【GT300】前半戦の総決算となる第4戦タイ、しかし34号車はブレーキトラブルに悩まされる
全8戦で争われる、2019年のSUPER GTシリーズ。前半戦最後となる第4戦は、シリーズ唯一の海外レースとなるタイ・ラウンドだ。レースの舞台となるのは、タイ北東部のブリーラム県にあるチャーン・インターナショナル・サーキット。全長4554m、あまり起伏の多くないフラットなレイアウトと、ブレーキに厳しいコーナーが連続するサーキットだ。
今季、GT300クラスには3台のNSX GT3が参戦。そのうち唯一、2年目のシーズンを迎えている34号車Modulo KENWOOD NSX GT3は、その経験を生かして今季初表彰台そしてチーム初優勝を達成するべく、常夏のタイに臨んだ。
34号車のこれまでの3戦を振り返ると、開幕戦は9位(予選13位)、第2戦は26位(予選8位)、第3戦は7位(予選7位)。決勝レースにおいて大きく順位を上げてのフィニッシュは果たせていないだけに、まずは予選での順位をできるだけ前に行くことが重要となりそうだ。
予選が行われた6月29日の天候は晴れ。朝から気温が上昇し、午前中の公式練習では35度前後を記録した。予選が開始される午後3時には雲が多くなり風も強くなったが、それでも気温は33度とあまり変わらず。そんななか、34号車のピットではメカニックが慌ただしく作業を進めていた。練習走行から車両はブレーキに問題を抱えており、道上 龍選手/大津弘樹選手ともに、安心してコーナーに入っていけないという。
ふたりが「あそこはキツい」と口を揃えたのは、ゆるい左コーナーの先にあるヘアピン状の第3コーナー。ライバル車両に比べNSX GT3はABSの性能が十分ではなく、ブレーキング時に車両が暴れ、さらにアンダーステア傾向が治らないという。Q1は道上選手のドライブで通過するものの、Q2ではライバル車両たちのタイムアップについていけず、11番グリッドから決勝レースに挑むこととなった。
迎えた決勝レースも、常夏のタイらしい天候となった。決勝レースのスタート進行が始まった午後1時には、アスファルトの強い照り返しもあって立っているのがやっとという状況。そんななかスターティンググリッドに並べられた34号車の周囲では、スタート直前までメカニックがマシンの調整を行っていた。
定刻どおり、午後3時に66周の決勝レースがスタート。第1スティントのドライバーは道上選手が担当。11番グリッドからスタートした34号車は、スタート直後の混乱を無事にクリアするが、ペースは上がらない。ABSやハンドリングの問題は解消しておらず、5周を走り終えるころから『ブレーキがキツい』という無線がチームに届いていた。
レースも折り返しを過ぎ、防戦一方という前半スティントを走り終えた道上選手から、大津選手へとドライバーチェンジ。その後なんとGT500クラスのホンダ勢が同士討ちという悪夢のようなアクシデントが発生し、セーフティカーが導入される。
6周にわたってセーフティカー先導で走行を重ね、レースは再開。しかしレース終盤になってくると、燃料が減ってきたことで車両が軽くなり、アンダーステア傾向が減少したのか大津選手はペースアップ! 前を行くライバル車両を猛追する。
34号車のひとつ前を走るのは、チームとしても『すごく意識しています』という55号車のARTA NSX GT3。今季からマシンをNSX GT3に変更して参戦しているが、開幕戦の岡山ではいきなりコースレコードでポールポジションを獲得。決勝も2位表彰台を獲得するなど、34号車にとっては彼らの強さを見せつけられている状況だ。それだけにオーバーテイクしたかったが、かわすことができずにチェッカー。34号車は最終的に10位でフィニッシュし、貴重なポイントをチームにもたらした。
今季からアップデートキットが組み込まれ、NSX GT3 Evoへと進化したマシンだが、課題のひとつであった燃料消費についてはほとんど変わっていない。今回34号車が悩まされたABSについては、NSX GT3を走らせるライバル2チームも同様に問題を抱えているという。
GT3車両はシーズン中のアップデートが認められていないだけに、今後もABSには悩まされそうだが、500マイル(約800キロ)の長丁場レースとなる次戦の富士では『耐久スペックのブレーキパッドを投入するので相性は改善されるかもしれない(道上選手)』とのこと。
ここまで苦しい戦いが続いている34号車Modulo KENWOOD NSX GT3だが、シーズン後半の巻き返しに期待だ。
(text:Kentaro SABASHI 佐橋健太郎)