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インディカー第2戦フェニックスはラスト10周で大逆転劇!!

今年2月にフェニックスで行われた合同テストでは佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング/ホンダ)が最速だった。しかし、彼の予選結果は13位。チームメイトのグレアム・レイホールも12位と揃って大苦戦していた。2月より大幅に高くなった温度の影響を受け、マシンのバランスが狂ってしまっていたためだ。

アリゾナ州フェニックスにあるIMSレースウェイは全長1マイルのオーバルコース。予選トップの1ラップの平均時速は188mphオーバー。フェニックスはバンクも最大9度と傾斜が小さく、マシンのハンドリングは気温の違いに過敏に反応する。

予選最速=ポールポジション(PP)を獲得したのは、セバスチャン・ブルデイ(デイル・コイン・レーシング・ウィズ・バッサー・サリバン/ホンダ)。開幕戦セントピーターズバーグで終盤に3位を走っていたら前の2台が接触して超ラッキーな優勝を果たした彼は、第2戦フェニックスの予選では実力でPPを獲得してみせた。

最強チームの呼び声高いチーム・ペンスキー/シボレーのシモン・パジェノーが2位、ウィル・パワーが3位だった。4位はアレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)で、5&6位はジェイムズ・ヒンチクリフとロバート・ウィッケンズのシュミット・ピーターソン・モータースポーツ/ホンダ・コンビだった。

レースは夜の7時前にスタート。気温は摂氏34度と高くても、陽が沈めば一気に過ごしやすくなる。風も適度にあって実に快適。集まったファンはレース観戦を大いに楽しんでいた。さぞやビールが進んだことだろう。

予選上位4人のうちの3人が最初のピットストップでミスして後退した(珍しい!)ため、難なくトップに立ったのはパワーだったが、レースが後半に突入する前に自滅のクラッシュ。シュミット・ピーターソン・モータースポーツのカナディアン・コンビがレースをリードし、彼らに挑むポジションに昨年度チャンピオンのジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)と、インディカー2年目ながら強豪チップ・ガナッシ・レーシングで走るエド・ジョーンズがつけた。

今シーズン、#10のマシンを走らせるエド・ジョーンズ

ところが、ゴールまで25周を切ってジョーンズがクラッシュ。フルコースコーションが出され、大半のマシンが新品タイヤで最後の勝負を行うためにピットへと向かった。ここでおもしろいことに、ウィッケンズ、ヒンチクリフ、ロッシの3人はステイアウト(ピットインせずにコースに残り続ける)。彼らが1−2−3位へとポジションを上げた。トップを走っていたニューガーデンは逆に4番手に後退した。

「リスタートからゴールまでは10周以下になるから、タイヤは古いものでも逃げ切れる」という考え方の3人と、「新品タイヤが絶対に有利」と見た大方のチーム。その答えはゴールまで7周のドッグファイトで明らかになった。

ニューガーデンはグリーンフラッグが振られると同時にロッシにアタックし、彼だけでなくヒンチクリフまでを一気にパス! いきなり新品タイヤの威力を見せつけ、トップを行くウィッケンズを追った。2台を料理している間に少し広げられた差も瞬く間に縮め、ニューガーデンはすぐに攻撃モードに入った。

今シーズンよりインディカー・シリーズにフル参戦する#6 ウィッケンズだが、DTMで鳴らしたそのスピードは脅威的

ウィッケンズといえば、開幕戦セントピーターズバーグでルーキーとは思えない落ち着きぶりでレースを支配し、残り2周のリスタートでロッシと接触して優勝を逃したドライバー。今回のフェニックスは、彼にとって初めてのオーバルコースでのレースだったが、開幕戦以上に堂々たる走りで先輩チームメイトのミスをすかさずついて前に出るのに成功。それが最後のリスタート時にトップを走ることに繋がっていた。そのウィッケンズが逃げ切って初優勝を飾るのか、逆転負けを喫するのか? 二人のバトルは見応えあるものになった。

タイヤのグリップが低いウィッケンズは、インに走行ラインを保ち続けることで相手にオーバーテイクのチャンスを与えない走りを徹底した。横まで並びかけても抜き切れない……というシーンが繰り返された。しかし、防御的走りでウィッケンズのタイヤはさらに消耗。残り4周のターン1でニューガーデンがアウトからズバッとウィニングパスを決めた。

「チームの力で勝つことができた。ピットストップで幾つも順位を上げたし、作戦も完璧だった。最後のウィッケンズとのバトルもエキサイティングで、タイヤを新しくしていたからパスできた」とニューガーデンは喜んだ。

優勝したジョセフ・ニューガーデン(中央)と2位で初表彰台となったロバート・ウィッケンズ(左)、3位のアレクサンダー・ロッシ(右)

いっぽう開幕戦をアンラッキーな結末で終えてしまったウィッケンズは、フル参戦2戦目にして2位表彰台を獲得。「トップと同一周回でゴールするのが目標だったから、初めてのオーバルレースでもあるし、2位フィニッシュはとても嬉しい。この好結果をスタートとしてさらに頑張っていく」と、こちらも笑顔だった。

佐藤琢磨は11位フィニッシュ。今回はマシンの仕上がりも不十分だったが、作戦もチグハグになっており、レース後のコメントでは悔しさを隠さなかった。

「事前テストで速かったので、自分たちは逆にセッティングが変更しにくくなっていたかもしれないですね。予選前のプラクティスで自分たちのマシンが悪いとわかって、そこから修正を目指したけれど時間が足りず、そのまま予選に突入。ファイナルプラクティスで得られたデータもプラスしてレース用セッティングを決めましたが、レースでの僕らのマシンは安心してドライビングできるものになっておらず、その状態がゴールまで続きました」

「2番目のスティントを長くしたのは、イエローが出て大きな優位を得るのが狙いでしたが、結果論で言えば欲張りすぎでしたね。優勝を狙えるレースになると期待していただけに、フラストレーションがたまります」

次戦は、2013年に佐藤琢磨がインディカー・シリーズ初勝利を飾ったロングビーチGPだ。

(text:Hiko AMANO 天野雅彦)
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