシビック タイプRにおいて最強のスペックとなっている。
このK20C型エンジンを搭載したFK2、FK8、FL5型はシビック タイプRとして第三世代にあたるが、この第三世代シビック タイプRが開発にあたって掲げた性能目標が「世界最速FF」だ。世界中の自動車メーカーがスポーツ車両の開発において走行テストを行っているドイツ・ニュルブルクリンク北コースにおいて、FFレイアウトの量産車両によるラップタイムで”最速”であることを命題としていた。
「ニュル」の略称でも知られるニュルブルクリンク北コースは、ドイツ西部に位置するレーシングコース。全長は約20.8kmと長く、高低差は300mもあるうえ、路面の状況もまちまちという難易度の高さが特徴。ホンダにとっても初代NSXの開発において走行テストを行ってから、いくつものクルマを同地で鍛えてあげてきたが、第三世代のシビック タイプRは自らを鍛えあげるだけでなく、ライバル車両とのラップタイム対決にも注目が集まってきた。
そしてFL5型シビック タイプRは、量産FF車における世界最速となる「7分44秒881」のラップタイムを記録。計測にあたっては、ノーマルのFL5型シビック タイプRを使用し、タイヤはミシュランとホンダが共同開発した「パイロットスポーツ・カップ2コネクト」を装着。
優れたグリップ力を発揮し、よりサーキット走行を重視したこのタイヤは、標準装着こそされていないものの日本国内のホンダカーズでオーダーが可能な市販品だ。レーシングカーではなく誰もが購入できる仕様の車両で、みごとに「世界最速FF」を達成した。そのタイムアタックの様子の一部は、映像で見ることができる。
これまでシビック タイプRは、「世界最速FF」の座をルノー・メガーヌ R.S.トロフィーやフォルクスワーゲン・ゴルフ GTIなどと競い合ってきたが、これでひとつ抜けたかたちとなった。
FL5型シビック タイプRの開発責任者を務めた柿沼秀樹氏は、リリースにて『~世界中のシビック TYPE Rファンの皆様へ~』と題して下記のコメントを発表している。
~世界中のシビック TYPE Rファンの皆様へ~
シビック タイプR は、“Ultimate SPORT 2.0” をコンセプトに据え、己を超えるクルマづくりでタイプRにしかない 「本質」の価値と、心に響く「官能」を磨き上げた、究極のFFスポーツを目指して開発しました。2022年9月の日本での発売を皮切りに、私たちの想像を遥かに超える驚きと喜びの声を、世界中の皆様から数多くいただく中で、もうひとつ、私たちが果たさなければならない使命がありました。それは、“ニュルブルクリンクFF最速”を成し遂げることです。
先代シビック タイプRから6年の時を超え、私達がタイプRにかけた想いと進化の先に到達した新次元。ついにその称号を世界中のタイプRファンの皆様にお渡しすることが叶いました。
すでにお乗りいただいている方から、これからオーナーになられる方まで、私達とともにその誇りを胸にしながらタイプRを愛し、そして満喫していただけることを心より願っています。
シビック タイプR 開発責任者 柿沼秀樹
シビック タイプRに軽量バージョンの「タイプR・S」が追加される!?
2023年4月20日(現地時間)、ホンダの欧州部門はドイツ・ニュルブルクリンク北コースにおいて市販FFモデルの最速記録を達成した仕様のシビック タイプRを、「タイプR-S」として欧州市場にて販売予定だと発表した。
ニュルアタックにあたって採用された、ミシュラン製パイロットスポーツ・カップ2コネクト タイヤが選択可能となるほか、どうやら車両に軽量化が施されるというウワサがある。ボディパーツの一部にカーボン素材を使用するといったものではなく、エアコンなどの快適装備を省くことで軽量化を実現しているという。
いわば往年の「タイプR手法」を最新のシビック タイプRに投入し、ストイックに鍛え上げた究極のピュアスポーツ。それがシビック タイプR-Sの魅力といえる。現時点では左ハンドルモデルのみに設定されるようだが、ぜひ日本市場への導入も期待したいところだ。
(text:Kentaro SABASHI 佐橋健太郎)