【現地レポート】第4戦ロングビーチ・グランプリはアレクサンダー・ロッシが去年に続く2連覇を飾る
今年からアキュラがスポンサーになり、アメリカ最大のストリートレースは第45回アキュラ・グランプリ・オブ・ロングビーチとして開催された。ロサンゼルスのすぐ南のロングビーチらしく、レースウィークエンドは「まさにカリフォルニア!」というカラッとした快晴に恵まれ続け、お客さんの入りも上々だ。
華やかでエキサイティングな雰囲気が充満する中でスタートの切られたレースでは、27歳のアレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)が優勝を飾った。ビーチ沿いのストリートコース=全長1.968マイルを85周するレースで、2年連続優勝を果たした。
スタート直後には、予選2位だったスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)がロッシに猛アタック。5回もチャンピオンになっているベテランは、前に出てレースの主導権を握ろうとした。しかし、ロッシは攻撃を跳ね返し続け、ハイペースを緩めなかった。
ディクソンは、アタックを続ければタイヤを摩耗させ過ぎると考えたか、チャンスを待つ作戦に変更し、ロッシがリードを広げて行った。
去年のロッシは2位に1.2秒の差をつけての優勝を飾ったが、今年はフルコースコーションがスタート直後にしか出なかったこと、ピットでの逆転を狙った強敵ディクソンが逆に給油のトラブルで大きく遅れたことなどが影響し、ロッシは2位に浮上してきたジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)に20秒以上の大差をつけてチェッカーフラッグを受けた。
過去44年のロングビーチ・グランプリでは、4連勝と2連勝で合計6勝も挙げたアル・アンサーJr.が、『キング・オブ・ザ・ビーチ』と呼ばれてきた。ポールポジションも2度獲得するなど、その強さは驚異的だった。近年のインディカーシリーズはチーム間の実力拮抗が凄まじく、ライバル勢を引き離しての勝利などそうそう簡単に達成できない。
しかし、今年のロングビーチでのロッシはワンランク上の速さを見せた。去年までの7シーズン、毎年違うウィナーが誕生していたロングビーチで、ロッシは2連勝。しかも2戦ともポールポジションからの勝利で、今年は手のつけようのないほどの速さを見せつけた。新しい『キング・オブ・ザ・ビーチ』が誕生したと言えそうだ。
「こんな圧勝ができるなんて考えてもみなかった。激しいバトルを覚悟していたので……」とロッシは話し、「スタート前からファンの声援の大きさに驚いていた。彼らの前でまた勝つことができて嬉しいよ」と続けた。
昨年のロングビーチに集まったファンは「地元出身の新ヒーロー誕生!」を大喜びしていたが、ロングビーチから470マイルも離れたネバダとの州境出身とあって、ロッシは少々戸惑い気味だった。今年彼がまたポールポジションを獲得すると、ロングビーチは一気にヒーロー応援モード全開に。ロッシはその大声援に喜びを感じ、熱い応援から力を得ることで去年以上のスピードを見せつけ、ゴールへ突っ走った。
2017年、ロッシはニューヨーク州の伝統あるロードコース=ワトキンス・グレンでポール・トゥ・ウィンを飾った。そして昨2018年はオハイオ州にある非常にテクニカルなミッドオハイオ・スポーツカー・コースで、同じくポールポジションから他を突き放して優勝を飾った。
ハマった時のロッシは誰にも止められない。圧倒的に速い上に、ミスも冒さない”ゾーンに入った走り”を見せる。今シーズン、このパターンがさらに見られることになったら、彼は去年惜しくも逃したシリーズタイトルを獲得することになるだろう。
開幕戦ウィナーのニューガーデンが、4戦目で2回目となる2位フィニッシュを記録してシリーズランキングをキープしているが、ロッシは今回の1勝により、28点差の2番手へと浮上している。今シーズン未勝利ながら、これまでの4戦で3回の表彰台に立ったディクソンがランキング3番手。
その後ろの4番手につけるのが、第3戦のHondaインディ・グランプリ・オブ・アラバマで優勝した佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)だ。ロングビーチ・グランプリではマシンのセッティングを100%に仕上げられなかったが、予選順位と同じ8位フィニッシュを果たし、確実にポイントを稼いだ。
次戦からいよいよ「マンス・オブ・メイ」がスタート。まずは日本のゴールデンウィーク明けに、インディアナポリス・モータースピードウェイのロードレースで行われるインディ・グランプリだ。
(text:Hiko AMANO 天野雅彦)
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