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第二世代NSXの最後を飾る「NSX Type S」発表。実質的なマイナーチェンジ版は国内30台限定、価格は2794万円〜

前後バンパーを新設計して空力性能を向上。4WD領域を拡大して走りを磨いた

アメリカで先行発表されていた、現行型として最後となるNSXのスペシャルモデル「タイプS」の日本仕様が正式発表された。車両価格は2794万円(税込)、国内限定30台の販売となる。

あらためて、そのプロフィールを整理すると、3.5リッターV6ツインターボエンジンと9速DCT、前後3つのモーターを組み合わせたスポーツハイブリッドSH-AWDというパワートレインは不変。フロントの左右独立モーターによる駆動で曲げるというテクノロジーは、これで最後になってしまうというのが惜しいと思えるほど、いまだ第一線級である。

今回、タイプSへのバージョンアップに合わせてターボチャージャーを高耐熱タイプへと変え、ブースト圧を5.6%アップ、さらにインタークーラーのフィンピッチ拡大により冷却性能を15%高めるなどして、エンジン単体で22PSのパワーアップを果たしている。

モーター側では減速比を高めて駆動力を強めているのがトピックス。さらにバッテリーの性能を引き出すことで7PSのエクストラパワーを得ることに成功している。トータルで610PS(従来は581PS)のシステム出力へと高めているという。

あわせてフロントモーターの駆動領域を拡大。コーナー脱出時などに力強くフロントで引っ張ることで、4WDらしい鋭い加速を実現しているという。コーナリングでは、今回新設された「パドルホールド・ダウンシフト」制御も注目点。左側のパドルを0.6秒ホールドすることで、速度に合わせた最適なギアまでスキップしてシフトダウンすることが可能となった。

当然ながらサスペンションセッティングも見直された。従来通り、電子制御により減衰力を可変させるアクティブダンパーシステムを採用しているが、減衰力の範囲を広げることで、サーキットでのハンドリングから、EVモード走行時の乗り心地までカバーしている。

タイヤがハイグリップなピレリP-ZERO(NSX専用設計品)となっていること、タイプS専用アルミホイールのリム幅を広げているのも当然ながら限界性能を高めるためだ。

なによりも変わったのは、エクステリアだ。フロントバンパーはセンター開口部を大きくした新意匠で、カーボンリップスポイラーはリフトを抑えるために新設計された。リアには大きなディフューザーが与えられ、明らかにダウンフォースを増していることは一目瞭然。ディフューザーに合わせてバンパー自体の形状も変えられるなど台数限定モデルとは思えないほど手間とコストがかかっている。

フロントバンパー形状の変更により、エンブレム位置およびナンバープレートの装着位置も変更された

この前後バンパーの変更により全長はわずかに伸びているが、それ以上にバンパーデザインの効果で、スーパースポーツらしいロー&ワイドを強調しているのは見ての通り。専用に用意されたボディカラー「カーボンマットグレー・メタリック」も、タイプS専用エクステリアの魅力を高めている。

そんなNSXタイプSは、世界限定350台、日本向けは30台限定の販売になると発表されている。そして、注目の日本におけるメーカー希望小売価格は2794万円。従来用意されていた標準車が2420万円であるから、これだけの進化を遂げ、専用パーツを与えられていながら15%程度しか価格は上昇していないのだ。

NSXタイプSの開発責任者を務めた水上 聡氏(右)、設計開発責任者の井上雅文氏(中)、そしてエクステリアデザイン担当の原 大氏(左)

ファイナルエディションともなれば、もっと高くなってもおかしくないと思えるが、なぜこの価格に抑えることができたのか。そうした点についてNSXの開発責任者を務める水上 聡氏から伺った話などは、次号ホンダスタイル103号(2021年9月18日発売)にてご報告したい。

ひとつだけ言えるのは、今回の進化はファイナルエディションに合わせて慌てて開発したものではなく、長い時間をかけて熟成してきたものだということだ。

ホイールはNSXタイプS専用デザイン。インセットの変更によりワイドトレッド化を実現している

NSXタイプSの購入申し込みは2021年9月2日から全国のNSXパフォーマンスディーラーにて始まる。そして、納車は2022年7月以降になるということだ。なお、69万3000円高の専用色「カーボンマットグレー・メタリック」は10台限定となるという。

(photo:HondaStyle magazine text:Shinya YAMAMOTO 山本晋也)