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【Vintage Honda】新車同様のコンディションを維持するライフピックアップ。オーナーの並々ならぬ愛情が注がれた1台

クルマを軸とした仲間と過ごす時間が一番の楽しみだと、愛車1974年式ライフピックアップに乗り、各地で行われるイベントに駆けつける日田 太さん。愛車を入手してから32年、製造されてから約半世紀が経過したとはとても感じさせない極上コンディションを保ち続けるわけは、手に入れる前から周到な準備があった。

(Honda Style 101号/2021年3月発売号に掲載)

気がつけば「サブロク」の虜に

1974年式ライフピックアップ・スーパーデラックス。グラデーションの入るフロントガラスは、往年のアフターマーケットパーツだそう

新車のように綺麗なライフピックアップがあると聞いて訪れたのは、東海道・藤川宿からほど近い住宅街。そこには横並びに5つの賃貸ガレージが2棟並んでいた。一番奥にあるガレージで手招きしてくれたのが、1974年式ライフピックアップのオーナーである日田 太さんである。

シャッター横にある扉からガレージへ入ると、左手にピックアップが頭から入れられていた。そしてガレージ内を見渡すと、ふたつ並んだツールキャビネットやコンプレッサー、かなりしっかりしたガレージジャッキにリジットラックも揃った実践的なガレージだ。

そうした整備工具などの奥にある陳列ケースや壁面には、当時のノベルティグッズや看板といった、ライフピックアップの時代より以前のホンダグッズが工具と同様にきちんと整理収納されている。きっとガレージの主の性格なのだろう。

ピックアップを入手した約30年前から、以前よりも増してホンダという会社を意識するようになり、グッズ収集にも拍車がかかったという

現在57歳という日田さんは、18歳で運転免許を取得した当初、ケンメリやハコスカといったスポーティなクルマを楽しんでいたという。当時のクルマ好きといえば、やはり愛車をカスタムすることが、大きな楽しみのひとつである。

豊富にデリバリーされていたアフターマーケットのユニークなカスタムパーツの魅力もあり、それらと並行して19歳でステップバンを手に入れた日田さんは、誰とも違った自分だけの一台を作れるステップバンに、どんどんのめり込むようになったという。

左上に見えるステップバンが日田さんのカスタムの原点。赤い車両は当初より車検取得は考えずに制作し、一度だけ積載車でイベントに展示したそう

最初のステップバンは、入手して数年間はノーマルで楽しんでいたが、アコードにあった純正色のふじ色のメタリックにオールペイントしたのをはじめ、内外装をドレスアップ。その日の気分やイベントなどに合わせて、ミラーやホイールなども、複数あるストックからチョイスして楽しんでいたそうだ。

当時は初年度登録から10年が経過した車両は1年毎の車検であったことなどもあり、360㏄のステップバンは普通車よりも維持費が安く済むことや、なによりホンダらしく小気味よく吹け上がるエンジン、ハンドリング性能も申し分ない運動性を持ったステップバンは、いつしか日田さんのクルマ趣味の中心になっていった。

珍しいライフピックアップのカタログも、日田さんの大切なコレクション。このほかステップバンなどバリエーションモデルや、ライフのフルラインナップ版といったカタログもすべて揃っており、それらはファイルにきちんと整理されている

いっぽうステップバンに乗り始めたころから、ライフ3兄弟の1台であるピックアップは気になる存在だった。というのも、イベントやステップバンのワンメイククラブである『LOVE STEP』のミーティングに行っても、ステップバン10台に対してピックアップは1台もいないような珍しいクルマだったそうだ。

新車時には存在しないボディカラーもお気に入り

製造台数わずか1132台といわれている希少性も魅力のひとつ。ローダウンさせることにより、いっそうコンパクトさが強調されている

そんなある日、愛読していた自動車雑誌「カー・マガジン」の個人売買ページで、ライフピックアップの売り物を見つける。写真入りで掲載されていたそのクルマは70万円。文面だけを見ると、その当時の相場的には少しお高い値段であったが、連絡をしてまずは見せてもらうことにした。

売りに出していたオーナーは街の電気屋さん。実際に仕事で使っていたため、家電メーカーのイメージカラーになっていたピックアップの売却を考えた時、そのままの状態で売るのは申し訳ない。荷物の載せ下ろしによりダメージのあった荷室部分を直し、家電メーカーのカラーリングを変えてからの売却を選んだそうだ。

