【ホンダアクセス】13cm×8発のサブウーファーBOXも存在! 35周年を迎えた純正アクセサリー「Gathers」の歴史
ホンダ車向け純正アクセサリーの企画・開発・販売を行うホンダアクセス。エアロや脚まわりパーツ、ホイール、そのほかカーライフを彩る様々なアイテムをラインナップしているが、オーディオ&ビジュアル機器の純正アクセサリーブランドが「Gathers(ギャザズ)」だ。
ホンダ車オーナーに寄り添い、そのカーライフを豊かにする存在でありたいという「Togather」の想いから「Gathers」と名付けられ、誕生したのが1987年のこと。そのGathersは昨年2022年に35周年を迎え、2023年2月中旬にこれまでの歴史を振り返るメディア向け取材会が行われた。
「Gathers35周年取材会」では、Gathersの歴史についてや最新製品の紹介、ハイグレードスピーカーやGathersナビの体感試乗が行われたほか、開発者インタビューや歴代製品&カタログの展示など盛りだくさん。それら最新製品については別記事で報告するとして、筆者が思わず「懐かしい〜!」と声を上げてしまったのが、歴代製品の展示である。
筆者が普通免許を取得した1990年代前半は、まだナビゲーションシステムは現在のように一般へは普及しておらず、車内のオーディオシステムもカセットテープが主流だった。
やがて1990年代中盤以降は2DINサイズのカーオーディオが主流となり、CDやMDといった新たな記録媒体が登場するとともに、ビジュアル面においては「いかにフェイス部分へ派手なグラフィックを搭載するか」が人気の要因ととなった。そしてサウンド面では、重低音を効かすためにサブウーファーの増設やアンプの追加、そしてそれらを「どう魅せるか」が重視された。
そんな時代に、カスタムベースとして人気を集めていたのがワゴンやミニバンである。サーフィンやスケートボードといったヨコノリ系西海岸カルチャーを意識した「アメリカンカスタム」が流行し、外観はボディをなるべくシンプルに見せるエアロパーツやスムージングといった手法が人気を集めた。原色系のボディカラーをピンストライプやステッカーで彩り、足元にはメッキホイールを組み合わせるのが定番だった。
さらに「アメリカンカスタム」において欠かせなかったのが、オーディオチューンである。広い車内空間を持つワゴンやミニバンは、巨大なスピーカーやサブウーファーシステムを搭載するのにも都合がよく、サウンドの迫力だけでなくインストールのキレイさや派手さを競い合った。「音圧」という言葉が流行したのもこのころだ。
そんなアメリカンカスタムのムーブメントを狙い撃ちすべく、1996年にホンダが発売したミニバンの派生型モデルがS-MXである。初代ステップワゴンのシャシーをベースに、全長とホイールベースを切り詰めたボディはロー&ワイド感が高められていただけでなく、室内はフロントベンチシートを採用して完全フルフラット化とすることも可能など、独創的な設計がなされていた。
グレード展開はシンプルで、2WD(FF)と4WDのほか、メーカー純正のカスタムグレードというべき「LOWDOWN」の3モデル展開。このLOWDOWNは車名のとおり、専用サスペンションを採用するなどして15mmのローダウンが図られたほか、内装も専用カラーが採用された。
S-MXのインテリアは、外装と同様にオレンジとグレーを基調としたもの。カスタムグレードであるLOWDOWNは、標準車と色配置を反対に組み合わせるなど差別化が図られていた。
そんなS-MXには、純正アクセサリーであるGathersも多くの製品が装着可能であったが、なんと「S-MX専用カラーリング」を採用したカーオーディオも設定されていたのは驚きだ。
KENWOOD製2DINカーオーディオ「DPX-510」をベースに、S-MXのボディカラーである「パッションオレンジ・メタリック」に合わせてオレンジのカラーリングを採用したのが、「DPX-511H」だ。電動開閉式のフロントパネルを持つ2DINサイズのCD&カセットデッキで、Gathersでは「デュアルサイズ」と表記された。
フロントパネルはボタンひとつで電動開閉が行われ、パネル下端が手前側へ迫り出すようにスライドし、CDとカセットテープの挿入口が現れる。ただS-MXのモデルライフはちょうどオーディオ業界がデジタルメディアへとシフトする時期でもあり、カセットテープの需要は減少傾向。それゆえS-MXのマイナーチェンジ時にはCD&MDデッキがメインとなり、「DPX-511H」はラインナップから姿を消してしまった。
そしてもうひとつ、S-MX専用ではないものの当時の時代背景ならではと思える製品が「GS-9170W」である。こちらはアルパイン製のサブウーファーで、8基の13cm径ウーファーをV字状にレイアウト。ウーファーをシリンダーに見立て、アメリカ車の象徴ともいえるV8エンジンを思わせる形状としているのは、当時のカスタムシーンにおけるトレンドを示している。
当然ながら「DPX-511H」そして「GS-9170W」いずれも絶版となっているが、取材会当日は同じく当時モノのパワーアンプ「GP-9170」と組み合わされ、パワフルなサウンドを聴かせてくれた。
2023年の現代において、車内エンターテインメントシステムの主役は「聴く」カーオーディオから「見る」ビジュアル機器へと移り変わり、ホンダ車純正アクセサリーであるGathers製品もナビゲーションシステムや後席用モニター、それらと連携するリアカメラや運転サポート機器など、幅広い展開を見せている。
しかしながら、ホンダ車を知り尽くしたエンジニアによる「ホンダ車オーナーのカーライフを彩り、充実したものにする」のがGathers製品の役割であることは変わらない。35周年を経て次なるステージに進むGathersの、今後のラインナップに注目したい。
(text:Kentaro SABASHI 佐橋健太郎)
https://www.honda.co.jp/ACCESS/