【新型シビック】11代目シビックの日本仕様はハッチバックのみ。国内で生産される「国産車」として’21年秋に発売!
ホンダの基幹モデルといえば「シビック」を思い浮かべるファンは多いだろう。そしてシビックといえばハッチバックと連想する人も少なくないはずだ。とはいえ、10代目シビックでは日本で生産されていたのはセダンだけであったし、最新の11代目においても、メインマーケットである北米ではセダンが先行してローンチされていた。
しかし、ホンダはハッチバックのシビックをあきらめていたわけではない。2021年6月24日、シビック・ハッチバックが世界同時公開された。10代目モデルを正常進化させた、ロングノーズ&クーペ的ルーフラインを持つ11代目シビック・ハッチバックの日本国内発売時期は2021年秋と発表されている。
さらに10代目のシビック・ハッチバックはイギリスで生産されていたが、新型では国産に戻ることも明らかとなった。そして日本向けとしてはハッチバックのみで、セダンは姿を消すという。新型シビックの生産を担当するのは埼玉製作所の寄居完成車工場ということだが、寄居では4ドアセダンのハイブリッドカー「インサイト」を作っている。セダンニーズはインサイトに任せて、シビックはスポーティなキャラクターを前面に押し出すというわけだ。
そんな新型シビックのグランドコンセプトは「爽快CIVIC」。親しみやすさ、特別な存在感を目指している。そのコンセプトを生み出したのは初代シビックを「一服の清涼剤」と称したジャーナリストの発言を意識してのことだという。初代からみるとずいぶん大きく成長してしまったが、シビックの魂はしっかりと受け継がれている。
スタイリングの基本となるパッケージングは、ホンダ伝統のMM思想に基づくもので、とくに後席のスペースが広がっているという。また、歴代シビックの中でもワンダーの愛称で親しまれた3代目シビックをスタイリングの参考にしたというが、それはグラッシーなキャビンや薄く軽快にみえるボディといった部分に反映されている。
とくにサイドから見たときのスタイルは新型シビックの美点で、フードを低く見せる左右稜線とAピラーからタイヤまでが直線的につながるデザインによってスタンス感を出している。非常に滑らかなラインを描くテールゲートは樹脂製とすることで、よりスマートなフォルムを実現しているという。
注目はパワートレインだ。ホンダは電動化に向かって突き進むというのは既定路線ではあるが、現時点では新型シビックは1.5リッターVTECターボだけのラインナップになることがアナウンスされている。しかもCVTと6速MTが用意されるという。
このご時世にMTを設定するのは意外でもあるが、じつは10代目シビックの販売実績をみるとMT比率が高かったとのこと。意外にも多くの20代ヤングユーザーがシビックを選んでいた。結果として10代目シビックのユーザー層では20代と40代にピークが来ているというものになっていた。けっしてオールドファンが買うモデルではなかったのだ。
そのようにシビックでスポーツドライビングを楽しみたいというニーズに応えるべく、引き続き6速MTが用意された。10代目シビックでは、トランスミッション容量の関係でMTはCVTより最大トルクが小さいという事態になっていたが、新型シビックでは6速MT、CVTともに240Nmと同じ最大トルクを誇る。
ちなみにピークパワーはいずれも134kW(182PS)で同じ。なおCVTには、ECON/ノーマル/スポーツと3つのドライブモードが選べる機能も備わっている。
プラットフォームについては、10代目からキャリーオーバーとしているが、アルミ材、ハイテン材、構造用接着剤の使用範囲を広げることでねじり剛性を19%もアップしている。加えてホイールベースを35mm伸ばすことで直進性を向上、リアトレッドも12mm広げて旋回安定性を高めるなど熟成を進めているのも見逃せない。
そうした走りへのこだわりは室内にも及んでいる。特筆すべきはフレーム設計から見直したフロントシートで、フィットやヴェゼルに採用した「スタビライジングシート」をシビックとして初採用。インパネではエアコンアウトレットをパンチングメッシュで隠すという新しい試みにより新鮮なコクピットを生み出している。
先進安全装備については、おなじみ「ホンダセンシング」を標準装備。センサーは約100度の角度で前方を監視する単眼カメラをメインに、ソナーがアシストするシステム。斜め後方からの接近車両にはミリ波レーダーで対応する。
夜間の視界を確保するヘッドランプについては、ロービーム/ハイビームにミドルビームを加えるという新しいアダプティブドライビングビームをホンダとして初採用したのもニュースだ。
グレード構成は「LX」と「EX」の2つで、LXであっても9インチのディスプレイオーディオを備えるなど十分な装備を持つ。上級のEXではBOSEオーディオ、フルグラフィックメーターなどが与えられ、シビックらしい先進性が際立つ仕様となっている。
ところで、現時点ではハイブリッドやタイプRの情報はまったく用意されていないが、2022年にはe:HEVシステムのハイブリッドと、そして次世代タイプRが登場することがホンダから予告された。10代目シビックでは、通常のハッチバック(FK7)もタイプR(FK8)と基本設計を共有する鍛え上げられたボディとされたことが、高いスポーツ性の評価に繋がった。
ii代目となる新型シビックも、ハッチバックボディは「タイプRありき」で強靭に鍛えられているはず。1.5リッターVTECターボのパフォーマンスを、6速MTを駆使して引き出したとしても、ボディは余裕で受け止めてくれることだろう。その走りを公道で味わう日が今から楽しみで仕方ない。
(photo&text:Shinya YAMAMOTO 山本晋也)