【現地レポート】インディカー第3戦の表彰台はHondaドライバーが独占!
インディカー・シリーズ第3戦・Hondaグランプリ・オブ・アラバマ
佐藤琢磨がポール・トゥ・ウィンで表彰台はHondaドライバーが独占
アメリカの深南部=ディープ・サウスアラバマ州にはホンダの工場があり、現在はオデッセイやパイロット、リッジラインといったモデルを生産中。工場から一番近い大都市がバーミンガムで、その郊外にあるのがバーバー・モータースポーツ・パークだ。インディカー・シリーズの開催は今年で10回目で、ホンダは2011年からタイトル・スポンサーを務めている。
2010-2011年はシャシー:ダラーラ、エンジン:ホンダ、タイヤ:ファイアストンという完全なワンメイクレースだったが、2012年からエンジンはシボレーとロータスも合わせて3社の競合となるも、ロータスが初年度半ばで撤退してホンダ対シボレーの一騎打ちになり、それは現在も続いている。
エンジン競争が始まった2012年からバーバーでのレースを振り返ると、予選トップのポールポジション(PP)は7回すべてをシボレーが獲得。決勝レースも6回の優勝を果たすなど、圧倒的な成績を残していた。
しかし、今年は立場が完全に入れ替わってホンダが予選でトップ5を独占、レースでも表彰台をスウィープする1-2-3フィニッシュを飾った。パワーバンドの広さを武器としてきたホンダエンジンが、今年は最大パワーでもライバルと対等か、それ以上にレベルアップしているということだろう。第2戦からの連勝でホンダが3戦2勝ともなっている。
第3戦の表彰台で真ん中に立ったのは、勝った時の「ハッピー・ガイ」ぶりがシリーズNo.1との呼び声も高い佐藤琢磨選手だった。予選でキャリア8回目となるPPを獲得した琢磨は、90周の決勝レースのうち74周をリードして圧勝。インディカー・シリーズで自身初のポール・トゥ・ウィンとなったのだから喜びが一際大きかったのも理解できる。
ポールからトップを守った琢磨は、予選2位だったチームメイトのグレアム・レイホール(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングが予選1-2だった!)、予選3位だったスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)を突き放して1回目のピットへ。ここでタイヤ交換に手間取って作業時間が長くなったが、全車が1回のピットを終えたところでトップに復活した。
しかしチェッカーまで残り5周という時に、琢磨は一度コースオフを喫してしまう。結果的にポール・トゥ・ウィンではあったが、実は2回もドキッとするシーンがあった。それでも優勝できたのは、マシンが良く、ドライビングも切れ味が鋭かったためで、トップに立てば他を大きく引き離すリードを築くことができていた。
「マシンが素晴らしかった。ブラック(ハードコンパウンド)でもレッド(ソフト)でも速かった。チームのおかげ」と琢磨は喜び、コースオフについては、「あれは必要なかった。トップをずっと走ったので楽勝と見えたかもしれないけれど、ディクソンとセバスチャン・ブルデイという強い相手が背後につけていたので、燃費セーブもしながら全力でのプッシュを続けていて、小さなバンプでバランスを崩した。そうなった時、まっすぐ芝生に出れば問題ないだろうことはレース前からわかっていたので、無理に修正をトライしなかった」と話した。
コースオフは織り込み済み……ではなかったが、飛び出しても大丈夫な場所でのみアグレッシブな走りを続けていたのだ。ピットストップは1回目こそ長かったが、2回目、3回目は完璧で、特に3回目は周回遅れを作り出す見事なもので、その彼が最後のリスタートでディクソン以下の障壁となった。
「今シーズン参加したメンバーもいてピットでは失敗があった。しかし、レースではそういうことも起こるもの。ミスしたっていい。僕だってミスをする」と、琢磨はクルーのミスを自らのコースオフも絡めて庇うコメントをしていた。
2位争いは終盤の土壇場でスコット・ディクソンにセバスチャン・ブルデイが襲い掛かったが、ギリギリでディクソンがポジションを守り切った。現役ドライバーでは最多となる、歴代4位の通算44勝を挙げているディクソンは今季早くも2回目の2位。バーバーでは未だに勝利の無いディクソンは、今回は実に6回目の2位となった。
「いつか勝てる日が来るといいね。今日は2位でもハッピー。琢磨の走りが素晴らしく、チームの戦いぶりが見事だった。多くのポイントを稼げたことを僕らは喜びたい」と話していた。3戦を終えての彼のランキングは2番手だ。
ランキング・トップはジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)。開幕戦で優勝、第2戦では運も味方につけて2位フィニッシュした彼は、バーバーでは2017、2018年と2連勝しており、優勝候補の筆頭だった。ところが予選はQ1敗退での16位。チーム・ペンスキーがマシンセッティングで苦悩する珍しいパターンに陥っていた。
しかしレースに向けてはマシンを大幅に向上させ、1回目のピットストップを早めに行う作戦も正解でシボレー最上位の4位でゴール。レース中のファステスト・ラップもチーム・ペンスキーのウィル・パワーが記録した。
バーバーではアンドレッティ・オートスポート(AAS)も苦しんでいた。サーキットの路面が経年変化によりグリップ低下。その度合いが著しかったところに、マシンセッティングを調整しきれなかったようだ。AAS勢はアレクサンダー・ロッシが5位、ライアン・ハンターレイが8位に入賞。決勝レースではパフォーマンスを取り戻していたが、チーム・ペンスキー勢ほどではなかった。
開幕から3レースが経過し、すべて異なる3人のウィナーが誕生している。そしていずれも異なる3つのチームが勝利しており、相変わらずインディカー・シリーズは誰が勝つか予想のできない凄まじい混戦ぶりを見せている。
(text:Hiko AMANO 天野雅彦)
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