【動画】鈴鹿が新たなFF最速決定戦の舞台に!? シビック・タイプRリミテッドエディションが『世界最速FF』の座を奪還!!
世界中の自動車メーカーが、スポーツモデルを中心として開発テストコースに使用するドイル・ニュルブルクリンク北コース。その地における『世界最速FF』を目標に開発されたのが、現行シビック・タイプR[FK8]だ。
そのシビック・タイプRは、2020年モデルにて内外装を中心としたマイナーチェンジを受けるほか、専用ボディカラーやBBSと共同開発された20インチホイールなど、内外装に数々の専用装備を持つ『シビック・タイプR Limited Edition(リミテッド・エディション)』も世界限定2020台(日本市場は200台)で設定される。
そして今回、ホンダは2020年モデル・シビック・タイプR Limited Edition(海外仕様)を使用して、鈴鹿サーキット・国際レーシングコースにてタイムアタックを敢行。量産FF車両の最速タイムとなる2分23秒993を記録したと発表し、ドキュメント動画を公開した。
タイムアタックを担当したのは、SUPER GTのGT500クラスに64号車Modulo NSX-GTで参戦する伊沢拓也選手で、その車載動画もホンダの公式YouTubeにアップされている。
このタイムアタックは、シビック・タイプR Limited Editionの最終開発車両による量産前走行テストとして、2020年2月に鈴鹿サーキットで行われたもの。車両は左ハンドルであることからわかるように海外仕様だが、サスペンションやタイヤなど、市販予定車両とすべて同じ仕様とのこと。
鈴鹿サーキットにおける市販FF車両のタイムアタックといえば、2019年11月にルノー・ジャポンが『メガーヌR.S.トロフィーR』を用いて行ったことが記憶に新しい。当時のタイムは2分25秒454で、今回、伊沢拓也選手がドライブしたシビック・タイプR Limited Editionは、2分23秒993と約1秒4の更新。鈴鹿サーキットにおける市販FF車両における新レコードタイムとなった。
現行シビック・タイプRといえば、日本国内のサーキットを走行するにあたっては走行中に水温や油温の上昇が顕著であることや、連続走行下で発生するブレーキローターの歪みなどが指摘されていた。2020年モデルではフロントグリルの形状変更やフロントに2ピースタイプのブレーキローターなど、これらの問題への対策として変更が行われている。
さらにLimited Editionでは、BBSジャパンと共同開発された20インチ鍛造アルミホイールを採用したことによるバネ下重量の軽量化や、サイズこそ標準モデルと変わらないものの専用装着されるミシュラン・パイロットスポーツCup2、そしてアダプティブダンパー・システムとEPSの専用セッティングの採用がこの偉業を達成したと、ホンダは発表している。
今回、鈴鹿サーキットにおけるタイムアタックの様子を映した動画には、シビック・タイプRのLPL(開発責任者)の柿沼秀樹氏がレーシングスーツ姿でピット内のメンバーと精力的に会話を交わす様子も納められている。そして見事に「市販FF車両最速」の座を奪還したことを受け、柿沼秀樹氏は次のようにコメントを発表した。
–世界中から届くシビック・タイプRへの驚きと喜びの声は我々の心を鼓舞し、決して立ち止まらずに、スポーツカーとしての本質とドライビングプレジャーをさらに磨き上げるべく、お客様の期待を超える進化を目指しました。
–モータースポーツの世界では、歩みを止めることは即、敗北を意味します。だから、決して歩みを止めてはならない。ホンダに連綿と宿るこの“レーシングスピリット”こそが、私たちを突き動かしました。
–エンジン冷却性能向上やブレーキディスク2ピース化により高温時のパフォーマンスをさらに高めた加速・減速性能、サスペンションブッシュやアダプティブ・ダンパー・システム制御のアップデートにより精緻さを増した操縦性能。その上でLimited Editionでは、鍛造アルミホイールをはじめとするさらなる車体軽量化と、サーキットパフォーマンスに照準を合わせた専用タイヤで、軽さと速さを研ぎ澄ませました。
–今回のモデルチェンジでは、ホンダのモータースポーツ開発の要であるHRD Sakuraとタッグを組みながら速さを磨き上げ、「世界屈指のサーキット」と言われる鈴鹿サーキットで、タイプRとして歴代最速の足跡を刻みました。ホンダの考える理想のスポーツカーにまた一歩近づくことができたと確信しています。どうぞ、存分にお楽しみください。
ひとつ残念なのは、鈴鹿サーキットにおいて市販FF車両の世界最速ラップタイムを記録したシビック・タイプRは、あくまで海外仕様ということだ。オンボード動画を見てもわかるように、ストレートエンドでは230km/h、バックストレートでは220km/hに到達しており、当然ながら180km/hでスピードリミッターが備わる日本仕様ではこのスピードには到達できないし、中低回転域での制御も海外仕様と日本仕様では異なっている可能性はある。
もちろん2020年モデルでは、そのあたりの制御系が従来モデルとは一新され、タイムアタック仕様というべき制御モードへと変更されているかもしれない。しかし従来どおりの考え方であれば、日本仕様のLimited Editionは、この『2分23秒993の世界』を味わうことはできないということになる。ECUチューンなどで制御系を変更すれば話は別だが……。
いずれにしても現在2020年モデルのシビック・タイプRは、世界的な新型コロナウィルスの感染拡大により生産活動に影響が出ており、日本市場における発売は延期となっている。公式ホームページにも詳細な導入時期については未定と明記されていて、Limited Editionの発売時期や販売方法、車両価格についても追って発表するとのこと。
多くのファンが注目する2020年モデルのシビック・タイプR、そのデリバリー開始はいつになるのか、そして争奪戦になることは必至のLimited Editionはどのように販売されるのか、今後の動向に注目したい。
(text:Kentaro SABASHI 佐橋健太郎)