【K型スワップ】 FRスポーツカー・トヨタ86/スバルBRZにVTECをインストール! K型エンジンのスワップキットが登場
京都府久御山町にあるプロショップ『インパクト』が、先代の86/BRZ[ZN6/ZC6]に、ホンダのK20A/K24A型直4ユニットを搭載するための専用スワップキットをリリース! 必要なパーツ類はすべてセットになっており、CANプロトコル搭載のフルコンを利用することで、純正の電装部品もそのまま使用可能だという。
(Honda Style 104号/2021年12月発売号に掲載)
車種ごと専用設計の換装キットは各部のクオリティや取り付け性も申し分なし
ホンダスタイルwebの記事なのに、なぜトヨタ86がメインカットに収まっているかというと、その答えはボンネットの下にある。2リッターの水平対向4気筒に代わり、なんとK24A型2.4リッター直列4気筒 i−VTECエンジンが縦置き搭載されているのだ。
製作したのは、京都府久御山町のプロショップ『インパクト』。アメリカのメーカーが開発した、K型エンジンを初代86/BRZに搭載するためのスワップキットを使用しており、今後は同店が正規輸入代理店となり、キットの販売およびコンプリートカーの製作販売を行っていくという。撮影車両は、国内でスワップキットを使用したデモカー第1号車だ。
先代86/BRZのシャシーに、ホンダのK20A型/K24A型エンジンを縦置きするために必要なパーツ類をセットにしたスワップキットは、アメリカの『K POWER INDUSTRIES(ケーパワーインダストリーズ)』が開発したもの。
当初は『K MIATA(ケーミアータ)』として、マツダ・ロードスターにK型を搭載するスワップキットを開発していたが、BMWの3シリーズ(E30型)や86/BRZなど、対応車種を徐々に拡大。それを契機に社名も変更し、FR車にK型エンジンを縦置きするためのパーツ類をプロデュースしている。
K24A型エンジンは、アメリカではアコードやアキュラTSX、シビックSi、CR−Vなど多くの車種に搭載されてきた。日本国内ではオデッセイ・アブソルートに搭載されており、ベースエンジンが入手しやすい。
エンジン本体が強靭なためチューニングに対する素性が良く、「速さこそ正義」というアメリカのドラッグレースやタイムアタックシーンでは、過給機を装着して1000馬力オーバーを標榜するKスワップ車がどんどん誕生している。
そんな『K POWER INDUSTRIES』を早くからチェックしていたのが、K型のチューニングとエンジンスワップに関して長年の経験を持つ『インパクト』代表の園田さんだ。
手ごろなボディサイズのFRスポーツとして人気の初代86/BRZだが、標準搭載されるFA20型水平対向エンジンは、300馬力を目標にパワーアップさせようとするとターボやスーパーチャージャーなどの過給器が必須となる。
しかしながらエンジン本体の耐久性、さらに補器類を装着するスペースの問題も大きく、トータルでのコストパフォーマンスを考えると、チューニング手法の幅が広いK型へのスワップは非常に魅力的だという。
そこで園田さんは、86/BRZ用のスワップキットがリリースされるや、即時に日本国内での販売契約を締結。すでに多くのチューニングショップから問い合わせが殺到しているそうだ。
スワップキットに含まれるパーツは、エンジンマウント、トランスミッションマウント、エンジンと86/BRZの6速MTを接続するベルハウジングアダプター、専用フライホイール、アルミ製プロペラシャフト、ベースデータがプリインストールされたハルテック・エリート1500、カスタムワイヤーハーネス。
さらにCAN対応の各種センサーと純正ECUジャンクションボックス、縦置きに合わせて形状を最適化したエキマニとインマニ、インテークパイプ、純正電スロ装着用のアダプター、バッフル内蔵のアルミ製オイルパンといったところがセットになっている。
細かく挙げるともう少しあるが、エンジンとトランスミッションを物理的に搭載するためのパーツと、電子的にエンジンや車両側パーツを動かすためのパーツがキットとして販売されている。
キットに付属されるハルテックのフルコン「エリート1500」には、86/BRZのCANプロトコルが搭載されており、純正ECUの基盤を入れ替える形で使用するジャンクションボックスも用意されている。
その結果、86/BRZの純正メーター、ABS、トラクションコントロール、エアコン、パワステ、ペダル、シフトレバーなど、86/BRZの室内装備や機能については純正のまま使える点は、大きなメリットと言えるだろう。
純正然としたインパネが内容の充実ぶりを物語る
コックピットまわりで変化が見られるのは、純正シフターの位置を固定する削り出しのシフタープレートを備える点。それ以外はメーター、エアコン、コラムレバーなど、すべてトヨタ86純正のまま。
CANプロトコル搭載の、ハルテック・エリート1500を使用することで実現される「普通さ」が、逆に凄みを感じさせる。
もうひとつ86/BRZへのK型スワップ・チューンの利点として挙げられるのが、純正のFA20型エンジンに比べ、フロントセクションで60kg以上の軽量化を実現できること。エンジン本体をより後方に搭載することで重量配分が改善し、ハンドリングにも好影響を及ぼすという。
たしかにデモカーのエンジンルームを見ると、エンジンはかなり室内側に寄った位置に搭載されており、S2000のフロントミッドシップとまではいかないものの、かなり車体中央寄りに搭載されたレイアウトを実現している。
こちらのデモカーは、今回の取材数日後に完成し、慣らし運転も完了したそう。実際に走らせてみた感想を、インパクト代表・園田さんは以下のように話してくれた。
「まるでメーカーの工場からそのまま出てきて、もともとこの状態で販売されてたんじゃないかと思うくらい、何から何まで普通(笑)。エンジン、メーター、エアコン、すべての動作問題ありません。失うものは何もなくて、得るものは非常にたくさんあるので、本当にオススメです」
さらに『インパクト』では、K型エンジンのスワップ作業だけでなく、換装後の公認車検取得も行っている。「FA20ではやり切った」という既存オーナーや、中古車価格がこなれてきたから初代86/BRZに興味が湧いてきたという人にとっては、まさに朗報のスワップキットだ。
今後の展開にも注視していきたい、理想のチューニングメニューである。
(photo:Akio HIRANO 平野 陽、text:Hideo KOBAYASHI 小林秀雄)
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