当時は新品の荷室などのボディパネルも入手できた時代である。新品の純正部品を使い、鈑金作業を含めたリペア、オールペイントを行ってから個人売買欄へと投稿したという。その作業にかかった金額が70万円であり、そのまま売却価格としたそうだから、むしろ極めて良心的な価格であったといえるだろう。日田さんも、それならばということで購入を決めた。

ホンダスペシャリストである『アールアール』代表・永田さんの手により、ストックしてあった脚まわりやブレーキなど未使用パーツを装着。LOVE STEP製のマフラーやミニ用のKONI製Fショックを組み合わせる

オールペンされたばかりの真新しいボディカラーは、純正色には設定の無いベージュ。購入当初は、いずれ純正色だったパウダーグリーンに戻そうかなと考えたこともあるそうだが、手元に来てから32年間、若干塗装の剥げた荷室上面をリペイントしただけで、ほかの部分はしっかりしていたため、そのきっかけが無かったという。今となってはこのベージュもピックアップのスタイルに似合っているし、別の色に塗り替えるつもりはないほど気に入っている。

ヤザキの時計をビルトイン、ラムコのタコメーターも違和感なく装着されたシンプルなインパネ。ステアリングはMOMOのMONZA、センターモチーフはS600のシルバーのものを装着している

実は日田さん、ピックアップを手に入れたいと考えた時から、荷台付きという構造から車両に蓄積したダメージを考慮し、絶対にガレージ保管しようと考えていたそうだ。そのため入手前に最初に起こした行動は、まず屋根付きガレージを確保することだった。

いつピックアップを手に入れても心配のないように自宅近くに借りたガレージは、一般的なクルマ一台ぶんの大きさ。ピックアップを無事に収めてからの保管場所だけでなく、仲間のクルマのエンジンを載せ替えるなどハードな作業を行う整備場所としても活躍した。

ホワイトリボンのプリントが文字にかからないよう、タイヤは一世代前モデルのDUNLOP VAN CUSTOMを装着。ワイド加工された純正ホイールは半ツヤの黒と白にペイントし、計3セットを気分に合わせて楽しむ

現在のガレージは、建設中の時点から存在を知って完成と同時に入居、15年くらい前からピックアップの保管場所となった。休日に仲間たちと集う、日田さんにとって憩いの場所となっている。

念願叶って愛車となったピックアップでも、グリルを全面メッキにするなどドレスアップを楽しんでいた日田さんだったが、所有してから何年か経ったある日、エンジンが不調になる。

美しくポリッシュされているだけでなく素晴らしく調子の良いエンジン。キャッチなどの三価クロメート処理もセンスが伺える。山梨県の「もちや」で開催されるミーティングや、静岡県のエコパで行われる部品交換会などにも自走参加する

一度プロに見てもらおうと考えたとき、近所の外国車販売店オーナーが趣味でライフに乗っており、顔見知りということもあってエンジンの修理を依頼。機関パーツは当時入手可能であった新品パーツを奢り、さらには日田さんが所有していたCVツインキャブを装着、さらに400㏄のボアアップキットを組み込んだ。

それまでは同キットを組んだ仲間のクルマに出遅れることもあったが、作業後は一気に解消。約30年が経過した現在も絶好調で、ピックアップでのイベント参加が一番の楽しみという日田さんは、遠方へもしばしば自走で参加している。

新型コロナウィルスの感染拡大防止のため、クルマでの外出も控え中。出勤前にガレージでの憩いの時間を楽しんでいるという

新型コロナウィルスの感染拡大により、最近はイベント参加などの楽しみが無くなっているが、同じ趣味を持つ仲間たちの交流がなによりの楽しみという日田さん。全国にいる仲間たちとの再会を心待ちにしながら、いまは『STAY・GARAGE(ステイ・ガレージ)』の時間を楽しんでいる。

(photo&text:Junichi OKUMURA 奥村純一)

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SPECIFICATION
1974 LIFE PICK UP
□全長×全幅×全高:2995×1295×1620mm□ホイールベース:2080mm□エンジン形式:水冷直列2気筒SOHC□総排気量:356cc□最高出力:30PS/8000r.p.m.□最大トルク:2.9kg-m/6000r.p.m.□変速機:4速MT□燃料タンク容量:26リットル□車両重量:550kg□最大積載量:350kg□タイヤサイズ(F&R):5.00-10-4PR ULT
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