【19TAS】S660ネオクラシックとモデューロが融合! Modulo Neo Classic Racerの世界観がたまらない
ホンダの純正アクセサリーを開発・販売するホンダアクセスは、東京オートサロン2019に独自のブースを出展。北ホールに設けられたブースは「楽しみ上手な家族の家」をコンセプトとし、“ホンダのある生活”を楽しむライフスタイルを表現すべく、5台の車両を展示した。
その展示車両のうち、注目はガレージをイメージしたスペースに展示された「Modulo Neo Classic Racer(モデューロ・ネオクラシック・レーサー)だろう。S660をベースに外装をリデザインされたNeo Classicシリーズは、過去の東京オートサロンにおいてコンセプトモデルそしてプロトタイプへと進化を続け、2018年からキット販売も行われている。
このモデューロ・ネオクラシック・レーサーを手がけたのは、S660 Neo Classicシリーズのデザインを担当するホンダアクセス ・山田真司さん。ネオクラシックを所有するオーナーが『サーキットを走行したい』と考えたとき、思い描くモディファイを具現化した1台だ。
「ボンネットやエンジンカウルはS660ネオクラシックのものですが、それ以外の外装部品はすべて新規にデザインをしています。ネオクラシックの世界観を保ちつつ、現代のエッセンスも加えることで、懐かしさだけでない格好良さも表現しようと考えました」とのこと。
山田さんの言葉にあるように、このモデューロ・ネオクラシック・レーサーは、2018年に販売された「S660 Neo Classic」キット装着車をベースに、週末にサーキット走行を楽しむクラブマン・レーサー風へと仕上げたもの。
外観では前後バンパーやオーバーフェンダー、ハードトップ、サイドスカートを新たに設計。ボンディサイズは全長こそ25mm伸びただけだが、オーバーフェンダーを装着したことで、全幅はベース車から150mmも拡大されワイド&ロー感が強調された。
そして軽自動車の枠を超えるボディサイズとなったことでディープリムのホイールが履けるようになり、フロントに205/40R17、リアには255/45R17という極太サイズのタイヤを装着している。
ボディは金属感を強調したマットシルバーにペイントされ、前後にビス留めタイプのオーバーフェンダーを装着。フロントのオーバーフェンダーには、ボンネットとフェンダーの境界線からフロントバンパーへと伸びるキャラクターラインが描かれ、まとまりあるデザインを形成。
ボンネットとバンパーは、1960〜70年代のクラブマン・レーサーでは定番アイテムといえるレザーストラップが装着されるほか、サイドミラーはフェンダー装着タイプの砲弾型へと交換されるなど、思わずニヤリとさせられるデザインが随所に施されている。
S660ネオクラシックのキット発売時にも要望の声が多かったというハードトップは、あえて全高を上げるというアプローチを採用。ハードトップの前方部分は、フロントウィンドウからの延長線を受け止めるかたちでいったん持ち上がり、そこから車両後方へとゆるやかに降りていく形状とされた。
「前方からの風をいったん上方へ受け流してから、リアスポイラーへと導くイメージです」というリアセクションは、前後バンパーやオーバーフェンダー装着によりワイド化されたボディを前提としたデザインとなっている。
そしてこれらのデザインは、すべて機能性にも基づいているのが「Modulo」の名を冠したゆえん。モデューロ・ネオクラシック・レーサーの開発時は実際に走行テストも行われ、エアロダイナミクスも追求した形状となっているという。
エンジンカウルはS660ネオクラシックから形状変更はなく、車両後方側のヒンジで開閉を行う。しかしレーシングマシンへのモディファイ時には、通常のヒンジ式から脱着式へと変更するだろうということで、上下左右の4箇所にボルトのデザインが施された。
さらにこのアクリル製のカバーには、上下反転させたHマークがデザインで描かれるなど、ホンダファンにはたまらない演出も込められている。
室内はクラブマン・レーザーの定番である軽量化のため、助手席まわりはすべてを除去してドンガラに。サイトウロールケージ製の4点式を装着している。助手席前方のダッシュパネルや、左右ドアの内張りは布地のソフトパッドから樹脂製に変更。ボディ同色に塗装される。
ここまで「走り」を予感させるモデューロ・ネオクラシック・レーサーだが、エンジンについてはマフラーが交換されているのみで、基本的にノーマル。車体側のキャパシティには相当の余裕がありそうなだけに、エンジンチューンも期待したい。
……そう言いかけたところ、デザイナーの山田さんが示してくれたのは、車両奥に飾られた木箱だった。近づいてみると、そこには赤ヘッドを持つちょっと懐かしいエンジンの姿が。初代インテグラ・タイプR(DC2)に搭載された名機、B18Cだ。
「このモデューロ・ネオクラシック・レーサーの世界観を考えると、ちょっとターボチューンではないのかな?と思いました。いちばんイメージに近かったのが、自然吸気スポーツユニットの始まりでもあるB18Cでした。寸法的にも駆動系の容量としても厳しいとは思いますが、B18Cが載せられたら、きっと楽しいクルマになりそうですよね」
VTEC機構が最初に組み合わされたエンジンでもあるB型ユニットは、シビックやインテグラなどホンダを代表するスポーツハッチに搭載され、サーキットでも長年に渡って活躍した名機。現代の目で見れば荒々しさも残しつつ高回転高出力が楽しめるという、モデューロ・ネオクラシック・レーサーにベストマッチするエンジンといえる。
実際に換装するとなると車体側の加工も必要だろうし、搭載した後も駆動系や脚まわりなど、様々な問題はあるだろう。しかし本来、チューニングやカスタム、モディファイといった遊びは、そういったアクシデントを乗り越えながら楽しんでいくものでもある。
” ガレージは、最高の遊び場だ。”
モデューロ・ネオクラシック・レーサーが展示されていたスペースの上には、こんな言葉が掲げられていた。心から同感。クルマは走らせて楽しみ、そして触って楽しむもの。開発メンバーのそんな想いが結晶したモデューロ・ネオクラシック・レーサーは、東京オートサロン2019において必見の1台だ。
(photo&text:Kentaro SABASHI 佐橋健太郎)