【GT500】64号車Modulo Epson NSX-GTが手応えを感じた夏の500マイル【動画】
SUPER GTシリーズで唯一の海外レースとなる第4戦タイを終え、参戦チームや参戦マシンが日本国内に戻ってきた。全8戦で争われる今年のSUPER GTもいよいよ後半戦となり、その幕開けとなる第5戦・富士500マイルが開催された。
これまで長らくのあいだ、SUPER GTシリーズにおける夏の名物レースとして「鈴鹿1000km」が開催されてきたが、2018年より世界のGT3マシンを中心とした「鈴鹿10Hours」へと変化。かわりに、夏の富士ラウンドのレース距離が伸ばされて500マイル(約800km)のセミ耐久レースとなった。
通常のSUPER GTでは250kmや300kmというレース距離で争われるなか、第5戦は500マイル(約800キロ)という距離で争われるため、入賞チームに与えられるシリーズポイントは他ラウンドよりも多い。年間ランキングを大きく左右する重要なレースといえる。
そしてこれまで全戦で完走を果たしているModulo Nakajima Racingにとっても、夏のSUPER GTは想い入れの強いレースだ。富士500マイルと入れ替わりに終了した鈴鹿1000kmにおいて、歴代最後のウィナーとなったのが64号車であり、また気温や路面温度が高まるほど性能を発揮するDUNLOPタイヤの特性もあって、レースウィークが始まってからのピットには充実さを感じさせる空気が漂っていた。
今回、64号車Modulo Epson NSX-GTのウェイトハンディは5kg。NSX-GT勢では16号車の4kgに次ぐ軽い重量であり、ホンダにとって得意とは言えない富士スピードウェイのレースながら、日産やレクサスに対抗する存在として注目された。
8月3日土曜日の午前中に行われた公式練習では、64号車は1分30秒416と12番手のタイムを記録。しかしその後、予選Q1に出場した牧野任祐選手は全体5位、ホンダ勢ではトップとなる1分29秒287をマークし、今シーズン初めてQ1を突破。ナレイン・カーティケヤン選手にバトンを繋いだ。
GT300クラスの予選Q2を挟んで行われたGT500のQ2では、ナレイン・カーティケヤン選手が今季の予選に初登場。しかしタイヤのウォーミングアップを終えてアタックに入ろうという瞬間、ちょうどタイムアタックを終えた他マシンがホームストレートエンドで激しくクラッシュ! 予選は赤旗中断となってしまう。そのまま予選は終了となり、64号車は満足のいく予選Q2のアタックとはならなかったが、今季ベストとなる7番グリッドから決勝に臨む。
翌日の8月4日も朝から快晴に恵まれ、気温は急上昇。午前中から真夏らしい日差しが注がれ、サーキット場内では熱中症予防を訴える放送が行われていた。
ウォーミングアップ中におきたGT300マシンのアクシデントにより、定刻より10分ほど遅れた13時40分に決勝レースがスタート。500マイル(約800km)、全177周のロングレースが始まった。
64号車のスタートドライバーは牧野任祐選手。7番手スタートながら序盤からペースがよく、前を行くライバルたちを次々に抜いていく。4周目には3位まで順位を上げ、その後はペースを落ち着かせて4番手となるが、安定したペースで走行を続け、29周目にピットイン。タイヤ交換と給油を行い、ナレイン選手へとドライバーチェンジが行われた。
レースも折り返しに近づく70周目に、レクサスの38号車がコースアウトしてバリアに激突。その後73周目〜79周目にセーフティカー(SC)が導入されると、さらに106周目〜112周目にも2度目のSCとなるなど荒れた展開に。
しかし64号車は両ドライバーとも大きなアクシデントに巻き込まれることなく走行を続けた。終盤にナレイン選手が他マシンとのバトルの際、軽い接触があったためドライブスルーペナルティが与えられ、最終的に10位でチェッカー。開幕戦からの連続完走を続けるとともに、チームは3ポイントを獲得した。
中嶋 悟総監督コメント
「暑くて長いレースでしたが、なんとかポイントを獲得して終えることができました。もちろん満足はしていませんが、一歩一歩前進していくしかないので、次戦も進歩したところをお見せできるように頑張っていきたいと思います。暑いなか、たくさんのご声援をいただき、ありがとうございました」
ナレイン・カーティケヤン選手コメント
「今週末、タイヤは以前のものよりずっと良かったです。ミスをしてしまい、タイヤが何かを拾ってクルマがスライドして、GT300クラスの車両に接触してしまい残念ながらドライブスルーのペナルティを受けてしまいました。今回はもっと良くなるはずだったので、チームメイトには申し訳ないです」
牧野任祐選手コメント
「スタート後ペースよく走れて何台かパスすることもできましたが、後半はマシンのダメージのせいもあったかもしれませんが、路温が下がったこともあり、マッチングがよくなかったと思います。この週末を全体的に考えたら、Q2にいくこともできたし、ペース的にはよかったと思いますので、ポジティブな週末だったと感じています」
7番手というスタート順位を考えれば、3つポジションを下げての10位という結果にはチームも満足していないものの、レース後の牧野選手は充実感を漂わせる表情を見せていた。これまでマシンのセットアップやタイヤとのマッチングで苦しい思いをしてきたが、暑い夏を迎えてようやく方向性が見えてきたといえる。
次戦の第6戦は、9月7日〜8日に大分県のオートポリスにて行われる。
(text:Kentaro SABASHI 佐橋健太郎)