Modulo KENWOOD NSX GT3、鈴鹿10時間耐久に挑む
2017年まで、SUPER GTシリーズにおける夏の風物詩だったのが『鈴鹿1000km』レースだ。昨年のレースでは、GT500クラスに参戦中のEpson Modulo NSX-GTが、ナカジマレーシングにとって10年ぶりの優勝をもたらしたことも記憶に新しい。
そんな鈴鹿1000kmレースは今年からSUPER GTシリーズを外れ、世界からGT3マシンが集まる『第47回サマーエンデュランス 鈴鹿10時間耐久レース』へと生まれ変わった。世界各国のメーカーが販売しているGT3規格のレーシングカーのほか、SUPER GT GT300クラスに参戦しているMC(マザーシャシー)も2台が参戦している。
今年が初開催となる『鈴鹿10時間』は、8月23〜24日に練習走行、25日が予選、26日に10時間の決勝レースというスケジュール。その鈴鹿サーキットのピットに、注目を集める1台のマシンがあった。SUPER GT第5戦(富士)でのアクシデントにより、参戦が危ぶまれていたModulo KENWOOD NSX GT3がそれだ。
アクシデント後、修理には相当の時間と費用がかかるために一時はSUPER GTへの継続参戦も危ぶまれたが、チームは各方面と調整を行って新車の導入を決定。マレーシアにあったというマシンを空輸し、走行にあたっての整備を施して鈴鹿10時間に間に合わせた。
Modulo KENWOOD NSX GT3を走らせるModulo Drago CORSEは、チーム代表でありレギュラードライバーの道上 龍選手、パートナーの大津弘樹選手に加え、SUPER GT GT500クラスに参戦中の小暮卓史選手が加入。ドライバー4名体制で『鈴鹿10時間』に参戦する。そしてチームのチョン・ヨンフン監督を加えた4名が、レースウィーク前日に会見を行ってレースへの意気込みを語った。
道上 龍 選手
「SUPER GT第5戦(富士)でのアクシデントの直後、チームは予選・決勝のあいだ何もすることができませんでした。そんなチームの状況やスタッフの雰囲気を見て、このままではいけない、このままでは終われないという気持ちが強くなりました。そして様々な方々の支援や応援もあり、新たに新車のNSX GT3を購入することができ、そしてこの鈴鹿10時間耐久に参戦できることを嬉しく思います」
「NSX GT3はイタリアのJASモータースポーツで製作していますが、彼らに問い合わせたところイタリアに1台、そしてマレーシアに1台、新車があるということでした。そのうちマレーシアにある車両はアジア向け仕様で、エアコンも装着されており、また日本への移動距離も短いことから、それを空輸しました。日本に到着したのは8月13日です。もちろんレーシングカーは到着してすぐ走らせることはできないですから、チームが懸命の作業でこのレースに間に合わせてくれました。今日が本当の初走行です。心から感謝しています」
「完全な初走行とはいえ、チームにはこれまでのノウハウがありますから、そのセットアップでマシンのフィーリングはいいです。富士まで走らせていたマシンと何ら変わらずドライブすることができます。僕自身も腰の痛みは残っていますが、一時ほどではありません。シートにクッションを挟んでドライブしています」
大津弘樹 選手
「SUPER GT第5戦(富士)では、マシンの調子も良かったしチーム全員の士気も非常に高かったです。それだけにアクシデントは残念でしたし、自分自身もレースで走ることなく終わってしまい、悔しい思いがありました。その後は鈴鹿10時間へも、SUPER GTへの継続参戦も危ぶまれましたが、道上さんがずっと前向きに様々な人と話している姿をそばで見ていたから、自分も気持ちを高く保つことができました。マシンの手配などに関して、僕が何ができるわけでもないですが、そのぶんレースで全力で走りたいと思います。そして今回は、僕にとって憧れの人…というかテレビのなかの人である小暮選手もチームメイトとして参戦してくれるので、とても嬉しいです。多くのことを吸収したいです。そして賞金を持って帰りたいです!」
小暮卓史 選手
「まず今回、道上さんから声をかけていただいたことが本当に嬉しかったです。僕自身、今年はスーパーフォーミュラに参戦していなく、レースはSUPER GTだけでしたし、チームに貢献できる場があるということに感謝しています。SUPER GT第3戦(富士)でのアクシデントの際、僕は道上選手のマシンの真後ろにいました。あの状況をすべて見ていて、当時は大変なことが起きたと思いました。道上さんに大きな怪我がなかったことは心から安心しましたし、こうして鈴鹿10時間に参戦できる、間に合ったということもすごいと思います。2015年に監督とドライバーとして道上さんと組みましたが、ドライバー同士として同じチームで参戦するレースは久しぶりです。非常に楽しみにしています。大津選手はどこか昔の自分を見ているようで、彼にもなにか伝えられたらと思っています」
チョン・ヨンフン監督
「こうして鈴鹿10時間のレースに参戦できることを嬉しく思います。ドライバーであり、チーム代表である道上さんが新車のNSX GT3を用意すると決断しなければ、この鈴鹿10時間も、また今後のSUPER GTへの継続参戦もありませんでした。8月13日にマシンは日本へ到着し、それからファクトリーに運んでチームは整備を行いました。メカニックが帰れなくなる…ほどではなかったですが、それでもスタッフは通常より多くの仕事量をこなし、今回に間に合わせることができました。今日が初走行となりましたが、ドライバーのフィーリングも悪くなく、特に道上選手や大津選手が『富士までのマシンと変わらない』という言葉には安心しました。これからの練習走行や予選で、しっかりマシンを仕上げていきたいと思います」
世界中からGT3マシンが集結する『第47回サマーエンデュランス 鈴鹿10時間耐久レース』。ホンダからはModulo KENWOOD NSX GT3のほか、ホンダ・チームMOTUL、CAR GUYレーシングと計3台のNSX GT3が参戦する。決勝レースは8月26日(日)の10時にスタートし、夜20時にゴールという長丁場。果たしてどんなドラマが生まれるだろうか。
(text:Kentaro SABASHI 佐橋健太郎)