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 【プロトタイプ試乗記】SUVでありながら走りはスポーツカー級!! 話題の新型ZR-Vをクローズドコースで初ドライブ!

 ホンダが開発した新型SUV、それが「ZR-V」だ。サイズ的にはヴェゼルよりひとまわり大きな「セミミドル」クラスとなる。パワーユニットや車体設計の多くはFL型シビックと共有されており、SUVらしからぬ走りっぷりの良さも特徴だ。

日本国内へは2023年春の発売が予定されているが、ほぼ量産型といっていいプロトタイプに「群馬サイクルスポーツセンター」で試乗することができた。正式発表前ということで未だ明らかにされていない内容も多いが、その実力は「さすがホンダ」と思わずにはいられない、強い印象を感じさせてくれた。

(ホンダスタイル シビック50周年記念号 に掲載)

試乗会場は「群馬サイクルスポーツセンター」。見通しが限られ路面状況も刻々と変化する、一般の峠道にもっとも近いクローズドコースだ。今回は3種類のZR-V(プロトタイプ)を比較試乗することができた

日本国内市場でヒットモデルとなっている、ヴェゼルの兄貴分にあたる都市型SUV。それが「ZR-V」である。Bセグメントに属するヴェゼルは、同セグメントに分類されるモデルとしてはゆとりあるボディーサイズを持つこともあり、ZR-Vとの車格的な位置関係は伝わりにくいが、ヴェゼルはフィットベース、そしてZR-VはシビックをベースとするCセグメントSUVだ。

車両価格については、本稿執筆時点ではまだ正式発表されていないが、むしろ内容を鑑みると魅力的な価格設定がなされるようだ。躍動感溢れる外観デザインやインテリアに散りばめられた曲線美など、「ちょっとイイクルマ」感が溢れているにも関わらず手に入れやすい価格設定となれば、ヒットモデルとなる予感は強い。

当初の予定では’22年秋発売とされていたが、昨今の部品供給不足や他車種において発生している納期の長期化を鑑みて、受注は受け付けるものの発売は’23年春へと延期された。期待が高い車種だけに残念ではあるが、今回はそんなZR-Vをいち早く試乗できる機会を頂いた。

試乗したZR-V(プロトタイプ)は3モデル

試乗する環境は、和製ニュルブルクリンクとも言われることがある「群馬サイクルスポーツセンター」。SUVにも関わらず、このステージでガンガン乗ってくれというのだから、走りに対して相当な自信があるのだろう。

それもそのはず。前項ではシビックベースと記したものの、ZR-Vの内実はそれとはかなり異なっている。フロントの脚まわりはサブフレームこそ共通だが、ロアーアーム、ナックル、そしてリバウンドスプリングを備えるショックアブソーバーがシビックとは違う。

2リッターe:HEVそして1.5リッター・ターボ搭載の両車とも、4WDモデルは車体中央にプロペラシャフトを備えて駆動力を後輪に伝えるメカニカルAWDを採用。最新の電子制御により適切な駆動力を分配するため、舗装路・悪路問わず上質な走りを実現している(画像は海外仕様)

リアはCR-Vが採用していたマルチリンクサスペンションをベースとして、4WDにも対応していることがポイントで、こちらにもリバウンドスプリングを備えるショックアブソーバーが奢られている。これらの対応により、シビックよりもはるかに大きい大径タイヤが収められるようになっている。

上位モデルのZグレードは、ブラック塗装+切削加工の18インチアルミホイールを標準装備。タイヤサイズは225/55R18だ

ちなみにSUVとはいえ、マッド&スノータイヤではなくサマータイヤが標準装着されており、メインステージはオンロードを想定している。パワートレインはe:HEV(ハイブリッド)と、1.5リッター・ターボという組み合わせ。いずれも大径タイヤに合わせ、シビックとはファイナルギアやトルク特性を変更している。

2リッターe:HEVと1.5リッター・ターボという2種類のパワーユニットが用意される。いずれも基本的にはシビックと共通だが、車両の性格にあわせて各部が最適化されている

e:HEVは、新開発の2リッター直噴エンジンにふたつのモーターを組み合わせる次世代ハイブリッドシステム。基本的な構成はシビックと同様だが、SUVには初搭載。さらにシビックには存在しない4WDモデルとの組み合わせはZR-Vならではだ。また、シビックと同様に「スポーツe:HEV」を掲げ、優れた燃費性能だけでなく爽快なドライビングフィールも強調している。

