インディカー第14戦ポコノ、ロッシが前戦に続き2連勝!!
今年のインディカー・シリーズは、はやくも残り3戦。第14戦はペンシルベニア州ポコノにある全長2.5マイルのトライアングルオーバル、ポコノ・レースウェイで行われた。
予選はチーム・ペンスキー/シボレーの圧勝。過去2年連続で優勝しているウィル・パワー(チーム・ペンスキー)が、ただひとり計測2ラップを219mph台に載せてポールポジションを獲得。昨年の同レースで2位フィニッシュしているジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)が予選2位と、フロントローを独占した。
現在、シリーズランキングでいうとパワーは4番手、ニューガーデンは3番手。そのため、このポコノで是非ともランキングトップのスコット・ディクソン(チップガナッシ)、2番手のアレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)との差を縮めたいのだ。
しかし、予選後にスケジュールされていたプラクティスは雨でキャンセル。レース用セッティングは誰も不十分なままレースを迎えることになった。路面のグリップも雨でタイヤ・ラバーが流されて低くなっていた。
そこへ予選日と決勝日では風向きが真逆という条件も重なった。レース前の空はどんよりと曇り、気温も予選日より低め。平均時速が210mphを越える高速ラップを重ねるレース、それも500マイルの長さで競われるレースを非常に難しいものとする条件が並んだ。
これらが影響してか、ペンスキー勢の予選での優位は吹き飛び、予選3位だったアレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)がレースのイニシアチブを握った。最初のスタートでニューガーデンを抜き、すぐさま行われたリスタートではパワーもパスしてトップに立った。
ロッシのペースは異次元の速さで、200周のレースのうち180周をリードして勝つというワンサイドゲームとなった。最初のピットストップまでに8秒ものリードを築き上げた彼は、その後もトラフィックさえなければ差を広げ続けるレースを展開。不運なタイミングでのフルコースコーション発生もなく、まさに圧勝という勝ちっぷりを見せた。
パワーは何とか食い下がっていたが、ピットストップでセッティングを変更してもスピードアップができず、最後はピットイン直前に周回遅れのマシンに引っ掛かってしまい、決定的タイムロス。ポコノで3年連続連勝はならなかった。
いっぽうロッシは、前戦ミッド・オハイオに続く2連勝。今シーズン3勝目を飾るとともに、ホンダにとってはシーズン9勝目となった。
「今日の僕らは誰よりも速かった。レースを通して速さを保ち続けた。そうしたマシンを作り上げたのはアンドレッティ・オートスポートだ。チームの実力の高さを証明するものだ」
「先週テストを行った、チームメイトのザック・ビーチが発見したセッティングが、今週末における僕らのアドバンテージになっていた。彼の才能と仕事ぶりにも感謝したい。今日と同じような勝利を、残されたシーズン終盤戦にあと2回記録し、チャンピオンにになれることを願っている」
シーズン終盤、チャンピオンシップ争いに名乗りをあげたロッシはそう語った。
3位はスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)が手に入れた。予選13位からの表彰台は彼とガナッシならではの粘り強さが発揮されてのものだった。
「ポイントを稼げたのは悪くない。マシンの持つ力を全部出し切ってもいたと思う。しかし、今日のレースはフラストレーションの溜まるものだった。燃費セーブをしていて、コーナー手前でアクセルを早めに戻す相手を抜けずに2〜3スティントを走ったんだから、イライラして当然だ」
「この2戦で、ロッシが一気に差を詰めてきた。自分たちも戦いのレベルを一段上げないといけない。次のゲイトウェイで僕らはテストをしていないが、ロッシはテストをしている。自分たちにできるのは、持ち込むマシンのセッティングをレベルの高いものとすること。そして、そこからさらにマシンを良くしてレースに臨みたい」
優勝したロッシとのポイント差が29点となったディクソンは、こう語った。
今回、レース序盤には大きなアクシデントがあった。7周目に切られたリスタートの直後、予選6位だったルーキーのロバート・ウィッケンズ(シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)がターン2で予選4位のライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)にアタック。
両車はターン2に並んだまま進入し、タイヤ同士が接触! ウィッケンズは空を舞ってキャッチフェンスに跳ね返され、コースに着地した。このアクシデントでジェイムズ・ヒンチクリフ(シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)、佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)、ピエトロ・フィッティパルディ(デイル・コイン・レーシング)が巻き添えになり、リタイアを喫した。ウィッケンズは肺への打撲、腕や背中の骨折などなどの負傷をし、ヘリコプターでサーキットに近い病院へ搬送された。
ルーキーながらどのコースに行っても速いウィッケンズ。しかし、今回のドライビングはアグレッシブを少し超えていたかもしれない。ハンター-レイの後輪とウィッケンズの前輪が絡んだことからも、ウィッケンズのポジションがパスを実現するのには不十分だったとわかる。500マイルの長丁場の7周目という観点からも、一歩退く発想が必要だった。
レース翌日に手術を受けたというウィッケンズは、今シーズン中のレース復帰は難しいだろう。しかし1日も早くインディカーのコクピットに戻り、あと少しのところまで手繰り寄せていた初優勝を飾る姿を見せて欲しい。
(text:Hiko AMANO 天野雅彦)
「ジャック・アマノのINDYCARレポート」もよろしく!