【ホンダアクセス】フィット e:HEV Modulo Xの走りを公道でチェック。開発陣が拘り抜いた「Moduloらしさ」【中編】
フィット e:HEV Modulo Xの公道初試乗は、東京都港区青山にある本田技研工業がスタート地点。地下の駐車場でカギを受け取り、ドアを開けるとブラックとボルドーに彩られた専用インテリアがぼんやりと浮かび上がった。
フロントシートは形状こそ標準車と同一だが、中央部分がラックススェードで左右に本革を配したコンビタイプ、背もたれには「Modulo X」のロゴが縫い込まれ、いかにもコンプリートカーらしい特別感を漂わせている。
そのシートに腰を下ろし、ハイブリッドシステムを起動しようとインパネ右側にあるパワースイッチに手を伸ばすと、ここにもModulo Xのロゴが入っている。開発メンバーに確認したところ、パワースイッチにロゴを入れたのは歴代Modulo Xで初めてとのこと。ますます完成度に期待が高まる。
目的地は、群馬サイクルスポーツセンター。本来は自転車用のクローズドコースだが、クルマ好きには「群サイ」の愛称で知られている。日本のニュルとも呼ばれる、究極のワインディングといった趣のコースである。
【ホンダアクセス】待望のフィットe:HEV Modulo Xを公道試乗。実効空力が生み出したスタイリングにも注目【前編】
今回は、都内から現地までの道中でModulo Xと標準車のフィットを乗り比べ、市街地や高速走行での違いを体感。さらに群サイでも、Modulo Xとベース車両とを比較できるというプランになっていた。この設定を聞かされたときから、ホンダアクセスのスタッフが「ベース車両とは違う」と自信を持っていることが感じられた。
とはいえ市街地を走っている限り、フィット e:HEV Modulo Xに特別なスポーツ性は感じない。たしかにディンプルレザーとスムースレザーを組み合わせた専用ステアリングは確かなグリップ感を感じさせてくれるが、パワステが重くなっているわけでもなく、タイヤの銘柄やサイズもベース車両と同じだ。
パワートレインに関しては、Modulo Xはベース車両からまったく変更はないため、もちろんスロットルを踏み込んだ際のフィーリングも違いはない。とはいえ脚まわりとパワートレインとのコンビネーションは違和感なく仕上げられており、コンプリートカーならではの完成度の高さが感じられた。決してビンビンのスポーツテイストではなく、どこか奥ゆかしさのあるスポーツハッチというのが第一印象だ。
そんなModulo Xのスポーツ性能の一端が感じられたのは、首都高速に入ってから。首都高速をご存知の方ならわかるだろう、らせん状にコーナーが連なる大橋ジャンクションに差し掛かったときだ。想像していた以上に、Modulo Xはステアリング操作に対してリニアに反応するうえ、下りながらの旋回でもリアの接地感が高く仕上げてあるといった印象を受けた。
その後は5号線下り〜外環を経由して関越自動車道に入り、そこからはホンダセンシングを起動。ACCとLKASを利用して走行した。あえてアクセルとステアリングの両方で運転支援システムを使ったのは、乗り心地や振動などの要素を確認したかったからだ。そして結論をいえば、ベース車両と比べるとModulo Xは主にリア由来の硬さがあって乗り心地はやや固く、決して標準車と同じレベルの快適性とは言い難い。
横風や路面のうねりなど、外乱に対する直進安定性についてはベース車両を上回る部分を見せたが、LKASを外して確認したところ標準車のほうがステアリング操作をせずに真っ直ぐに走っていく安定感は高いように感じられた。
これは以前のレポートで紹介したように、標準車は速度を上げるほどにフロントが沈んでいく空力セッティングになっているのに対し、Modulo Xでは前後の等価リフトに拘ったためステアリングフィールとして荷重が載っていないように感じられるからかもしれない。
とはいえ、乗り心地の固さというのはコンプリートカーとしては気になるところで、いくらスプリングはそのままにダンパーだけで引き締めたとはいえ、なにかやりようはあったのでは? とも感じた。しかしその印象は、群馬サイクルスポーツセンターに到着し場内を試乗すると一変したのである。
群馬サイクルスポーツセンターで感じた、フィット e:HEV Modulo Xの真の実力については後編でお伝えしよう。
(text:Shinya YAMAMOTO 山本晋也)
https://www.honda.co.jp/Fit/modulox/