これぞ新世代のハンドリングSUV! ワインディング走行で楽しさを発揮

まずは、そのe:HEV車のFFモデルから走り始める。現代のホンダ車らしく、見切りのしやすいボンネットと開けた視界が好印象。両端が盛り上がったことで車両感覚が実に掴みやすく、これなら取り回しもしやすそうだ。

ワインディングを走ればなかなか爽快な走り味で、無駄なピッチやロールを生み出すことなく、まるでホットハッチかと思えるほどの一体感ある走りが味わえる。SUVであっても走りに拘るあたりが実にホンダらしく、四輪の接地感が豊かに感じる。荷重移動次第でスルリとクルマの向きを変えるのも面白い。イン側のタイヤがきちんと仕事をしている印象で、タイヤを綺麗に使えている感覚も魅力的だ。

e:HEV Zのインパネまわり。基本的なデザインはシビックにも共通する水平基調となるが、センターコンソールは二段タイプとなるなどSUVらしさも感じさせる。e:HEVのシフトセレクターはボタンタイプで、その手前側にはドライブモード切り替えスイッチが備わる

ここまで走れるとなると乗り心地が心配になるところだが、車内において路面からの入力は丸く感じられ、しなやかさも得ているところはさすが。ガンガンに攻め込んでみると、荒れた路面においてフロントのバンプラバータッチが気になるところもあるが、きっとそこまで攻め込む人も少ないだろうから、さほど問題はないだろう。リアのマルチリンクは容量も余裕がありそうだ。

Zグレードは電動調整機構付きのレザーシートを標準装備。内装色は写真のマルーンのほか、ブラックも用意される

ただ、これで終わりじゃない。4WD車に乗り換えるとフロントタイヤへの依存度が減り、少ない操舵角でコーナーを駆け抜けて見せるところが面白い。ZR-Vの4WDシステムは、e:HEV車とガソリン車どちらもプロペラシャフトを介して後輪に駆動力を伝達するタイプで、常時4WDとしてトルク配分を行っている。

リアシートは3人定員で、背もたれ部分を前方に倒すことでラゲッジスペースを拡大することができる

実駆動力配分は50:50に準じており、加速体勢に入ってリア荷重が増した際には、伝達トルク配分をリア寄りに変更していく。おかげでアクセルオンした瞬間に後輪が地面を蹴り出す感覚があり、シビックとは異なる面白さに繋がっている。

ハイブリッドシステムを搭載するe:HEV Zの4WDモデルでも、荷室容量はご覧のスペースを確保。リアシートは分割可倒式を採用しているほか、フロアも二段構造とすることで収容能力をアップ。実用性を高めている

今回はガソリン車の4WDにも試乗することができたが、両パワーユニット搭載車を比較すると、基本的な走りの面白さに変わりはない。やはりガソリン車はエンジンの回転上昇がスムーズで、軽快な走りという印象だ。

いっぽうe:HEV車は、パワーユニットのツキの良さはガソリン車よりも一枚上手。どの速度域でもリニアにトルクが応答することから、タイトターンが連続するようなシーンではコチラの方が扱いやすい。ただパワーユニットの重量増に対応した結果か、e:HEV車はややハードな乗り心地と微振動が感じられた。

特に低速時にはその傾向が感じられたが、ペースを上げて走れば骨太な乗り味となり、ドッシリとした安定感はクラスを超えた上質さも併せ持っている。ただどのグレードを選んだとしても、ZR-Vはスポーツカー並みの走りの満足度が得られることは間違いない。SUVであっても本気で走りを磨き込んだ一台だ。

兄弟車のシビックに「タイプR」が存在するのだから、ZR-Vもスポーツ性をとことん追求した仕様を見てみたい。そう思ってしまうほどZR-Vは高い完成度を誇り、また夢が広がるクルマだと思えた。

(text:Yohei HASHIMOTO 橋本洋平)

ZR-V 情報サイト
https://www.honda.co.jp/ZR-V/