【新型シビック試乗】大幅にレベルアップしたボディがもたらす、質の高い走り。「爽快シビック」の名はダテじゃない!
「爽快シビック」のキャッチフレーズとともに登場した11代目シビックを、いよいよ公道で試す時がきた。すでに現在販売中のホンダスタイル本誌103号において、栃木のテストコースをプロトタイプで試乗した模様はレポートしているが、従来モデルからキャリーオーバーとなるプラットフォームを採用しているという割には、新型シビックはまるで違う走り味を実現していた。
今回はナンバーが装着された完全な量産車両で、山梨県の八ヶ岳〜清里周辺のワインディングを中心にテストドライブ。いったい新型シビックは、どんな走りを見せてくれるのだろうか? まずは初期受注で約4割を占めるという、MTモデルから試乗を開始した。
走り出してまず感じたことは、第一印象ではかなり引き締められたと思えるフットワークだった。ピッチングやロールを最小限に抑えつつ、短いストロークで入力をいなして行く走り味は、明らかにハコの良さが伝わるものだった。
構造用接着剤を旧型比で9.5倍に高めたことで、ねじり剛性は19%もアップしたというボディは、応答遅れも無くワインディングをまさに爽快に駆け抜けて行く。
ホイールベースは旧型比+35mm、リアトレッドは+12mmとなったことで安定感が高く、リアがドッシリとした感覚を得られるようになったことは特徴的なところ。ステアした瞬間に唐突さがなく、切り込み応答まで一定したフリクションのないフィーリングはマル。ステアリングコラムのホーニング加工をするなど、細部に対する質感向上へ向けた拘りは凄い!
対してタイトターンはもう少しスッと向きを変えて欲しいような気もしたが、その辺りはタイプRにお任せといったところか? CVTモデルはMTよりフロントが20kgほど重く、そちらのほうが曲げるきっかけをつけやすいところもあった。バネレートが共通でダンパーチューニングのみというせいもあるのかもしれない。MTモデルは軽快さが際立つものの、曲げることを考えれば、フロントのスプリングをわずかに落としたいような感覚があった。
1.5リッター・ターボの仕上がりは低速からリニアさがあり、高回転までストレスなく吹けてくれる。速さがあるようなタイプではないが、ワインディングで恐怖感なく愉しめる仕上がりはなかなか。ただし、高負荷領域ではシフトアップ時に回転落ちが遅く、ややリズムが掴みにくいところが気になった。
これはアクセル全開状態で圧がかかり切った直噴システムによるところだと後に教えられた。その圧を逃がすためにアクセルオフにしても、少し燃料を噴いてしまうということらしい。制御変更や圧を逃がす経路を備えるなどの対策を考えているそうだ。今後の改良に期待したい。
ワインディング試乗を終えた後に高速道路に乗れば、その安定感はメリットに生まれ変わる。鼻先がチョロつくことのない圧倒的な直進安定性はロングドライブで疲れにくい仕上がり。ACCやレーンキープを介入させれば、どこまででも突き進めそうだ。
新型のACCは、MTでもシフトチェンジが可能。クラッチを切ったとしても短い時間であればアクセルを維持してくれる。おかげで登坂車線があるような勾配でACC作動中にシフトダウンができたのだ。これは使い勝手が良かった。
こうして、ひと通りMTモデルを試乗した後にCVTモデルでも同様のルートを走ったが、20Nm引き上げられたエンジン特性もあり、低速からのリニアさがかなり引き上がっていたことが印象的だった。スポーツモードでは、ブレーキング時に勝手にシフトダウンしてくれる制御が備わったところがトピックのひとつ。
ただし、MTモード想定で1段分しかダウンしないところは残念なところ。シフトダウンが足りずにコーナー立ち上がり時にもう一段シフトダウンするような動きがあったので、減速度に応じて2段、3段と落とすようになってくれたら最高だ。
細部はもう少し煮詰めが欲しいところだが、新型シビックシリーズの第一弾としては概ね好印象だった11代目。果たして来年登場するハイブリッドモデルや、新型シビック・タイプRはどんな仕上がりになるのか? ベースモデルでここまでの爽快さが得られているのなら、派生モデルはかなり期待できそうだ。
(text:Yohei HASHIMOTO 橋本洋平 photo:Satoshi KAMIMURA 神村 聖)