【STEPWGN Modulo X #6】しなやかさと安定感が欧州テイスト(前編)
クルマについての記事を書くジャーナリスト/ライターにも様々なタイプがいて、それぞれ得意と見なされている分野も異なれば、必要とされる分野も異なっていたりする。僕自身に関して述べるなら、前職が欧州車やスポーツカー、ヒストリックカーといった趣味性高めのクルマ達の走りの楽しさを論じる自動車雑誌の編集者だったせいか、独立してからもその分野の仕事がほとんど。欧州製のいくつかは別として、ミニバンという乗り物に触れる機会というのもあまりない。
だから今回、ホンダスタイルの佐橋編集長から「ステップワゴンModulo Xの試乗記をお願いします」といわれたときには「え? なぜ俺?」と耳を疑った。だってクルマを語るときの基準が、ほとんど「楽しいか? 気持ちいいか?」に偏ってるような自動車ライターを“ニッポンのミニバン”に乗せたところで、結果は見えてるじゃないか。
いや、ミニバンを小馬鹿にしてるわけでも何でもない。暮らしの道具として抜群に優れてことは解ってるし、昨今のモデル達の出来映えが悪くないことだって知っている。だけど、それと「楽しいか? 気持ちいいか?」っていうのは全く別の問題だ。
けれど、走りはじめて10分後。「え? なぜ俺?」の理由が理解できていた。あんまり……というより、ぶっちゃけ、全く期待してなかったのに、ステップワゴンModulo Xは走らせて結構楽しいし、望外に気持ちいいクルマだったからだ。
どういうことか。ステップワゴンModulo Xは、ミニバンであることが信じられないくらいヒラリとよく曲がる。僕は背の低いクルマに乗ることが圧倒的に多いせいで、背の高いクルマにありがちなグラリと傾くような動きにはどうにも馴染めないところがあるのだけど、このクルマは絶妙にコントロールされた自然なロールを感じさせながら、しなやかに気持ちよくコーナーを抜けていくことができるのだ。
しかもステアリング操作に対してクルマが適度に素早く反応してくれるから、感覚とのズレがない。専用設計のサスペンションが大きな車体の動きを綺麗に制御してくれていて、このちょっとしたスポーツカーのような素直なハンドリングと綺麗なコーナリングは、そのまま”走らせる楽しさ”に繋がっている。
後編へ続く!
(PHOTO:Keigo YAMAMOTO 山本佳吾/TEXT:Tomoyuki SHIMADA 嶋田智之)