【現地レポート】史上初、無観客開催を決断したインディ500。新型コロナウィルスがモータースポーツ界に与えた影響
第104回インディ500が3ヶ月遅れでの開催となったのは、もちろん新型コロナウィルスの感染拡大が影響している。3月中旬にフロリダ州セントピーターズバーグのストリートコースで行われるはずだった開幕戦は、プラクティス開始前日に突如キャンセルされた。非常事態宣言が出されてしまったのだから仕方がなかった。
その後に予定されていたアラバマ州バーミンガム(バーバーモータースポーツパーク)、カリフォルニア州ロングビーチ、テキサス州オースティン(サーキットオブジアメリカス)でのレースが次々と延期ではなく中止と決定。さらに、ミシガン州デトロイトのダブルヘッダーが行えないと決まり、しばらくしてカナダのトロントと、バージニア州リッチモンドの2レースもキャンセルとなった。
「2020年シーズンのシリーズはどうなってしまうのか?」と心配されたが、今年からロジャー・ペンスキーがNTTインディーカーシリーズと、インディアナポリスモータースピードウェイのオーナーになっており、「14レースは開催してチャンピオンシップとして成立させよう!」と、”キャプテン”自身が強いリーダーシップを発揮。サーキットやプロモーター、他のシリーズ、テレビ局とそのスポンサーなどと協議を重ね、スケジュール調整を行った。
この後さらに、オレゴン州ポートランドとカリフォルニア州モンテレーの2レースがキャンセルに陥り、オハイオ州レキシントン(ミッドオハイオ)は延期になった。
しかしウィスコンシン州のロードアメリカ、アイオワ州のアイオワスピードウェイ、イリノイ州のゲートウェイスピードウェイ、ミッドオハイオ、追加開催のインディアナポリス/ロードコースがすべてダブルヘッダーにされ、開幕戦だったセントピーターズバーグが最終戦として復活することで14戦が確保された。
現時点ではミッドオハイオの開催日程が決まっていないが、最終戦は10月末で空いている週末も多いので、開催されることになるはずだ。
6月6日にテキサス州のテキサスモータースピードウェイで行われた、NTTインディカーシリーズの開幕戦、そして7月4日に第2戦として行なわれた、インディアナポリスのロードコース戦は無観客での開催となった。
それが7月11日の第3戦、翌12日の第4戦・ロードアメリカは、サーキットでの観戦が初めてOKとなった。その時を待ちわびていたファン3万人が森の中のサーキットに集まり、存分にレースを堪能した。
続く第5戦〜第6戦アイオワスピードウェイは、全長が8分の7マイルという小ささのショートオーバルのため、スタンドに入れるファンの数を大幅に制限し、ソーシャルディスタンスを保ちながらの観戦として、これまた大成功。
野球をはじめとするメジャースポーツがファンを観客席に入れることができないでいる中、アメリカンモータースポーツは大健闘をしている。ドライバーやクルーからも感染者はほぼ出ていない。
パンデミックが始まって以来、「毎年30万人以上の観客が集まるインディ500はどうなる?」というのは全米が注目していた。入場者数を席数の半分に抑えて開催する案がまずは発表され、その後に4分の1まで絞っての開催が検討された。
しかしインディアナ州、そしてスピードウェイのある郡でのウィルス感染状況が期待通りに改善して行かなかったため、8月4日、世界最長の歴史を持ち、世界最大のスポーツイベントとして開催され続けてきているインディ500は、「残念ながら無観客で開催する」と発表した。
2度の大戦中はレース開催がされなかったインディ500であるが、104回目の開催にして、初めて空っぽのスタンドの前でのレースとなる。
(text:Hiko AMANO 天野雅彦)
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