【STEPWGN Modulo X #4】モデューロXこそ理想のステップワゴンだ
ミニバンのコンプリートカーと言うと、Mクラスミニバンのトヨタ・ヴォクシー/ノアG’sや日産・セレナ ライダーが有名だが、最後発となるステップワゴン・モデューロXはそれらとはコンセプトがちょっと異なる。
変更内容は大きく分けると「フットワーク」、「空力アイテム」、「内外装」の3つだが、キャラクター的には「ミニバンのGT」と呼ぶのが最もふさわしい。個人的には2代目オデッセイ・アブソルートを思い出した。
その理由は走らせるとすぐに解る。ベースモデルは前後バランスの悪さから、無駄な動きが多い上にフロントタイヤの依存度が大きく、それらがコーナリング時の不安感に繋がっていた。しかしモデューロXは専用に仕立てられたサスペンションと空力パーツの相乗効果で、前後バランスが最適化された結果、無駄な動きが抑えられてコーナリング姿勢も安定し、4つのタイヤをより上手に使っている印象を受けた。
そのためドライバーの操作に対する正確性も上がり、背が高いミニバンながらドライビングに一体感と安心感を生んでいる。ミニバンでもコントロール性を引き上げていけば、走りは自然と楽しくなる。最小限の変更で最大限の効果を生んでいるのだ。
この感覚はワインディングや高速道路のようなスピードレンジやGが高いところだけでなく、交差点をひとつ曲がるだけで誰でも解るレベル。「あれっ、何か運転しやすいかも」、「運転が上手くなったみたい」というように。
乗り心地はベースモデルよりも若干硬めに感じる(特に2/3列目)人もいると思うが、ショックの吸収性が高いのと余計な上下動が減ったことで、逆にノーマルより快適に感じた。ただ、モデューロXはこれみよがしにスポーツ性を引き上げたのではなく、「本当はこうしたかったんだろうな」と言う“理想のノーマル”に仕上がっている。
しかし、いいクルマだからこそ欲が出てしまう。そのひとつはシートで、現状はベースモデルの表皮違いが採用されているが、表皮が滑りやすいのでコーナリング時に体を上手に支えるのがちょっと難しい。もう一つはベースモデルと同じ銘柄のタイヤで、サスペンションのしなやかさに対して硬さがやや気になった。専用品が設定できれば乗り味はもっとよくなるだろう。
ステップワゴン・モデューロXの価格は366万5000円。スポーティさと質と品格も感じさせるプレミアム性も兼ね備えたデザインのエクステリア、モノトーンでコーディネイトされた大人な装いのインテリア、そして乗り味の違いを考えると、かなりお買い得な一台だと思う。
(PHOTO:Satoshi KAMIMURA 神村 聖/TEXT:Shinya YAMAMOTO 山本シンヤ)